変なおじいさん
翌日、チェックアウトして、表通りに出ると、昨日の高齢の男性が花束を持って立っていた。私を見つけると、こちらに来て、私に花束を突き出した。
「わしと一緒に、食事でもいかがかな?」
私が無視して通り過ぎようとすると、彼は続けた。
「1回の同伴で、100万でどうだ?」
「お金には不自由していないので」
そう言い残して、私は早足にその場を立ち去った。実際、お金にはあまり興味はなかった。有っても使いみちがない。
むしろ、付きまとわれて、不気味さの方が強かった。
それから、いくつか人の多そうな店に行き、親の写真を見せて聞き込みをしたが、結果は昨日と同じく、誰も知らなかった。
私は諦めて、大宮の自宅へ帰った。
時間も立ち、少しずつ心が落ち着いてきた。それにバイト代もなくなり、食料品が買えなくなったので、私は再び駐屯地へ行き、バイトを再開した。
まず最初に、一戸さんの墓の場所を聞き、最初のバイトが休みの日に墓参りに行った。
一戸さんの墓地はすぐに見つかった。花を生け、線香に火を付け、墓石の前にしゃがんで、黙祷した。
目を開けて、帰ろうとしたら、少し離れたところからこちらに歩いてくる母と小さな子の姿が目に入った。
私とすれ違いざまに、母の方が軽くお辞儀をしたので、私も軽く頭を下げた。それから振り向くと、彼女は一戸さんの墓の前で止まり、しゃがんだ。
一戸さんの奥さんと子供だったんだ。
以前、一戸さんの遺品のペンダントを奥さんに渡しに行った時に、お互い一度会っており、奥さんも私の顔を見ているはずだった。
その奥さんが、私に挨拶してくれて、救われた気がした。今までずっと恨まれているような気がしていて、この重荷をずっと背負っていかなければならないように感じていた。
でも、許してもらえた。そう思った。
ふっと、気が軽くなった。
翌日から、私は今までと同じように、バイトを続けた。




