表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競輪 ー烈風のマブイー  作者: 水前寺鯉太郎
プロデビュー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/16

第七話:魂の器(マブイ・コンテナー)


阿蘇の裾野、地熱の白い蒸気が静かに立ち昇る「阿蘇特機工房」。

健吾は、学園の卒業レースでボロボロになったグレーのスーツを、かつての恩師・源さんの前にそっと置きました。

「源さん、もうこいつじゃ無理だ。あのレースで……死にかけた。俺のマブイを、このギアはもう受け止めきれねぇ」

源さんは油と煤にまみれた太い指でスーツをまさぐり、鼻で小さく笑います。

「当たり前だろ。お前のマブイは『層レイヤー』が分厚すぎる。量産型の細いパイプじゃ、マブイが詰まって逆流するのも当然よ」

そう言って源さんは、工房の薄暗い奥から、重々しい黒鉄のフレームを引っ張り出してました。

最新のカーボン軽量とは正反対。鈍く光る、無骨で威圧的な「プロトタイプ」。

改良ポイント1:【マグマ・ラジエーター】

「お前のマブイは熱すぎる。なら冷ますんじゃなく、その熱を全部、前にぶちまけちまえ」

背中から両肩にかけて、阿蘇の火口を思わせる放射状の巨大冷却フィンを増設。

排熱を敢えて後方へ噴射し、**「熱噴射マブイ・ジェット」**による爆発的な加速を可能にした。

改良ポイント2:【阿蘇式・超高剛性クランク】

学園で叩き込まれた「効率至上主義」を、源さんは一蹴しました。

「トルクが全てだ」

歯車の一枚一枚に、阿蘇の火山岩で何度も焼き入れられた特注合金を採用。

健吾のコアマブイが2500フルバーストしても焼き付かない、地獄のような耐久性を持たせます。

改良ポイント3:【兄・誠の遺した「流体スタビライザー」】

「……これ、兄貴から送られてきたパーツか?」

健吾が気づいたのは、腰部に埋め込まれた小型ジャイロデバイス。

「ああ。下関の清水誠からだ。『弟の暴走を止めるのは、水の静けさだ』ってな」

競艇のボートで培われた姿勢制御技術を応用。

猛烈な加速と横Gの中でも、決して「落車」しない安定性を与えました。

新生スーツの名は――『阿蘇・炎(ASO-HOMURA)通称、(ほむら)』です

完成したスーツに脊髄インターフェースを接続した瞬間。

「――ッ!」

今までのどのスーツとも違います。

まるで全身の血管が一気に拡張し、熱い血潮が隅々まで駆け巡るような一体感。

軽く意識を集中させただけで、背中のラジエーターが「シュォォォッ」と低く唸り、吸気音が工房に響きます。

「これだ……。これなら、あの算盤みたいな計算を、もっと遠くへ蹴散らせる」

源さんは最後に、真っ赤な耐熱ペイントをヘルメットに吹き付け、健吾の背中を力強く叩きました。

「行け、健吾。

プロのバンクは学園の百倍濁ってる。マブイを盗もうとする奴、心を折りに来る奴……腐るほどいる。

だがな、お前がその火を絶やさねぇ限り、阿蘇の山がお前の背中を、ずっと押し続けてくれる」

プロデビューの舞台へ

健吾の初戦が決まりました。

場所は、兄・誠の地元・山口にほど近い「宇和島競輪場」。

通称、『闘牛の擂鉢』。

全国でも屈指の急カントと、容赦ない風が吹き荒れるバンク。

新生『炎』と、健吾自身の覚悟を、真っ先に試す最初の戦場となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ