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からくり競輪 ー烈風のマブイー  作者: 水前寺鯉太郎
重賞挑戦編

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18/22

第十八話:底知れぬ深度(ディープ・マブイ)


「……計算、終わり。ルートが見えたよ、健吾先輩」

それは、今まで無邪気に笑っていたはずの桜庭葵の声でした。

彼女のコアマブイ7000。それは単なる出力の高さではありませんでした。他者のマブイの波形を読み取り、その「隙間」に自分のマブイを完全に同期させる**『深度同期ディープ・シンクロ』**。

1. 影の加速

健吾と凛が外側で競り合い、妙子が内側を締めようとした一瞬の呼吸。

葵は、三人が生み出した巨大な気流の「淀み」を完璧に捉えました。

「なっ……!? いつからそこにいた!」

健吾のセンサーが、真後ろ、コンマ数ミリの距離に潜んでいた葵をようやく検知しました。しかし、もう遅い。

葵のスーツ『萌葱(MOEGI)』が、それまで蓄えていた外付マブイ10000を一気に「一点」へ集中。

爆発的な「逃げ」でも、鋭い「差し」でもない。まるで水面を滑る石のように、抵抗をゼロにした**『超流動走行』**で、三人の間をすり抜けていきます。

2. 7000の輝き

「これが、私の……本当のマブイです!」

葵の瞳が、明るい茶色から透き通るようなエメラルドグリーンへと変貌します。

健吾の熱い「炎」も、妙子の冷たい「風」も、凛の荒い「煙」も。

葵の圧倒的なコアマブイの「深度」の前では、すべてがなぎのように静まり返ってしまいました。

3. 衝撃のチェッカーフラッグ

最終直線の残り10メートル。

健吾が必死にハンドルを投げ、妙子が牙を剥き、凛が叫ぶ。

その三人の鼻先を、一番小さく、一番若い影が、軽やかに、そして残酷に奪い去りました。

1着:桜庭 葵(立川)

2着:那須 妙子(館山)

3着:速水 健吾(阿蘇)

コンマ数秒の差。

しかし、その差は数字以上に「絶望的」な実力の片鱗を物語っていました。

4. 敗北のあとの沈黙

ゴールを過ぎ、静まり返る館山競輪場。

健吾は、自分のコアマブイ2500が、葵の7000に「飲み込まれた」感覚に、全身の震えが止まりませんでした。

「……はは、まいったな」

健吾は、力なく笑いました。

九十九島を制し、自分こそが単騎の王だと思い上がっていた鼻柱を、自分を慕っていたはずの後輩に、最も綺麗な形で叩き折られたのです。

葵は、ヘルメットを脱いで、いつもの元気な笑顔で振り返りました。

「先輩! 今の、私の本気です! ……次は、もっと熱いところ、見せてくれますよね?」

その無邪気な瞳の奥に、健吾は「怪物」の兆しを見ました。

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