災厄との対峙
大変お待たせして申し訳ありませんでした。
これからは一週間に一回のペースで更新できたらと思っています。
帝国最後の勇者である獅鷹を探している時、異変は起きた。
突然地表から現れたドス黒い瘴気が逃げ惑う市民を次々に飲み込み淡々と命を奪っていく、その瘴気は人間に留まらず大地をも飲み込み腐敗させ建物すらも崩壊させていた。
「おいおい、また厄介事か?」
俺は突然始まった阿鼻叫喚の地獄絵図に思わずそう呟いた。
「面倒なのが出てきたみたいだ、僕達は身を守れるけどなんの力も持たない人間達は即死だろうね」
ルーシもこの光景を見ながらそう判断する、俺たちの予想が正しければさっきまで感じていた異様な気配の仕業だろう。
「全くなんで俺の嫌な予感ってのはこうも当たるのかねぇ…はぁ」
ここへ来てからというもの面倒事に巻き込まれてばかりだ、本当に嫌になる。
今でこそこうやってルーシーやアーシャと過ごし落ち着いたがやはり、地球にいた時有栖と過ごしていた時が一番幸せだった、あの時間が恋しくなる。
「さてさて、感傷に浸ってる場合じゃないさっさと獅鷹を殺して次の勇者狩だ」
首を洗って待ってろよ、クズ野郎共。
「あぁ、いい、いいねその表情、やっぱり君はその顔をしている時が一番美しいよ」
「ん?なんか言ったかルーシ」
ルーシが俺の顔を見ながら何か言ったのは分かったが周りの悲鳴がうるさ過ぎて何て言ったのかは分からなかった。
「いいや、何もないよ十六夜君、先を急ごうか」
「そうか、あぁ勿論だ」
ただでさえ遅れている、時間は有限だ。
「スピードを上げる、ついてこれるか?」
俺はルーシーとアーシャに確認する、ルーシーは問題無いだろうがレナを背中に乗せているアーシャは少し心配だ。
「全く問題ないさ、アーシャも大丈夫だよね?」
ルーシーはアーシャへと振り返り笑顔でそう聞いた。
その問いかけにアーシャも同様に笑顔でこう返す。
「はい、大丈夫ですよ?もっと上げて頂いて構いません」
何故か二人から寒気を感じる程の圧を感じた…女ってのは怖いな。
「そうか、なら行くぞ」
「了解だよ」「はい」
二人の力強い返事を聞いた俺はスピードを数段上げ走りだした。
★★★
「くあぁぁ、やっぱり外はいいなぁ、おい。
あれからどれだけ時間が経ったか分かんねぇが、随分と変わったな」
体に鎖を巻き付け頭から二本の角を生やす人物は遠くを見ながら感慨深そうにそう呟く、だが目には殺意と全てを破壊するという意思がギラギラと宿っていた。
「っと落ち着け、クソ親父に封印されてからと言うもの欲求不満で仕方ねぇ、まずは女でも喰らうか?くははは、さてさて良い女はいねぇかなっと……いたいた、あいつに決めたぜ」
彼は空中から獲物を見定め、襲う相手を決めた。
その人物は綺麗な銀髪をしており、容姿もとても美しい。
彼の目に止まるのも不思議ではない、しかし彼は周りを見ていなかった。
獲物として襲うと決めた彼女の前を走る、一人の少年を見逃していた。
彼からすれば人間なんてとるに足らない存在かもしれない、少年一人眼中に無くて当然かもしれない、だがその少年がもつ力を見抜けなかった時点で三流なのだ。
彼はわざわざ自ら死地に飛び込む事になる、なにも知らずにただ欲望を満たすために。
この光景を見れば彼の父は呆れ見捨てるだろう、もはや彼に未来はない。
★★★
走り出して数分後俺は妙な気配を感じ空中を見上げた、そこには体に鎖を巻き付けた変な奴が浮いていた。
そいつはある一点を凝視していた、それは俺の背後にいるルーシだった。
俺はそいつの背中に生えている羽が動くのを見逃さなかった、俺は咄嗟に踏み止まりルーシーの元へと一足で移動する。
そしてルーシへと羽ばたいて来たそいつの頭上に空中で回し蹴りをお見舞いした。
肉と骨を断つ感触が足から伝わってくると同時にそいつは俺の蹴りに耐え切れず地面へと埋まった。
「なんだ?あいつは……勇者以上の力は確実にあるな」
俺は地面に空いた穴を見ながらそう分析する、ルーシの元へ移動してきたスピードといい、俺の蹴りに反応した速度といい、確実に人知を超えている存在だ。
「頭を潰したつもりだったんだがな、咄嗟に腕でガードして威力を殺したか…まぁ腕は断ち切れたから良しとしよう」
「十六夜君今のは?」
「さぁな、だが俺らに害をもたらす存在なのは確実だろうよ」
「…十六夜さん、きます」
アーシャがそう言った瞬間地面から先ほどの人物が飛び出してきた、俺が断ち切った腕は既に生えており完全に復活していた。
「貴様何者だ?人間…なのか?」
どうやら混乱しているようだ、それも当然かもな。
「元人間の方が正しいな」
「元人間…だと?貴様からは人間の気配しか感じないぞ、いやだが先程のスピードにあの蹴りの威力…あながち間違いでは無いようだな」
「そりゃどうも、それでお前こそ何者だ?うちのルーシーに用があったみたいだが?」
俺の問いに鎖を巻き付けた変態はこう答えた。
「くははは、なぁにその女を俺様の欲望の捌け口に使おうと思っただけよ、なんの問題もあるまい」
「あははは、そうかよ、死んでから後悔しても遅いからな」
予想していた通りの返答でもはや笑いしか出てこない。
急ぐぞと言った矢先の事だが、俺らに害をなすならそれを排除するのは当然だ。
ましてやルーシーを襲おうとしたんだ、死で償ってもらおうか。
「ルーシー、アーシャ俺は野暮用ができた二人は先に行って勇者を見つけておいてくれないか?こいつは愚かにもルーシーを襲おうとした、そんなアホにはそれなりの罰と痛みを与えなくてはならない」
「俺様が…アホだと?貴様ぁぁぁぁ」
「頼めるか?」
俺は喚き散らす変態を無視して二人との会話を続ける。
「ふふっ、構わないよ、それに君が僕を思っての事なんだ尊重するさ」
「えぇ、私も異論ありません」
「そうか、二人ともありがとう。また寄り道をする事になるが許してくれ有栖」
「なら行くよアーシャ」「はい、ルーシーさん」
俺は二人の背中を見届けて未だに喚き散らす変態へと向き直る。
「待たせて悪いな、さて始めようか、お前は今から俺が殺す」
「ふざけるのもいい加減にしろ、人間の小僧が調子に乗るなよ?俺様は魔王サタンの息子、アスモデウス。全てを滅ぼす者だ、俺様を殺すだと?大きくでたな小僧」
「へぇ、そんな大した奴には見えなかったもんでな、さぁ始めようか?殺し合いをさ」
「良いだろう、そんなに死にたいならすぐにあの世へ送ってやる」
未曾有の危機に陥っている帝国で災厄と一人の少年の戦いが始まった。
これによりまた多くの命が奪われるだろうが、二人とも気にも止めないだろう。




