少年の悲劇
俺はベッドの上で頭を抱え痛い痛いと叫ぶアンクを見て、牢屋の中にいた時の自分を思い出した。
あの時の俺もアンクと同じような精神状態で、なにも見ようとはしていなかった。
自分の弱さにも目を向けなかった…今の俺には力がある心強い仲間がいる、だがそれは俺自身の力で得たものではない。
知らぬ誰かから与えられた力を使っているに過ぎない、その力を自分の力だと思い込む程俺は傲慢ではない。
アンクは自分でここまで頑張った、勇者を殺すために。
だが弱い、弱すぎるこれでは一方的に殺されて終わりだろう。
因みにアンクのステータスはこうだ。
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名前 アンク
種族 人間 年齢14
レベル 36
職業 魔物使役者
HP 3000
MP 0
体力 1000
力 1000
魔力 0
耐久 5000
器用 1500
敏捷 2000
スキル
【魔物洗脳】
魔法
称号
復讐を誓いし村人
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あいつらは腐っても勇者なのだ、こんな貧弱なステータスでは瞬殺される、恐らく職業補正があってこれが最高なのだろう。
それに魔法が使えない。
これでは以前冒険者ギルドで絡んできた冒険者よりも弱い。
アンクには一度現実を突きつけた方がいい、このまま行かせても無駄死にさせるだけだ。
俺の同郷のクソ野郎達のせいで誰かが死ぬのは後味が悪過ぎる。
こうは言うが流石に全ての人を助けられるなんて事は思っていない、俺はそんな幻想は抱かないただの現実主義者だ。
アルカディアは別だ、ここだけは誰が何人死のうが何も思わない。
「アンクお前は弱い、弱すぎる、その復讐心に身を預け勇者の元へ行っても犬死するだけだ」
「い、十六夜くん!?」
「十六夜さん?さすがに言い過ぎじゃ」
俺の言葉にルーシーとアーシャは驚いた声をあげるが、それを無視して続ける。
「アンク復讐心だけじゃ、どうにもならない事がある」
「やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてくれぇぇえぇ」
俺の言葉を拒絶する様にアンクは大声をあげ癇癪を起こす。
「言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな、それ以上言わないで、あぁぁぁ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、勇者殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすんだぁぁぁぁぁぁぁ」
涙を流し悲痛な叫びをあげる姿は余りにも痛ましい。
刻み込まれた悲劇を遠ざけるように、アンクはただ叫び続けた。
「……アンク復讐したいか?」
その姿を見ながら俺はただ当たり前の事を質問した。
俺の言葉を聞いたアンクは突然静かになり一気に捲し立ててきた。
「何言ってるんだ復讐?当たり前だぁぁぁぁ、あんなゴミ生きている価値もない!僕は全てを奪われタァ!村も両親も兄弟も友達も全て!大人は殺され子供は奴隷にされたんだぞ憎くてしょうがない!
勇者は嗤っていた僕の前で兄弟を嬲りながら嗤っていたんだ!村の若い女と子供は犯された後奴隷に落とされた、その時壊れた子達は殺されたよ首を切られてな!
僕はなにもできなかった、ただ嗤っている勇者を睨みつけて殺すと叫び続ける事しかなぁ!
散々弄んだ後俺は勇者の女に拷問を受けたよ、手足の指を一本ずつ切られ歯を一本ずつ抜かれ細い針を一本ずつ体に刺しこまれた、痛くて仕方がなかっただが勇者は死にかけると回復魔法をかけて全てを治した、そしてまた同じ事が繰り返された。
死にたかった死んで楽になりたかった、だが俺は皆んなに約束した勇者を殺すと…誓った。だから俺は生きるのを諦めずに生きた、そして命からがら逃げおおせた、これは神の天啓だと思ったよ勇者を殺せって言うな!」
俺はアンクが血反吐を吐きながら叫んだ事を体の内側に刻みつけた。
もうあいつらは人間では無いようだな、ただの畜生だ。
まぁ、俺も既に人の道を外れているが。
あの2人を殺した後はすぐにでもアルカディアを滅ぼそう、一片の塵も残らないほど完璧に消し去ってやる。
今回喜持の時みたいな小細工は一切無しだ、純粋な力だけで殺してやる。
「アンク立て、今すぐ勇者を殺しに行くぞ」
「はぁはぁはぁはぁはぁ…そんなこと」
「できる、俺と仲間達がいればな。アンクお前の叫びを聞くまではお前を鍛えて一緒に勇者を殺すつもりだったが気が変わった、俺が2人を捕らえるから女の方はお前が殺せばいい受けた痛みを同じやり方でな」
もう待てない、今すぐにでも殺してやる待ってろ畜生共。
「白雪と黒王には悪いが、村人達が奴隷に落ちたらしいからたすけてやってほしい」
この時十六夜だけが気付いていなかった、自分の言葉の矛盾に。
「「邪魔する奴は?」」
妙な事を聞くな、決まっているだろう。
「皆殺しだ」
「「仰せのままに」」
白雪と黒王には雑務ばかり押し付けて悪いな、近いうちになにか褒美をやろう。
俺は2人が去った事を確認し、ルーシーとアーシャにこう告げる。
「2人とも悪いな、情報集め無駄になりそうだ」
「あはは、構わないよ」
「ふふっ、そうですよ十六夜さん」
やはりいい仲間を持ったな俺は…
「ありがとう、さて行くか畜生狩りだ。
アンクお前も早く立て、行くぞ捕まっておけよ」
俺は呆然としたままのアンクの腕をとり窓から飛び出した。
向かうのは勿論あの2人がいる森だ。
俺が着くまで精々盛ってろ、それがお前達の最期の快楽になるんだから。




