表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六人家族が異世界に  作者: ヨガ
二人のシナリオ
15/109

14

 吸血鬼は明らかに井上凜のところに向かって歩いた。


 この状況を見た井上星は、すぐに手を窓際に掴んで、全身の力で軽々しく身体を引き上げた。


 井上星は上半身が丸見えの状態だが、吸血鬼がまだ血の匂いに釣られて、気付いてなかった。


 ここで井上星の前にメッセージが出てきた。


「吸血鬼の注意を引く?」


 まさかの判定ではなく、質問だった。一瞬この問題のせいで井上星は迷っていたが、すぐ行動した。


 引くに決まってる!


「おい!こっちだ!」と井上星は上半身が中に入れた後、叫び声で吸血鬼の注意を引いた。メッセージが消えた。


「シャッ!」と、吸血鬼が「あそこに人がいた?!」と驚いた様子で井上星の方へ注目した。


 やっと一回転をして、全身を建物の中に入れた井上星はよいしょっと、お尻が床の塵を宙に舞うように弾んで、座っていた。


「何をやっている!」と井上凜の注意も井上星に引かれた。すぐ隠れていた身を上げた後、心配の顔で言った。


 しかし、井上凜は身体を上げて言った後、すぐ自分との距離が五メートルも足りていなかった吸血鬼に見られた。


「シャッ!」と、吸血鬼は今回獲物を見つけたという目付きですぐ井上凜の方に見た。


「危ない!」と井上星は叫んだ。


 吸血鬼が井上凜に気付いた瞬間、シャッと叫びながら井上凜に向かって走り、両手の白くて鋭い爪で襲いに行った。


 井上凜は反応が一秒に遅れて、すぐに立てられなくて、ただお尻を床に引きずりながら後ろに下がっている。


 鋭い爪が井上凜の顔に掠って、横線のかすり傷が作られた。


「ま、待って!話し合――」後ろに下がりながらも、井上凜はコミュニケーションを試みた。


 だが、無駄だった。


 吸血鬼は井上凜の話を聞く気がなく、もう一度爪で井上凜に襲いかかった。


 今回井上凜は同じく後ろに下がっていても、一回目の教訓を得た吸血鬼が片手ずつで二回攻撃を行った。


 シュッと、井上凜は右手の攻撃を避けても、すぐ吸血鬼に近づけられて、左手の攻撃がすぐ目の前に迫られた。


 避けられないと思った井上凜は次の瞬間、目の前に迫られてきた爪がとある人に押されて、突然いなくなったように見えた。


 井上星だった。


 実は態勢を整えた井上星は、吸血鬼に向かって、タックルのように吸血鬼を床に押して組み付いたのだ。


 一瞬状態が飲み込めない井上凜だが、やっと身体を起こすことができて、すぐに立っていた。


「に、兄ちゃん、早く――」逃げて――と言いかけた井上星だが、吸血鬼がずっと暴れていて、全部の話が言えなかった。話をする瞬間、少し力が緩んでしまうから。


 当然、井上凜は弟の気持ちを汲み取ってできても、逃げるつもりがない。弟に危険を遭わせたくないから。


 だから井上凜は井上星の方に走って、弟と一緒に吸血鬼を制圧するつもりだった。


 しかし、井上凜は行動に移したばかりに、吸血鬼がずっと暴れていて、突然ガブっと井上星の手を噛み付いた。


 痛みを感じた井上星は思わず「あ!」と叫んで、吸血鬼を組み付くことができなかった。


 解放された吸血鬼はまるで甘味を得たかのように、二つの牙が深く井上星の手に刺さって離せなかった。


 ゴクという音で明らかに何かが飲まれて、そして、腕のところに何かが吸われていた。井上星は気持ち悪い感覚がした。


 顔色が若干真っ青になった井上星は片手で吸血鬼を押して、離せさせるつもりだったが、意外と噛む力が強かった。


 だが、実は吸血鬼は噛む力が強いではなく、ただ腕の力だけだと、当然全身の力を駆使して噛みついた吸血鬼に離せさせられなかった。

 

 井上凜はこの状況を見て、吸血鬼の後ろに回った後、吸血鬼の顎と首に組み付き、上へ上へと引き上げ続けた。


「星くん!腕を下に引け!」井上星は言われた通りに腕を下の方向に引いていた。


 そして、プチっと、二人は協力して、やっと吸血鬼の口に離せさせられたのだった。


 井上星が吸血鬼と離せた瞬間、井上凜も一瞬で全身の力で吸血鬼を押して、相手と距離を取った。


 吸血鬼は自分の身体がどうでも良かったかのように、押された力に任せて床に転んでいた。すぐ座り態勢になったが、ただただ舌で唇の周りを舐め回って血を啜った。


 まだ気持ちが落ち着いていないが、井上凜はすぐ井上星の傷がどうなったか心配している。


「大丈夫?」


「痛い……」二つの穴ができてしまった腕を見て、井上凜も痛かったかのように眉をひそめた。


 少し状況が落ち着いたと思ったフロンはここで話しかけた。


「二人ともだいじょ――」「まだ終わっていない!話は後だ!」


 井上凜はすぐフロンの話を塞いだ。


「わ、わかりました。気をつけてください。」身の安全を確認した後、どんな状況なのか確認したかったフロンだが、状況を確認できなかった。


「指で押さえて。」毒があるかどうかわからないが、井上凜はとりあえず止血を薦めた。


「わかった……」井上星は傷口を指で塞いだ。


 井上凜はここで吸血鬼の行動を一瞥し、もうすぐ立ちそうになった吸血鬼を見たら、すぐ身体を吸血鬼と井上星の間に防いで、こう言った。


「逃げるぞ!」


「兄ちゃんも――」「君は先に下へ行け!俺は後だ!」


「うっ!」さすがにこんな混乱な状況で反論できなかった井上星は大人しく二階に降りた。


 二階に降りる途中、井上星は濃くなった色の部分を避けながら、二階の真ん中に着いたら、何か思い出したかのように慌てて叫んでいた。


「兄ちゃん!君の肘!それと、二階の罠!念のため、フロンおじさんも兄ちゃんに伝えて!」フロンの声が聞こえたから、ついでにフロンにも言っておいた。


 実際、この行動が正しかった。遺跡では声が伝えにくかったから。井上凜は弟の声が聞こえたが、内容の詳細が曖昧だった。


「わ、わかりました。」


 そして、全てを伝えた後、井上星は二階の真ん中にいたから、すぐ一階に行くつもりだったが、身体を回る時、開いた魔法の扉に一目を見た。


 もしかしたら、中に使えるものが……と考えて、井上星は勇気を出して扉の中に入ったのだ。


「兄ちゃん!君の肘、それと、二階の罠って星様が伝えていました!」とフロンが井上凜に話した。


「わかった!」井上凜は返事しながら、自分の肘を一瞥して確認した。わずかな血が滲んでいる。


 二階の罠……と思考の時間がなく、吸血鬼はここで身を翻した。まだ獲物を見つけたかのように、井上凜に向かってシャッシャッと吼えていた。


 井上凜はすぐにでも下に降りるつもりだったが、吸血鬼が強いジャンプ力を見せつけて、天井にも届きそうな高さで井上凜の身体に飛びつくそうになった。


 しかし、吸血鬼が大きな動きから、井上凜はとっさの反応で身体を左に移動し、また吸血鬼と距離を取るために後ろに何歩下がった。簡単に避けた。


 井上凜は飛びつけられなかったが、偶然吸血鬼に階段の進路を塞がれた。


 今井上凜は下の方に降りられなかった。


 何とかして吸血鬼を階段から引き下がると考えて、井上凜は自分の身体を囮として、すぐ三階中央のベッドの方に走っていた。


 走りながら、「へ!こっちだ!」と声を出して、吸血鬼の注意を引いていた。


 吸血鬼は井上凜に目をつけながら、楽しそうな表情でもう一回ジャンプした。ただし、吸血鬼は直接に井上凜の身体に向かうではなく、距離を詰めるために、中央のベッドに着地した。


 知恵があるのか!


 井上凜はベッドを一周回るつもりだったが、吸血鬼は直接ベッドに四足歩行の態勢でいつでも飛びつくことができそうだった。


 井上凜は動きを止めて、しばらく吸血鬼と睨み合っていた。お互い動き出したら、逆に隙が作りそうだったから。逃げられないために、逃げるために、遺跡の三階の空間は何秒の時間が静寂になった。


 そして、先に動き出したのは吸血鬼だった。吸血鬼はシャッと叫んで、直線の方向で井上凜に片手が掴むような形で、もう片方が攻撃するように爪で襲いに行った。


 井上凜は吸血鬼が襲ってきたら、すぐ身を翻し、身の力によって足が弧線を引いて、華麗なる回転蹴りを放った。


 足が吸血鬼の顔にぶつかり、態勢が崩れて、ドンと床に横になった。井上凜はこの隙に階段の方へ走っていた。


 吸血鬼は起きていたら、動物のように頭を横にプルプルと振っていた。ちゃんと景色を認識して、視線がすぐ井上凜の背中に向けた。


 井上凜は階段の付近にたどり着き、吸血鬼が後を追うようにジャンプした。吸血鬼の爪が井上凜の首筋に届きそうなところで、井上凜はちょうど階段を降りた。爪が虚しく空を切った。ついでに衝突力も消えていなくて、吸血鬼の身体も壁に強く当たった。


「シャッ」という声を発して、また井上凜の背中を見ていた……といったところ、井上凜はわざと足を止めた。


 井上凜は濃くなった石の色の後ろに立っている。吸血鬼に罠を踏ませようとした。


 だが、吸血鬼は井上凜に向かって攻撃しても、罠を踏まなかった。まるで罠を意識して避けたのだった。


 嘘!予想外のことが起きて、これしか考えられなかった井上凜は自分に向かってきた攻撃を避けた。


 当然だが、吸血鬼たちは罠を踏まずに三階に登ったのだ。つまり、罠を認識する能力が持っている。


 罠もダメなら、やはり逃げるしかないと、井上凜は吸血鬼と面と面を向かって、後ろに下がっている。


 だが、今回逆に井上凜が床に注意できなかったせいで、もう一つの罠を踏んでしまった。


 キーンと、井上凜は後ろの下から金属音と寒気を感じた。ゆっくりと頭を回って見たら、何本の槍が床から伸ばした。


 もし後ろに下がるではなく、前に歩く感じだと、槍は必ず……井上凜は想像したくなかった。


 吸血鬼は罠を踏んでしまった井上凜を見て、まるで残念がっているような、嘲笑うような「シャ」という声を出した。


 笑われていた井上凜は、明らかに吸血鬼が最初より知能が上がっている感じがした。この考え方が浮かんだ瞬間、井上凜の前にメッセージが出てきた。


「スキル“交渉法”を使って、もう一度会話を試みます?(その場合、判定が必要です。)」


 何で質問?と井上凜は井上星と同じく一瞬迷っていたが、深く考えずに交流を試みた。


「さてはお前……喋れるのか?」と井上凜が話した。


 ずっとシャーシャッと叫んで襲いに来た吸血鬼に対して、少し意外な行動を取ったのだろう。吸血鬼はまるで井上凜の話に疑問を感じて、ちょっぴり人間らしさの動きを出した。


 そして、井上凜の前にダイスのメッセージが出てきた。


「『吸血鬼との交流』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。

 『交渉法』スキルを使用することによって、出目の結果が+2の修正値がかかる。

 1:ファンブル。

 2~5:部分的に成功。

 6~9:成功。

 10:クリティカル。

 その他:その他。」


「なんか動きが違う……賢くなったのか?」自分を襲わなかった吸血鬼にそう言いながら、井上凜はダイスを振った。


 井上凜の結果:10(+2)=12 クリティカル


 珍しいことに大成功の結果が出た!


 元々虚ろな目の吸血鬼は、わずかに元気を取り戻した感じだった。


「……だから?」と吸血鬼は若干鋭くて、ボイスチェンジみたいな声を出した。


 しゃ……喋った!本当に喋った!とずっと内心でドキドキとしている井上凜だった。


「じゃ、じゃあ、話し合――」とまた言いかけた井上凜だった。


「お腹が減っているんだよ!ああ……またイライラしてきた……」と井上凜の言葉を聞く気がない吸血鬼だった。


 さっきわずかに元気を取り戻した目がもう一度虚ろな目になってしまった。だんだんと野生化の動きになった。


 嘘だろう!大成功を出しただろう?!もう少しこちらとコミュニケーションを取ってよ!


 吸血鬼は井上凜に襲いかかった。


 そして、魔法の扉の中に入った井上星は、激臭を耐えて、目にしてしまった景色はおぞましいものだった。


 だから、彼は判定をしていた。現実逃避のために、精神を保つために。


「『精神の判定』に難易度がある。判別の難易度:≧9。

 1:ファンブル。

 10:クリティカル。」


 井上星はダイスを振った。


 井上星の結果:10 クリティカル


 珍しい結果だったが、井上星は喜べなかった。見たくないものを見てしまったから。


 井上星はここから出たかった。しかし、思わず泣いていた。思わず床に膝ついた。彼は動けなかった。怖かった……いいえ、その上に、彼は悲しんでいる。


 ごめん、ごめんと……井上星は空気に向かって内心で謝っている。


 井上星は冷静を保っても、動き出せなかった。身体がプルプルと震えていて、動き出せなかった。


 突然、井上星の前に、メッセージが出てきた。


「兄ちゃんのことはいいの?」


 また質問された。


 なぜだ?


 井上星はわからない。でも当然、いいわけがない。


 だが、井上星は動き出す気力がなかった。もし自分もこんな風になると想像してしまったら……


 まるで、会話しているかのように、またメッセージが出てきた。


「ちょっと僕と、変わってみない?」


 君と……?井上星は理解が追いつけなかった。


「ロールプレイング状態に、して。」


 ロールプレイング状態……井上星は目の隅の方に向いた。


 ―――――――――――――――――――

「ロールプレイング状態にしますか?」

 はい・いいえ。

 ※ロールプレイング状態にしたら、一時的に自分に戻ることができません。

 時間制限:1時間。

 ―――――――――――――――――――


「君は……」誰?


「早く、大成功、効果が、もうすぐ、消える。話しが、できない。君と、もう少し、話が、したい。」


 井上星は誰なのかわからないが、何となく同じ気持ちだった。メッセージの人と話がしたかった。


 だから、井上星は指示通りにロールプレイング状態にした。


 井上星はメッセージに「はい」と答えた。


「はい」と答えた瞬間、まるで自分が心のどこかに縮こまって、映画を見ているような感覚だった。


 また、隠れているような感覚だった。


 縮こまっている途中、とある気持ちが井上星の心に伝わった。


「ありがとう。僕を信じてくれて。」


「君は、一体……」


「ツリーセ。君が僕に作ってくれた『キャラクター』だ。」


 ツリーセ……え?


 井上星がロールプレイング状態にした同時に、フロンも同じような文字情報を見ていた。


 その文字情報は名前の変更だった。つまり、井上星ツリーセツリーセ(井上星)になったのだ。

全年齢のため、色んな明確な表現を伏せました。

ちなみに、今回のダイス私もびっくりしました。

挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ