第1話 プロローグ
初の悪役令嬢物です。
今の所夏休み期間の集中連載の予定です。
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今日ここで私たちの戦いに終止符を打つ、そう意気込んでミリアは彼女の前に立った。
私の名前はミリア、でも、それは私の本当の名前では無い、何故なら私はこの世界の住人では無いから。
それは誰にも話していない私だけの秘密、だけど、私はこの世界の事を、この世界の住人の誰よりも良く知っている。
何故ならこの世界は、私が何度も繰り返し遊んだ乙女ゲーの世界だから、私は何度も失敗を繰り返してその度に最初からやり直した。
名前が似ているからというだけで私を虐げて来たマリア、私から友人も婚約者も幼馴染もペットの犬も学校の成績も、すべて奪い取って行った。
そんな私たちの数奇な運命も今日ここで終わる、全校生徒が暗幕の裏に隠れている体育館で、私は彼女のこれまでの悪事を糾弾する。
そんな事に全く気付いていない彼女は、すべての悪事が自分が起こした事と自白して自滅する、でもね、もし彼女が少しでも改心するつもりが有るのなら、私はそのすべてを許すつもり。
彼女に改心の兆しが見えなかったら、そうなったら仕方が無いわ、すでに味方に付けてあるカテキン王子の権限で国外追放になってしまう。
今までの事を逡巡しながらマリアの到着を待った、すでに嫌われ者の私に集められた生徒の中には苛立ちが隠せない人たちも現れている、早くマリアに会いたいそんな事は今まで一度も思ったことは無かった。
ガラガラと大きな音を立ててマリアが体育館の中へ入って来た、私しか中に居ない事を確認したマリアは扉を閉めて顔付きが鋭くなる、
「私を呼び出してどういうつもりなのかしら、この学園に居場所は無くなったのだから速やかに出て行って貰えると助かるのですけど・・・、この私が!」
普段の淑やかな雰囲気とは違い、私の前だけで見せる険しい顔つきと言動は、すでに暗幕の裏の生徒達もさぞ動揺している事でしょう、でも驚くのはまだまだこれからです、
「それはどうなるかはわかりません、私はあなたを糾弾します」
それからは私の糾弾する言葉にマリアが返事をするだけだった、一方的な糾弾をすべて聞き終えたマリアは、
「それがどうしたと言うの、それらはすべて事実で、あなたを陥れるためにやった事よ、ええそうよ、全部私が仕組んだ事、そしてあなたの見方はもう誰も居ない、全部わかっているのなら早くこの学園から出て行って下さらないかしら」
口元に右手を添えてくすくすと笑う、マリアのいつもの癖である、勝ったと思っているでしょう、でも今この瞬間にあなたの逆転負けが決まったわ、
「ただ名前が似ていると言うだけで、そこまでするのですね。私があなたの前から消えたら、それで終わりなのですか」
「そうね、それだけじゃあ物足りないかしら。あなたがどこに居ても、どこまで行っても私が見つけて、私が・・・」
「もう良い、それ以上は何も聞きたくない」
暗幕の裏から現れた生徒会長にマリアの顔が引きつる、それにつられて暗幕の裏から生徒達が次々と現れる。
突然の出来事に腰を抜かしたマリアはその場にへたり込んだ、焦点の有っていない目線を首事私に向けて口をパクパクさせている、もうマリアが何を言っても聞き入れてくれる生徒はどこにも居なくなった。
「残念ですマリアさん、少しでも謝罪の言葉が聞けたら許して差し上げるつもりでしたが」
私の言葉を聞きマリアは大きな声を上げて笑い出してしまった、腹を抱えてのたうち回る様に回る様を見て周りの生徒から侮蔑の言葉が投げかけられる、
「もう良いですわ、連れて行って下さい」
笑い転げるマリアを両脇から抱え上げ、王子の私兵がマリアを連れて行く、連れて行く先は私には分からない、狂い死にしてしまいそうなマリアに少しは同情の念を抱く、プライドの高い彼女が私の様な者に良いようにやり組められたら、このまま生きながらえるよりも良い事なのかもしれない。
「ミリア、その今までごめん。騙されてたとは言え君には酷い事を言ったりしてしまって。もし良かったら生徒会に入ってくれないか、そして二人で・・・」
「ごめんなさい、その提案はお受け出来ません」
「何でだい、僕はこの学校の権力者だ、先生も僕の言う事なら聞いてくれる。ぼくのパートナーを断るなんて、この学校に居られなくなるよ」
私は深いため息を吐いて首を振った、この男もマリアと同じ、私にはそれがわかる。
「私はこの学校を去りますのでどうぞご自由に、それから・・・、私に権力を振りかざすとどうなるか、体験してみますか」
私はそう言って怒りに狂っている生徒会長の目の前に、この国の王子から貰った家紋入りのペンダントを見せた、
「生徒会長程度の立場と、比べるべくも無いですわね。それではご機嫌よう」
私は踵を返すと一瞥もせずに学園を後にした、校門の外には馬車が待っており、私を見つけると御者が扉を開けてくれた、これで私の学園生活もお終い、これからは王子との生活が待っている。
ふふふ、思わず笑いが零れる、執事が咳ばらいをして窘めて来るが、今までの事を思い出すと笑う事を止められない。
ふふふ、はははは、わはははははh、ひーっひーっ、そんな事有るわけ無いじゃない、どうやって暗幕の裏に全校生徒が隠れるのよ、いくら何でも生徒が居なかった気付くっつーの、ひひひ、本当面白いわあ
一頻り笑い終えるとマリアは立ち上がった、透明な世界、透明なわたし、透明な机に透明なコップが置かれ、笑い疲れた私はコップを口に運ぶ。
「お疲れ様、随分楽しそうでしたわね」
「そりゃあねぇ、楽しんでやらなきゃやってられないわよ」
一気にコップの中身を飲み干すと透明な椅子に腰かけた、透き通るような声が再び響き渡る、
「それじゃあ、次でこの話しもお終いね、今度の子は・・・これよ」
「要らないわよ、何回目だと思っているの。大体はアドリブで何とかするわ」
「あらそう、まあ良いわ。それじゃあ行ってらっしゃい」
「待ってよ、もう少し休ませてよ」
「良いわよ、どうせ私たちには時間の概念なんて存在しないのだし」
「そうだったわね、そう言えば私も十分休んだ気もするわ。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
私は再び色を取り戻した、透明な自分と、今の自分、私の本当の色はどちらなのだろうか




