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からくり競輪 ー烈風のマブイー  作者: 水前寺鯉太郎
鉄魂(てっこん)学園編

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4/9

第四話:卒業検定レース・前編、魂の断層


舞台:学園・地獄の333バンク(擂鉢状の急カント)

天候:強風(阿蘇の山おろしを模した人工風)

番組:六車立て・三分戦

時期:2028年7月

1. 緊張の検車場

出走前、健吾は自ら調整した愛車を最終チェックしていた。

背中の外付マブイタンクは、学園支給の標準型。だが、その内部ギアには阿蘇の記憶を刻んだ「ザラついた研磨」が施されている。

「速水、そのガタつく駆動音……相変わらず非効率だな。僕の計算では、君は最終コーナーまでに外付マブイを使い切り、コアを焼き付かせて落車する。確率は98%だ」

隣でスーツの気圧調整をしていた算盤陣が、冷徹に告げる。

算盤のスーツは「鏡面仕上げ」の白銀。一滴のマブイも漏らさない完璧な密閉構造だ。

「算盤、残りの2%には何て書いてあるんだ?」

健吾が問い返すと、算盤はフッと鼻で笑った。

「『奇跡』だ。この学園に最も不要な概念だよ」

2. 並びの確定

教官が告げた「並び(ライン)」は、健吾にとって試練だった。

【1班:理論派ライン】 算盤(京王閣)ー 影山(小倉)

最強の効率と消音。隙のない鉄壁の布陣。

【2班:パワーライン】 大文字(鹿児島)ー 嵯峨野(京都)

破壊的な加速とカントの技術。

【3班:急造ライン】 速水健吾(阿蘇) ー 羽柴(高松)

暴発するマブイの健吾と、風を読みすぎる羽柴。噛み合う保証はない。

「健吾、俺はお前の風除けにはならねぇぜ」と羽柴がニヤリと笑う。「だが、お前がマブイを爆発させるなら、その気流、使わせてもらう」

3. 発走:沈黙のスタート

「構えろ!」

号砲とともに、6つのインターフェースが脊髄に火を吹く。

だが、一歩目が速かったのは算盤ラインだった。

算盤のスーツは、無駄な排気音を一切出さない。

シュルシュルという精密な歯車の音だけを響かせ、最短ルートで先頭(S)を取る。

健吾は最後方に置かれた。

(焦るな……。今はマブイを練るんだ。阿蘇の火口の底、一番熱い場所を思い出せ)

4. 残り二周:ジャンの鳴動

カラン、カラン……!

「ジャン」の鐘が鳴り響く。

先頭を行く算盤が、背中のバルブを僅かに解放した。

「計算通りだ。ここから一気に、追いつけない領域まで『マブイ密度』を上げる」

算盤のスーツから、冷却用の青い霧が噴き出す。

一気に加速する先行ライン。

中団の大文字も、黒煙を上げながら強引に捲りにかかる。

バンクは、6人の放つマブイの余熱で陽炎が立ち昇り、地獄のような熱気に包まれた。

「行くぞ、羽柴!」

「ああ、見せてみろよ! お前のデカすぎるマブイを!」

健吾は、外付マブイの封印を解いた。

だが、彼が選んだのは「追い込み」ではない。

一番外側、カントの最も高い場所、**「誰も通らない、最も風圧の強い壁」**へ向かって、ハンドルを投げ入れた。

「何っ!? あの速度であの角度に突っ込めば、遠心力でマブイが逆流するぞ!」

算盤の計算が、初めて狂い始める。

「――逆流上等だ。俺のマブイは、そんなもんじゃ止まらねぇ!」

健吾の背中で、巨大なメインゼンマイが「ギチギチギチッ!」と悲鳴を上げた。

阿蘇の噴火のような咆哮が、静かな学園のバンクを切り裂いた。

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