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ようこそ新世界

 ギルドを結成してやく1週間。鉄の防具を着込み、彫刻が入ったブロードソードを装備した私は黒服の魔法少女と、元暗殺者の艶めかしい服装をしたくノ一を引き連れて今は街の人の依頼を受けている。

 ギルドを結成した私の名はガイウス・アタッカー。稼ぎは少ないが依頼をこなして金を稼ぐ冒険者である。

 今回の依頼は盗賊が森の中で現れているのでその拘束。抵抗するならば殺れとの事だ。

「しかし、本当にこんなところに盗賊なんているのか?」

 人気のない森の奥深く。小鳥がさえずり、虫がリズム良く身体を鳴らしている。腰にまで伸びた雑草はとても邪魔くさい。そして、足元の視界も取れない。

「機動力が落ちるわね。これじゃああまり動けないじゃない」

 左後ろから不満を漏らす声。その声の主は黒いスカーフで口元を隠し、篭手やすね当てといった最小限の甲冑を身につけた金髪ロングの女性だ。

「私語を慎めアサシン。ここはもう敵地の中だ」

 アサシンは小さく「はい」と呟くとそのまま周囲を警戒する。

 クナイ型のナイフを取り出して小さく構える。

「坊や。気の上に登っても良いかい?ここじゃ視界が悪くて何が何だかさっぱりなんだよ」

 金髪ロングのくノ一が言う。

 彼女の言う通りだ。この視界の悪さではいつ、奇襲を仕掛けられるかわからない。

「アサシン。木の上から周囲を見てくれ」

「はいよ、坊や」

 アサシンはすぐそこの大木をよじ登って腰に下げていた単眼境を取り出しつつ、周囲を確認している。

 下にいる私は全周囲を警戒する。

 いつ、どこから敵が飛び込んでくるかわからない。

 冷や汗がにじみ、頬を伝って地面へと落ちていく。地面に落ちた水滴の音が嫌なほど響いている。張り詰めた空気が灰と心臓を絞めつけた。

「みんな!ここから少し奥に黒煙が上がってる!」

 アサシンが叫ぶ。

 もう遅かったか。村が襲撃されたのか?あるいは仲間割れか。

 考えている時間はない。あるはずがなかった。

「いくぞ、燕、アサシン。一人でも多くを助けるんだ」

「了解。ガイウス」

「坊やもちゃんとついてきなさいよ」

 アサシンが木から飛び降りながら挑発するように言った。

 言葉の一つ一つに色気をはらんでいるというか、なんというか。

 それに比べてアサシンは無機質なしゃべり方。うーん。本当に個性が強すぎないか?このギルドは。

 全員、森の奥へと走っていく。風を切り、草木を踏みしめて到達した場所に目を見開く。

 見たことがない謎の物体が黒煙を吹いて、あたりの雑草を切り裂き、踏みつぶしている。窓には血まみれの人間、そして後ろのスペースには男が二人だけ眠っていた。

 私たちはそれぞれ互いに目を見合わせてその、謎の物体から引きずり下ろして脈を図る。

 よかったまだ生きていた。何かいい情報を握っているかもしれない。

 私はこの男たちの持っている謎の道具に目を配る。

 それにしても、この人間が背負っているものはなんだ。変な鉄製のものに変な棒がつながっている。

 片方の髪を結んでるほうのは、、、私物はどこにもないか。

 私は片方の男が背負っている鉄のカバンのようなものを掴む。ずっしりとひんやりしていて重かった。鎧のような重さだ。

 その、鉄のカバンを掴むと、男から引きはがして謎の物体に立てかける。もう片方はそのまま仰向けにして寝かせてやろう。とりあえず、待機だ。

 私たちはその男たちが起きるまで介抱することにする。

「ねぇ、この人、肌が白くて顔がイケメンね」

「こっちの人はなんか、肌が小麦色・・・髪も結んでる・・・かっこつけてる?」

 アサシン、燕はけが人の顔を物色していた。失礼だからやめなさいと制する。頼むぞ。


 痛い。痛すぎる。

 とどろく砲声とヘリの風を切る轟音。ドアガンナーの制圧射撃に、仲間の銃声。

 それもこれも、みんな一瞬にして崩れ去っていく。

 機内は鮮血の雨が降り、鉛球は跳弾して被害が広がる。

「Ahhhhhhhhhhh!」

 同期の断末魔。軍曹はもう死んでいる。

 ここは、そうだった。戦場だった。イアドラン。Xーレイ。北ベトナムの開けた盆地。俺たちはそこに向かっていたんだ。でもそこは北ベトナム軍が四方から飛んでくる地獄の盆地。

 ヘリが着陸しようとする寸前、目の前の草むらから出てくる二つの影。茶褐色の防暑服に身を包んだ赤い星の兵士。

 その兵士らの持つ武器から無数の鉛球が飛んでくる。そうだった。こいつは敵兵だった。殺さなくては。

 俺は構えて引き金を引いた。ドアガンナーはもう眠っている。だから俺が代わりに撃たないと。撃たないと。撃たないと。

 引き金がひどく重い。

 なぜだ?なぜこんな奴らにためらうんだ。こいつは大切な仲間を奪った憎い人間だ。でもなんで。

 北ベトナムの兵士らがだんだんと近づいてくる。でも抵抗もできない。ザッザと草を踏みしめて駆け足で近づいてくる。

 俺らを殺す顔で。鬼の顔で。

 ヘリはなぜ高度を上げない!高度を上げろ!

 俺はコックピットをちらりと除く。

 コックピットの窓には無数の穴と無慈悲にへばりつく赤い液体。

 言葉も出なかった。前を向いて銃を構えなおすこともできなかった。

 やがて、ヘリのスキッドが地面へ乱暴に接地すると、北の兵士らが乗り込んできた。

 肩を掴まれ、地面へ押し倒される。そこで俺は北の兵士の顔を見た。

 悪魔の顔。その顔は笑っていた。銃剣が付いた小銃をこちらに構えている。そして、その銃を振り上げ、力任せに振り下ろしてきた。

 目に迫りくる銃剣。風圧が唇に触れてキスしていく

 やめろ、やめろ。やめろおぉぉぉぉおおぉぉ!


「やめろおぉぉぉぉおおぉぉ!」

 起き上がった。あれ?なぜ起き上がれたのだ?

 体や両目を触れて確認する。

 汗でびっしょりと濡れていたが傷口や傷穴は見当たらなかった。

 よかった。夢だったんだ。

「ふう」

 息を漏らす。がんじがらめに体に張り付いた力が一気に介抱し、鼓動が安定する。

「目を覚ましたみたいね」

 誰だこの声。敵兵の声か?

 俺は声のするほうへとっさに振り向いた。声の主は破廉恥な服装に手首を守るいぶし銀のグローブ、顔を、主に鼻から下を布で隠した胸のでかい女だった。

 ハニートラップか。

 俺はその女をにらみつける。というかここにいるのはこの女だけではない。後ろには中世騎士の防具を着た男剣士やデカい木の杖を持った黒服の少女。

 なんだ、どこなんだ?なんだこの変な人間は。

 俺は自分の頬をつねる。しっかりと親指と人差し指の腹で挟み、引っ張り捻る。

 痛い。ずきずきとした痛みが右頬全体に広がる。夢ではなさそうだ。

「君、何を変なことをしているんだ?」

 中世の男剣士が言った。

「・・・・・・」

 黙秘。絶対に我が軍の情報を抜き取られるわけにはいかない。

「ガイウス、このかっこつけ。何も言わない。多分あいつらの仲間」

 かっこつけ?誰の事?もしかして俺か?俺のことか?

 確かに俺はかっこつけている。しかしこれはインディアンの血を、ネイティブアメリカンの血を引いているからこそのかっこつけだ。何も知らないような人間に、かっこつけなどと言われたくないのだが。

「うーん、盗賊にしては恰好が変だ。何かこの世のものじゃないというか」

 何かが切れた。ぷつんと切れる音がした。

「お前ら言ってくれるな。誰がこの世のもんじゃないって?」

 目の前にいる三人は驚いていた。俺の発言ではない。俺がしゃべったことに驚いていた。

「この髪は先祖から受け継がれた美しい神聖な髪。それを束ねているということは死ぬ覚悟でここに来た。俺はどんな情報も吐かないし、吐くくらいなら死んでやる!なぁマイク!」

 マイクのほうへと目をやる。が、そこにはマイクの姿はなかった。

「は?」

 あいつはどこに行った。俺がヘリの外で寝てたんなら一緒にいるはずだ。なのになぜいない!

 あたりを隅々まで見渡す、すると中世の男剣士の向こう側でのんきに水筒で水を飲んでいるマイクを見つけた。

「ああ!待て待て待て!」

 俺はさっきの疲れや全身むち打ちになった体の痛みなんかを忘れて猛ダッシュで奴に駆け寄る。

「マイク!」

 マイクはほんわかした顔でこちらに手を振って返す。イケメンだが、今は可愛さが勝つくらいの表情で。しかし、そんなことをやっている場合ではない。

「マイク!お前何やってんだよ!死ぬぞ!」

 マイクの肩に腕を回して小声で話す。

「ん?大丈夫だよバルト。彼らすごく優しいんだ」

 危機感がない。というかほんわかした表情をしているが、まさか

「お前、全部話したんじゃないだろうな」

 可愛くなったイケメンがこちらの顔をみて微笑み返す。ただそれだけしかしてこなかった。

「いったな!お前言ったな!仲間売りやがったな!あのわけわからん連中に!」

 頬をぐりぐりと人差し指をめり込ませる。

 眼前の男は表情を引きつらせてもがく。

「痛いよ~何もそこまでしなくてもいいじゃないか~」

「何がそこまでだ!お前、国を売りやがって!あーあ、俺たちの国はもうおしまいだ!負けるんだ!アメリカは負けるんだ!」

「・・・おい」

 すると突然、後ろから鋭く冷たいしかし、色気を含んだ女性の声が耳に伝わる。

 振り向くとあの破廉恥女がこちらをにらんでいた。

「そのお方・・・マイク様から離れなさいな。いくらそのお方の仲間であろうと許しはしないわよ」

 は?何を言ってるんだこいつは。・・・もしかしてマイクに惚れたな。くそ、イケメンめ。ここまで優遇されるのかよ。

 俺は仕方なくマイクから離れると中世の男剣士を連れてヘリの近くへと戻る。

「なぁ、名前なんて言うんだよ」

 ヘリへ戻る道中に尋ねる。男は困惑に満ちた表情でこちらにのぞき込む。

「え?あ、待って。名乗るときは自分から名乗ってくださいよ」

「それはできない。ここがどこで君たちはなんなのか。そうじゃないと私からは話すことはできない」

 男は「はぁ」というため息をつく。

「私の名前はガイウス・アタッカー。ヴェルヴェンテ王国で結成した名声のない冒険家さ」

 聞いたこともない国だ。

 俺はガイウスの顔を覗き込む。その顔は仕方ないというような困っている表情をしていた。

 嘘ではなさそうだ。

「ヴェルヴェンテ・・・聞いたことないな」

 ガイウスは知っていたようにうなずく。

 まぁ、マイクがすべて話したんならわかるとは思うが、マイクの立場を考えたら自分のことも話さないといけないか。マイクが嘘つきにされても困る。

 ヘリへ到着すると、キャビンの床に腰かけて座る。

「俺の名前はバルト。バルト・アンザスキー。アメリカ陸軍、第一騎兵師団の人間だ。多分、あいつからすべて聞いてると思うが」

「うん。聞くところによると、君たちは違う世界から来たらしいね。まぁ、この謎の物体になにも違和感なく座れるということは本当だろうね。で、君たちはこれからどうするんだい?行く当てはないから一緒についてきてもいいけど」

 初対面の人間に対してついてきていいというのに驚いた。というかもっと警戒とか驚愕してもいいはずなのに妙に冷静なガイウスに少し戸惑う。

「違う世界からやってきてるって言ってるのに、よくもまあ冷静でいられるな」

「うーん。最初はみんな驚いていたんだけど最近は多くなってきてるんだ。ニュースでもよく報じられてる。だからヴェルヴェンテは異界の移民と呼んで警戒はしてる」

 言われたら確かに移民だ。他の世界からやってきて住み着いたり仕事したりする。始めてくる国の移民は国家のルールなんて知らないから治安も悪くなる。

「うちの国と似てるなぁ」

 そういうと、地べたにガムを吐き捨て胸ポケットからガムを一個とって口にする。

「・・・バルト。行儀悪いぞ」

「・・・すまん。戦場だと思ってつい」

 そう申し訳なさそうな顔をしながらあのイケメンのほうを眺める。

「マークに引っ付いてる女性の名前はアサシン。破廉恥な姿でダメそうに見えるが実戦経験豊富な元殺し屋さ」

 ガイウスが言った。

 名前を教えてくれるのはありがたいが、今の俺はイケメンの引き込む力をうらやましがっている。あの破廉恥女、もといアサシンのことなんてどうでもいい。

「今。このかっこつけ。アサシンのことどうでもいいって思った」

 ビクっと体が跳ねる。心が読まれたのと背後から声がしてびっくりしたのだ。

 振り返る。そこにはキャビンの床に杖を置いて四つん這いになってマークたちを一緒に眺めていたであろう黒服の少女がいた。

「私の名前は燕。魔法が得意。よろしく。かっこつけ」

 かっこつけという言葉にとげがあるような言い方だが、敵意はないしまぁ赦そう。

「俺の名前はバルトだ。よろしく」

「かっこつけの名前、バルト。理解した。ところでかっこつけ。これは何?」

 そういいながら奥にあった銃を引きずり出す燕。

 それを見た俺はすぐに燕から銃を奪いとると隅々まで見回して一息つく。

「かっこつけ、なんか乱暴。攻撃する気?」

 杖を持つ燕。その手はがっちりと握っており、少し震えていた。

「待て待て、変な気は起こすなよ?!」

 ガイウスが言った。誤解を解かなければ。

「燕、これはな、大事な大事な武器なんだ。これは魔法よりも剣よりもずっと危険なものだ。だから引きずったりしちゃいけないんだよ?」

 そういいながら銃口を上へ向ける。弾も入っているためあまり人には握らせたくない。素人は危ないから。

「・・・武器、触らせて」

 燕が上目遣いで懇願する。しかし、俺は軍人。そんな色気よりも安全管理を重視しているため

「No!」

 そういって切り捨てた。

 燕は「ちぇ」と小声でつぶやくと同時にそっぽを向いた。

 明らかにまだ子供感がある。

 さて、仲間の遺品整理をしときますか。

「おーい!」

 マイクを呼びかける。瞬間に燕がヘリの外へ出てくると杖を地面に突き刺して何か詠唱を唱え始める。

 俺とマイクはその様子にぎょっとしてただかたずをのんで見守るしかなかった。

「ここから3キロメートル離れた場所に村がある。多分盗賊の」

 燕が言った瞬間、俺とマーク以外の全員がガイウスに集結し、作戦を立てる。

 俺は仲間のドアガンナーの弾薬ベルトとドッグタグを回収したのちにガイウスのほうへ向かった。

「村はせいぜい四〇人規模。でもみんな先頭集団だ。盗賊団で村を形成してる」

「厄介ね坊や。その村には女子供もいるわ。そのくらいの人数であればそこそこ繫栄してるわよ」

「女子供を生かしての戦闘は難しいです」

「どうしたもんか」

「・・・村を焼き払えばいい」

 横槍を入れる。この一言で困惑の表情がこちらに飛んでくる。一人を除いて。

「バルト君、それはさすがにやりすぎだ」

「そうです。女子供は罪がない人間です」

 俺は彼らの顔を見て察する。これはダメだと。殺しに慣れていない新米が起こす顔だ。殺すということは人の理性すらも捨てなければ生き残れない。

「なぁ、アサシン。君は元殺し屋のエリートだったね。質問するけど、ターゲットがこのような場合、複数のときはどうしてた?子どもには情けをかけていたか?」

 アサシンは冷静に、そして冷酷な目つきをこちらに向けて口を開く。

「いや。していない。情けをかけて生き残らせてもその子は生きていても地獄になるだけ」

 バルトは満足そうにうなずく。

「そう。では我々はどうすればよいか?情けをかけて丁寧に殺すんだ」

 いった瞬間にちょうど、マイクが出撃準備を終えたところだ。やる気満々に見える。

 M2火炎放射器を背負った彼はもう優しい顔をしていなかった。闘争心とやる気に満ちたソルジャーの顔。

「どうする?ガイウス。行くのか?見たところ戦闘経験なさそうだが、俺が指揮しようか?」

 俺の顔はもう優しい顔を、ふざけたノリの顔をしていなかったと思う。

 マイク以外の全員の顔がこわばっていた。


 鶴翼陣形で移動中。5mほどの間隔をあけて森の中を俺たちは進軍していた。

 指揮権は未だ掌握できず。まぁ、実戦経験のあるアサシンが指揮を執っているので不幸中の幸いといったところだ。

 俺たちは流れてついたもの。だからギルドリーダーであるガイウスの指示に従わないといけない。しかし、そんな彼は実戦経験はなし。人を殺す能力は皆無。

 不安だった。初陣に出た新米が特に。

 草を踏みしめる音だけが嫌に響く。風も人肌のように生暖かい。森の影の冷気と木漏れ日の暖気が混ざり合って妙に居心地がいい。日に当たる緑がまぶしくキラキラと照らしている。正直言って逆に不気味だ。

 ガイウスの顔は、緊張でひきつっている。燕も顔は相変わらず愛想がない無表情。でも冷や汗を一筋、顎を伝って垂れ流しているのはわかる。

 かくいう俺もあんなに大口たたいておいて震えが止まらない。勝手に武者震いだと思っておこう。マイクは相変わらず真面目に仕事に集中している。俺みたいに雑念している様子がない。イケメンでシゴデキはうりゃましいぜ相棒。アサシンは、顔が見えんからわからん。

 さて、体感的には結構歩いた距離ではあるが。

「燕、接敵までどのくらいだ?」

 ガイウスが言う。少し声が震えていた。

「残り、百五十メートル。すぐそこ」

 燕が言った瞬間、甘ちゃんな坊やが片腕を上げて回し始める。

 アサシン、燕がすぐに動いた。

 俺たちも後からついていく。

 全員が奴のところへ集合しもう一度作戦会議を開く。

「さぁ、ギルトリーダーさん。どうするよ?」

 素人だが、素人なりのいい作戦があるかもしれない。とりあえず質疑に入る。

「敵は相当な手練れ。弱い人間も強い人間も殺してると思う。だからここは隠密行動で潜入して一人ひとり拘束。もしくは殺す」

「No!それでは時間の問題ですぐに見つかる。全面戦闘しなきゃ無理だよ」

 マイクがすかさず突っ込む。

 俺より頭がいいマイクだ。いい代替案をすぐに出す。まぁ、この場合は俺も同じような回答しか出てこないが。

「一気に片づけたほうが早い。だからバルトの機関銃にヘイトを向かわせて迂回するか、バルトの援護射撃を利用しながら突撃隊で叩くかの二択」

 一斉が固唾をのんだ。

 緊張が高まる。あるものは我々を睨み、あるものは殺したくない顔をし、あるものは正気を疑う顔をしている。

 風が頬を撫でて、髪を揺らしていく。今の空気を読まず、「さぁ、早く行け」と急かしているかのようだ。

「言っとくが、俺たちは軍隊だ。異世界の軍隊。やるときは徹底的にやる」

 心の中で何かかはまった。そんな音がした。胸の奥で熱くなる気が闘心が焔のごとく燃え盛り血がふつふつと滾っていくようなそんな感覚に襲われる。

 今思えば、一度死んだであろうこの身をなぜか奇跡的に心臓というエンジンが駆動している。

 ふと隣を見やるとマイクも同じ顔つきになっていた。いや、少し違う。あんな優しい顔が今や戦士としての顔つきになっている。目の奥底を見れば一目でわかる。なにかが燃えているように見えた。いや、何かが燃えていた。

 目をこすりもういい度覗き込んだが、その燃えた目は今は普通の真剣眼光に戻っていた。

 マイクがこちらの顔を覗き込み少し眉間に皺を寄せる。

「大丈夫か?」

 その問いに意識が宇宙から居間の現実に引き戻された感覚に陥るとすぐにこくりと首を縦に振ってごまかす。

「で?ギルドリーダーさん。どうするよ。もう後には引けないぜ?」

 長い間、口を城壁の門の如く固く閉ざしていた口が開いた。

「わかった。やろう。では具体的に奇襲計画を立てよう」

 やっとわかってくれたか。と心の中で安堵する共にガッツポーズをする。

 マイクもホッと小さな温かい息を吐いた。

「おい、燕。お前魔法を極めてるらしいな。なんか爆発させる魔法とかあるか?」

 燕は眉間に皺を寄せて口角を下げた。

「あるにはある・・・・・・でも、制度が悪い、回数もそんなに多く繰り出すこともできない」

「いや、それでいいんだ。それがあるだけ十分。ありがとう。それじゃあ概要を説明するね」

 マイクが作戦行動、部隊配置、編制を事細かに決めていった。

 それを聞いていたガイウスが黙々とただうなずいている。難色を示している様子もない。

 たぶん、まだ信用されていないのだろう。多分値踏みを行っている。

「その作戦に従おう。ただし、ギルドの一人が負傷した場合は指揮権は私に掌握。すぐに撤退する」

 今の発言でさらに心の闘志という焔が燃え盛る。今の発言はかなりの燃料になる。火に油を注ぐ発言と言えばよいのだろう。

「それじゃあ早速行くか。各員、すぐにかかれ!行くぞ!」

 俺は語気を強めて言い放った。自分と皆の気概を引き締めるために。

 

                ♰


 時、1300。作戦行動開始地点到達。

 燕は後方三キロメートルの地点へ待機。我々突撃隊は盗賊が住まう村のすぐ近くの竹林から五百メートル地点の場所で待機していた。

「よし、ここだ。全員待機」

 俺は少しだけ語気を強めて言う。刹那、マイク、ガイウス、アサシンはその場で膝を曲げてしゃがみ込んだ。

「ガイウス!燕に突撃発起地点についたから爆撃を要請しろ!」

 ガイウスは黙って首を縦に振ると、耳に手を当ててぼそぼそとつぶやき始める。

 俺には理解できない行動だが、これをすることによって無線と同じ能力を発揮する念話という者らしい。

 ガイウスが耳から手を放して親指を上へ突き上げそれを掲げた。

 さて、ここから始まる異世界での初めての戦闘。

 瞬間、空気が震えた。すぐ後に聞こえてきたのは爆発音。立ち上る土煙とえぐれる家屋が遠くからでも視認できた。

 吹き飛ぶレベルではないが強い爆風の残り風が体全体を撫でていく。

 四発であろうか。爆発が四回目で途切れるとガイウスが口を開く。

「魔力切れだ!」

 その言葉を待っていた。

「全隊!四百メートル前進!進め!」

 突撃隊長はガイウスであるが、指揮官が前へ行かなければ皆がついてこない。指揮権が委譲された今、俺が指揮官だ。信頼されるために引っ張らねばならない。

 足に力を入れて大地を蹴り上げる。心臓というエンジンが回転数を上げて鼓動を速めている。どくどくと前進に血が駆け巡る感覚、息も上がった。

 やがて、接敵まで百メートル迫るとそこで地面に伏せて機関銃を構えた。

 ガイウスたちも到着すると腰に下げていた剣を抜いて構える。アサシンはナイフを構え、マイクは火炎放射器を持ち直した。

「いいか!俺はここから援護射撃をする!お前たちは敵を斬ったり、焼き殺したりすることだけ考えろ!突撃を開始しろ!」

 そして中世の甲冑を着た金髪の男は立ち上がり怒声交じりに叫ぶ。

「全隊!突撃!前へー!」

 剣を片手で持ち直して剣先を村の方向へ指すと走り出した。

 全員が走っているのを横目に、俺は肩に重傷を当てて引き金を絞る。刹那、無慈悲な反動が肩を殴り、連続的に乾いた雷鳴をとどろかせた。

 敵は破壊することができなかった見張り台の敵へ無数の鉛の雨を降らせる。

 銃口から立ち上る硝煙のにおいが俺の鼻腔を刺激していく。

 そうだ。戦闘というものはこうであった。忘れていた。数時間前の戦闘の感覚をここで思い出させる。

「ワンダウン!ワンダウン!ワンダウン!」

 突撃隊へ叫んで報告する。遠くのほうで見張り台から一つの人影が頭から残酷なまでに脱力しきった状態で落ちていった。反対側の監視塔にも銃口を向けて構えなおす。

「ダイ、マザーファッカー、ダイ!ダイ、マザーファッカー、ダイ!」

 銃身過熱を避けるためにバースト射撃で弾を節約品がら、なるべく少ない弾数で見張り台の敵を射抜く。

「仕留めた!歩兵の支援を開始する!」

 走る仲間たちの背中を撃たぬように鉛の雨でバリアを作っていく。すると途中でアサシンがこちらに振り向き何か怒鳴っている。

「前を向け!俺を見るな!」

 腕を前へ振ってこちらも大声で怒鳴り返す。戦闘中にこちらを見るとは命知らずめ。しかしここまでよく走りきった。そこはほめよう。

 突撃隊はやがて村の中まで侵入していくと、こちらも少し前進して家屋から出てきた盗賊を排除していく。

 出てきた罪人は鉛の矢によって、すぐに鮮血を吹き出し、地面に伏していく。その様子を見ながらマイクを見た。

 そろそろだ。頼んだぞマイク。

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