閑話 アンクの冒険譚ー3
何故か中途半端な所で掲載されていたので、文章を追加しました。
申し訳ありません。
side<ファーゼラス>
私はある伝手から耳にした情報を元に、先程入国してきたという子供達の集団を探していた。
探している理由?それは、ただ単に好奇心が湧いたからに過ぎない。
ギルド長である私が無闇に時間を割くことはできないが、Aランク冒険者相当の実力があるであろう少年がいるなんて聞けば自分の目で見てみたくもなる。
「確か、家を探し回っているという話でしたか…。まぁ、この辺りではまず見つからないとは思いますが、万が一がある少し急ぎましょうか」
私は少し足を速め探す事にする。
しばらく歩くと人気のない広場に出た、ここはこの辺りに住む者達ですらあまり寄り付かない場所だ。
しかし、そこには場違いな存在がいた。
年端もいかない少年少女達、どうやら様々な種族が居るようだ。
獣人にエルフましてや半魔まで……
「さて、なんて声をかけたものか……どうやら予想通り家が見つからなくて途方に暮れているみたいだ」
私は軽く服装の乱れを正した後、ゴホンと咳払いし気を取り直し少年達へと歩みを進めた。
「少年、少し話をしないかい?」
私は極力警戒されない様に少しの笑みを浮かべながら話しかけた。
★★★
話してみて分かった、私の正面にいる少年は只者ではない。まず隙がほとんど無い、私と話している最中も辺りを警戒し常に背後に庇う子供達を守れる位置にいる。
そしてどんな相手にも物怖じしない胆力、極めつけは潜在能力の高さだ。
前情報で聞いていた通り、彼は今の実力ですらAランク冒険者を瞬殺できてしまうだろう、もし彼が成長しその才能を開花させたらと思うと鳥肌が立つ。
それに、職業が分かっていない状態でこれなのだ……その職業の力を使い戦えば彼はもっと強いのだろう。恐らく彼はこの年齢で私の全盛期を軽く超えている。
できるのものなら、早く冒険者になって第一線で活躍してもらいたいものだ。
だが、あまり色良い返事を貰うことはできなかった、まぁ、それも当然かもしれませんが。
ですが今はという言質を得ただけでも良しとしましょう。
私はアンク少年と二言三言交わした後、胸ポケットから紙を出し紹介状を書く。内容は家の斡旋、冒険者への優先登録だ、これさえあれば苦労はしないでしょう。
どうやらお金の方は問題無い様だからね。
そして、私がアンク少年に紹介状を渡すと彼はこう言った。
「この紙切れは?」
いやはや、この少年の将来が楽しみだ。
「私が書いた紹介状を紙切れ呼ばわりとは……君は将来かなりの大物になりそうだ、その紹介状があればいい家を紹介してもらえるでしょう、それともし冒険者になるならギルドの受付でそれを出しなさい、では私はこの辺で失礼しよ…おや?」
紹介状を渡し終え、ギルドへと戻ろうとすると目の片隅に厄介事の種を見つける。私はため息をつきながら気配を消し背後へと移動する。
その厄介事の種というのは、我がギルドに所属するダスト三兄弟という問題児達だ。
あらゆる犯罪に手を染め、裏の世界にも通じているという噂もある。
それになまじ実力があるから厄介なんだ。
彼らの冒険者ランクはA、しかし彼らの持つ職業を併せて考えるとその実力はSにも届きうるでしょう。
だが、彼らは感情に左右されやすい、それもあり未だAランクを抜けきれていない訳ですが。
ダスト三兄弟は私の存在に気づかず、あろう事かアンク少年のグループに絡んでいたのだ。
仮にもAランク冒険者の彼らが、アンク少年の力を見抜けないとは冒険者の質も昔と比べ落ちていますね。
会話を少し聞くと、どうやら面識がある様だった。
ダスト三兄弟がアンク少年達に向ける感情は怒りのみ、友好的な関係でないのは明らかだ。
傍から見れば悪質冒険者がか弱い少年少女に絡んでいる風に見えるが、私からすれば、龍の尾を踏んだ蟻を見ている気持ちになる。
私がそんな荒唐無稽な例えをしている間に話は進み、ダスト三兄弟の一人、ダスト・ローンがアンク少年に殴り掛かろうとしていた。推察するにアンク少年に神経を逆撫でされてきれてしまったのだろう。
実に分かりやすいですね。
私は怒気を込めて彼らに問いかける。
「何をしている?」
「なっ!?ギルド長!」「ちっ!クソジジイなんでこんな所に」「変なタイミングで現れやがって!」
ダスト三兄弟は口々に私へと悪態をつく、やはりその人間の本質というのは変わらない。
「ダスト三兄弟、君達にギルド長として問う、なにをしている?度重なる警告にも関わらず、恫喝、恐喝、殺人未遂、遂には殺人を犯そうとしているのかな?もう君達は冒険者でもなんでもない、ただの犯罪者だ、後で冒険者名簿から除名しておこう」
今上げた犯罪はただの例に過ぎない、一つ一つ立証し上げればその数は膨大なものになる。
しかし、そんな事に時間が割けないのも事実、被害者達には申し訳ないがこれが現在のギルドの状況なのだ。
私はそれだけを一方的に言い残しその場を去る。
すると、予想通りダスト三兄弟は私が背を向けた瞬間各々の武器を手に襲いかかってきた。
はぁ、と私は軽くため息をつきながら反撃の手順を考えるが、私の行動は無意味に終わる。
「爆ぜろ『千変万化』」
「あばっっっっっ」「がぼっっっ、おべぇぁぁあ」「ぎゃん……」
と、アンク少年が唱えた瞬間ダスト三兄弟は血を噴き出させながら息絶えた。
それは本当に文字通りの秒殺だった、もはや笑える程の呆気なさに私は固まるしかできなかった。
長い間冒険者をしている時でも、こんな事を体験した事は片手で足りるほどしかない。
「僕達は失礼するよ、早速この紙の力を借りるとするか、行くよみんな」
「「「「はーい」」」」
そんな中、アンク少年達はこう言い残し去った。
血みどろの死体と共に取り残された私はこう言うしかなかった。
「まさか……ここまでとは…」
アンク少年の行動は恐らく、私を守り先程の恩を返すつもりでやったのだろう。
しかし私は、ギルドに戻ってから処理しなければならない書類が通常の倍に増える為、どこか釈然としないまま掃除屋を呼ぶのであった。




