(2)
町に来てからもう十日目。石造の建物にもう慣れっこで、色んな青銅器、鉄器にも目を眩むことがなくなった。
自分の好奇心は「俗物」と言われるほど生きてきた身として、少年神官はうろちょろという気持ちを控えて町に歩いている。それでも少年らしさの元気が余るぐらい、時々視線が色々なところに移してしまう。
首都圏に近づけば近づくほど、村はもちろん、町はどんどん繁盛するものだ。ファッションや商売、植物の成長生態や書物の知識まで、10歳の少年にとって見どころ満載としか言いようがない世界だ。むしろ見ないでという方が無理がある……
そのため、後半の街に歩く時、すでに自制心がなくなった少年神官はもう色々なものに目を移ってしまった。
繁盛している市場に他の神官の姿もいるため、少年神官の姿は極めて不自然ではないが、それでも神官の身だしなみとして多少の注目を集める。そんな中、果物の出店、八百屋の露店、雑貨屋など、それぞれの店主に話しかけられた。
「神官様!今日も出かけですね。」
「ええ、旅館の旦那にちょっと頼まれましてね。魔物の駆除でして……」
「あらまあ……じゃあ、この果物はお食べ!先日のお礼でねーちゃんと精が出るよう願っていましたよ!」
「ありがとうー!」
「神官様」「神官さまー」それぞれは先週や初めて来たときのお礼だと、贈り物を送っていた。十日泊めていただけだが、すっかり市場の人たちに好かれている。またよく見ていれば、少年神官の身に集まる注目はほとんどこのように好意的な人たちである。
父に押し込まれていた教えを守って、このように一年間の神官巡礼に役に立っていた。
人が困ったら、助けをしよう。その見返りは定める時に返ってくる。返らなくても、それも一つの試練……
(……父さんの言う通りだったな。ちょっと気に入らないけど。)こう思いつつ、少年は父の教えに感謝している。教えを守ったおかげで、自分の神官巡礼は順調だった。無事に終わりそうだ。
この町の滞在が終われば、故郷まで帰る旅をするつもりだ。故郷には自分のことを待っている人がいるから。
その前に、手紙を出して知らせをする。だから、旅館の手伝いをする。
また、神官になれば、色んなところに回れる。だから、神官になる。神官巡礼もする。
動機が不純でも、色々なことをちゃんとやり過ごしていた少年の神官見習いは、魔物の駆除をしに行った。
三日後にこの町から出発して、故郷への旅路に踏み出すつもりでいる……
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「倉庫の魔物というと、やはりスミグラシだろう……」と少年神官は倉庫の前で気が滅入る様子でボソッと呟いた。
スミグラシ、名の通り建物の隅に暮らしている黒いトゲがある丸い玉状の魔物、だいたい人の積荷の後ろに隠れするのが多い。攻撃性があり、近づくとトゲが発射される。特にトゲには毒があり、刺さると痛いうえ、親指大の腫れ物ができてしまう。
小さな見た目に反して、迷惑以上の問題が出るくらい厄介な魔物だ。
少年は一年間の神官巡礼にこの問題は気が滅入ってしまうほどの数を解決したのだった。当然、苦労も味わっていた。
前の町に歩く姿と比べたら、元気とやる気もないということが一目瞭然である。それでも受けた依頼をこなしているつもり。
「うーん。建物の構造からすれば、火はダメだろうな……積荷にも傷んでしまうかもしれないし……」
火、水、風、雷……現象に関するものはどれも使えない……面倒だなーやはりアレを使うしかないのか。
少年は半ば諦めて、集中する。数秒をかけて、彼は言った。
「……空気よ、お願い。」【バリア】(*1)
「あとは、【五感上昇】かな。」
このまま魔法を使っていた少年は倉庫の扉を開けて、入ることにした。
少年は入る瞬間、パタンと扉がしまった。
少年は扉のことを気にせず、「光よ、お願い!」と言って、手から小さな光玉が浮いて、照明に与えた。そして、一瞬で光に充満された室内に、いくつかの黒い影がどこかに潜むのを見かけた。
でも少年はまずそれらを無視して、とりあえずこん棒を取り出し、手に付けていながら周囲を観察している。
倉庫だけであって、積み荷だらけだった。しかし、蓋が閉じない箱など存在しない。どれも綺麗にしまっている。その上、箱は一列一列にちゃんと並べている。
箱を置ける棚があって、奥の方まで続いている。最奥にはもう高台に積みにされているよう天井まで届きそうである。歩く道も「井」の字になるくらい、箱の列が交差し合う。箱と箱の間に歩いていたら、箱の置き棚の隙間だけ後ろの空間が見える。
光があったとしても、視野がいいとは言えない。それでも少年は独り言をつぶやいた。
「ざっとみ、箱の後ろにいるやつと合計したら14……いや、15体かな……」
とりあえず――少年は片手で軽く片方の耳を塞いで、深呼吸をした。お腹もちょっと膨らんで、口を開ける――
「わぁー!」そして、耳を塞いでも、箱が閉まっていても、大きな震動もするくらいに大きな声を出す。
音波並みの叫び声。もはや一種の攻撃に数える。
叫び声の震動に、一つ一つの黒い影はうぞうぞと蠢き、姿か現した。
――攻撃だ!と一句も二言もなく、少年はすぐこん棒を握って、綺麗な足運びで黒い影――スミグラシに近づいた。無情にこん棒を振りかかって、プチという音とともに、トゲがいかにも簡単にへし折られる。
また、へし折られる残骸は黒い煙と化し、壊されたようなボールの黒い玉の姿はそれでいなくなる。
プチ、プチ、プチ……と、近づけられると黒いトゲを発射する特性はまるで無視されるよう、棚の隙間から、箱の隙間から、または隅の隙間から一つ一つ壊していく。
その数は一瞬で半分まで減らしていた。
だが、一つの黒い影がただ小さく蠢くと、少年は瞬時に足を止める。止めるのは他ではない。
プシュッという音に気付き、少年は目の前に掠めていく黒いトゲを避けていた。
「……ここからだよね。」
少年がそう呟くと、さっきまでまだもぞもぞと蠢いている黒い影たちはすでにサッサッサッといういっぱいの針が立てて、標的を狙う様子だった。
当然その狙う標的は少年である。
プシュッ、プシュッ、プシュッ、それぞれのスミグラシが黒いトゲを発射し、少年の方へ飛ばす。
七方向以上の攻撃は普通に避けるのは不可能だ。それに飛んでいる速度も速さがある。実際少年も避けていない。「臨時」の盾を使っていた。
少年は半分まで減らす時、もうどっかの箱の蓋を取っておいたのだ。
点の攻撃を面で防ぐ。方向と距離が近い奴らの攻撃を盾で防いで、残りのやつは援護体(箱)で塞ぐ。それでも取りこぼしがあるなら、こん棒で振り払うか、命中しないと祈るか、あるいは直接に喰らうかということになる。
もちろん少年は痛くなるのは嫌だが、一枚や二枚の針を喰らう覚悟ができている。
つまり、
プツァ
「グッ……!」
少年は要害だけを避けて、盾を持った肩にトゲが刺さっても、少年は突き進む。
「はぁあ!」痛みを和らげるために、少年は叫びながらこん棒を振った。さらに一体、一体、もう一体を解決しに行く。
シュッ、サ、タ、足運びは綺麗なまま、こん棒はすばしこく振り続ける。
そして、いつの間にか見える範囲のスミグラシはほぼ残骸と化して、いなくなった。
多少の疲労がたまっていたが、少年まだ警戒を怠らない。少年は最奥の方に視線を移し、まず肩や他に掠り傷されたところを簡単な魔法に治療を施した。
「……うう、もう腫れたよ。薬草だけは使いたくなかったんだけど。これはもう……敷いたほうが……」と若干涙目になっている。
薬草は臭いから、使いたくない。これは少年の本心。
「でも、それもこれも後だよな……」
少年は落ち込み気味で、最奥の方にゆっくりと足を運んだ。最初に倉庫に入ったと同じように、少年は深呼吸をした。だが、今度は普通に息を吐いただけ。
「ふー……」彼は息を吐いた後、目を閉じた。集中している様子。
再び目を開けた時、少年は「光よ!お願い!」ともう一度に口にした。
すでに何の黒い影がいないはずだ。スミグラシがいなくなったはずだ。
でも、少年が使っていた魔法により、成人の頭より大きいサイズの黒い影の玉が、うようよと色々な集合体に形成されたようなものは、ゆっくりと現した。他のスミグラシと比べて、明らかに一回り大きい。
「これが嫌いなんだよ……」と少年は集合体に対しての感想を呟く。うぇーという気持ち悪い表情も明らかとなった。
そして、まるで少年がつぶやいた感想に対して不満を感じたよう、その頭大のスミグラシはすぐ敵意を表し、攻撃のトゲがプスプスと伸びている。
「……さっさと終わらせよ。」
忘れられていたかもしれないので、一応の註。です。
(*1)【バリア】:使い勝手はいい。他の魔法の効果と重ねられる、が、ダメージの効き面として【結界】(*2)より弱い。
(*2)【結界】:あらゆるのダメージを防ぐことができるが、他の魔法の効果と重ねられない上、一日に使える制限回数がある。人によって制限回数は違うが、スクロールものは一回のみ。また、結界は一回攻撃を受けた後すぐ消える。




