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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
家族と
24/109

23

 一方、井上凜はフロンに話しかけたが、返事がもらえなかった。


「またいなくなりました。」と井上凜がツリーセに言った。


 『確かに返事がなかったね。』


「そうですか……いないでしたら、仕方ありません。では、どうします?休憩します?休憩のついでに、ちょうどリンさんは僕に何が聞きたいか整理できますし……」


「いいや、今は休憩しません。なぜフロンさんがいなくなるか、少し気になっています。」と井上凜が考えながら言った。


「なぜって……急用とかじゃないでしょうか?」


「ええ。私もそう思います。では、その『急用』が何なのか、気になっています。」と井上凜が言いながら、遺跡の周りを観察し、蔓のところに行った。


「でもそれは、僕たちには知りようがないじゃないでしょうか……」とツリーセが井上凜の動きを見ながら言った。


 逆に、井上星は兄が『急用』の言葉を強調した感じで言ったことから、何が言いたいか少しわかってきたが……なんで兄が蔓の靭性を確認しているのかわからなかった。


 井上凜は蔓の耐性を確認しているように何回も引っ張っていた。


 蔓は人の体重が耐えられないとはいえ、繊維の靭性が手の力では千切れなそうだ。


「確かに知りようがないですが、私の意味は――」『たぶん、兄ちゃんが言いたいのは、フロンおじさんのところに予想外のことが起きてしまって、何かの事故があるじゃないかっていう意味だろう。』「――ということです。」


「そして、その『事故』はもしかして家族に何かあったじゃないかって……」と井上凜が心配な顔をしている。


「なるほど。確かにそういうことでしたら、休憩できませんね。僕も手伝いましょう。」


「ありがとう。」


「それで、僕はどうすればいいでしょうか?」


「そうですね。まず、この蔓が何本かほしいので、手伝ってほしいです。」


「わかりました。お安い御用です!」ツリーセは自信あふれる顔で胸を手で叩き、井上凜の側に近づいた。


 ツリーセは少し退いてほしいという意味で、手を横に移動した。井上凜はジェスチャーの意味がわかって、少し退いた。


「この蔓は手の力では千切れないから、こうして――」ツリーセは一足が壁について、まるで壁に歩くつもりの感じで蔓を引っ張っている。


「――全身の力で使わなきゃ!」とツリーセが全身の力を使いすぎて、ほぼ赤面になった。蔓はツリーセの要望を応えたかのように、プチと一本の蔓がちぎられた。


 全身の力を使ったせいで、蔓をちぎった際、ツリーセは態勢のバランスが保てられなくて、簡単に尻餅をついた。


 この状況を見た井上凜はすぐ「大丈夫ですか」と関心を示し、近づいた。


『ちょっと痛かったよ……ツリーセ。』と井上星も言った。


 ツリーセは恥ずかしい笑顔になって、自分のお尻を触りながら立っていた。


「ごめんね。星。そして、大丈夫です。リンさん。」


「無事ならいいんですが、無理しないでほしい。説明してくれたら、私がやればいいですし……」


「それはわかっていますが、実践した方が早いかなって……」


 『せめてやる前に言ってほしいんだが……』


「ごめんね。星。」


 『……いいけど。』


 そういえば、キャラクターを作った時、少しバカっぽいという設定にしちゃったな……と井上星は少しこの蛇足の設定に後悔している。


「でも、教えてくれてありがとうございます。もっと何本かほしいので、残りは私がやります。体格も私の方が大きいですから。ツリーセさんは隣に休んでください。」


「いいえ、二人でやった方が早いですから、僕も手伝います。」決意が固い表情をしているツリーセに、井上凜は自分が何を言ってもしょうがないとわかった。


「うーん……わかりました。じゃあ、無理のない範囲でやってください。」


「わかりました。」


 そして、二人はしばらく何本の蔓を集めた。


 ツリーセは少し蔓の用途に気になって、井上凜に話しかけた。


「しかし、リンさんは蔓で何をしたいでしょうか?」


「うーん……星くんならわかると思います。」


 『僕が?』


「なんかわからないらしいよ。」井上星の疑問の感情も感じていたツリーセが言った。


「ああ――その、君はよく父さんと野外活動をしていたじゃない?そういう知識。」


 『あ!なるほど。サバイバル用ね。』


「サバイバル用って言いました。」


「そうです。それに、この遺跡に来る前に、目印も付けておいてなかったから。今回迷わないようにして、目印を作りたいです。」


「なるほど。」


「ええ……よし。これで大丈夫だろう。」二人が一緒に何本の蔓を集めた。各腕に円のようにグルグルと回っている蔓の縄が掛けてあった。


「うん。では、早速探しに行きましょうか?あなたたちの家族を。」


「そうですね。」


 二人は遺跡を後にして、出発した。


 歩いている間、二人はもう少し交流している。


「ちなみに、ツリーセさんは『判定』のことがわかっていますね?」これは井上凜が一つロールプレイング状態に対しての疑問である。


「ええ、わかっていますが……それはあなたたちに力を貸したような感じです。僕には判定するが必要ありません。元々『キャラクター』として存在していますから。」


 井上星は内心で「へえ、不思議だな」と感心しながら、井上凜が結論をまとめた。


「つまり、ロールプレイング状態は……キャラクターの性能をそのまま発揮できるようになるということでしょうか?」


「はい。そういうことです。」この話を言った後、ツリーセは少し迷っていた。


 それは何が話したかった気持ちだった。ツリーセはうまく表情を隠したから、井上凜にはバレなかった。


 でも、身体が同じだから、井上星にはその気持ちが感じ取れた。


 『うん?どうした?ツリーセ。なんか……』


「ううん。何でもないよ。星。」


 井上星は自分がはぐらかされていることがわかっている。


『いや、何でもないじゃないだろう……』


「うん?星くんは何を言いましたか?」


「僕のことを心配しているそうです。たぶん、僕があなたたちの家族を心配する気持ちを感じたから、それを気にかけてくれたでしょう。」ツリーセは半分嘘を交じって言った。


 ツリーセは確かに二人の家族を心配する気持ちがあったが、井上星が言いたいことをピントのずれた意味にしていた。


 『違うだろう。君はもっと別の話が――』


「そうですか。星くんは優しい子ですからね。」井上凜は少し自慢げに言った。自分の弟に少し誇りを持っている。


『違う!兄ちゃん!ツリーセはもっと別のことを隠したんだよ!』井上星が伝えたかった言葉はツリーセしか伝わらなかった。


「そうですね。わかります。星はとても優しい子です。だから、心配してくれましたね。」


 ツリーセが初めて自分の話を無視した。ここで井上星が何となくわかった。


 『君は……言いたくないのか?』


「うん。」


 『わかった……無理に言わせるつもりがない。』


「ありがとう。星。」


 『でも、さっきみたいに僕の話を無視しないでほしい。なんか怖かったよ……』自分の身体は自分の意志でコントロールできないから、井上星は恐怖を感じた。


「わかった。心配させちゃってすみません。そんなつもりがなかったんだ。」ツリーセは伝わってきた恐怖を感じて、素直に謝った。


 『いや、勝手に聞き出そうとした僕が悪かった。すまん。』


 この話を聞いて、ツリーセが微笑みをした。本当に優しいねって思っている。


 微笑みを出したことから、井上凜はたぶん話が一段落したと思っていた。


「では、ツリーセさん。」しばらく進んでいた二人は、井上凜が先に足を止めた。


「はい。」ツリーセも同じ足を止めた。


「キャラクターの性能を発揮することができるなら、『捜索』のスキルが使えますか?」


「はい。もちろん使えます!」


「正直の話、私はもう『判定』に頼りたくありません。それに、メッセージがある程度の距離に近づいたら出てきます。人を探す判断の要素にもなります。だから、探す方法はツリーセさんにお願いしていいでしょうか?」


 判定はダイスを使って、運に頼るようなものだ。手がかりがないから、ずっとやむを得ず使っていたが、井上凜はあまり好きではなかった。


「いいですよ。僕に任せてください!」


「では、頼みました。」


 ツリーセは目を閉じて、自然を感じているように五感が鋭くなっていた。草木の揺れ方、木々のモソモソ音、風の風向き、また、泥と青草に混じっていた血の匂い……ツリーセは周りから感じ取った色々な感覚が井上星にも伝わっていた。


 血の匂い?井上星が疑問を感じたと同時に、ツリーセが目を開けた。


「あそこから微かな血の匂いがしますが……行きますか?」ツリーセはある方向に指して言った。


 ツリーセのこの質問に井上凜は躊躇いなく答えた。


「ああ、行きましょう!」


 二人が行動して間もなく、血の匂いが濃くなって、井上凜にも伝わるレベルだった。


 メッセージが出てきていなかったが、ある声を聞こえて、井上凜と井上星は確信した。家族がこの方向にいるということを。


「智澄さん!大丈夫ですか?」それはフロンの声だった。


 “その付近に人が集まってくれたら、力の連鎖によって、私の声が全員聞こえるようになります。”これは井上凜と井上星が遺跡の前に合流した頃、フロンが話したことだった。

余談

二人は遺跡を後にして、出発した……の前に!


サバイバルという言葉に、ツリーセがかなり興奮気味だった。

ツリーセはもう少し自分が役に立つところを見せたかった。

「リンさん!実は僕、野菜と山菜の見分け方もできますよ!」

「え?そうですか?」

『うん?そうなの?』僕はそんな設定をしてなかったはずなんだが……と井上星が思っていた。


「はい!例えば、これ!」ツリーセは遺跡の周りの雑草をもぎ取って言った。

「これは食べられます!」

その雑草は井上星が判定する時、大失敗になってしまった雑草だった。

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