第17話◇私が召喚した鳥の精霊、実はすごかった?
その日の夕食後、魔法が使えるようになったこと、そして同時に精霊の召喚もできたことを叔父様に報告すると、わざと取り合わないという態度を貫かれた。
「ふん。嘘を言うな」
「嘘じゃありません!!」
話を終わらせようとする叔父様に私は主張して、右腕を差し出す。
すると、それまで気ままに外を飛び回っていた小鳥が私の元に戻ってきて、手首に飛び乗ってきた。
ズイ、と見せつけるようにその小鳥を示してみると、叔父様はあからさまに焦った顔付きになる。
「っ、鳥の精霊だとっ……」
こう呟いた時の叔父様の眉間のしわが、異様に深くなっていた。
何かとてもまずいことになった、と考えている様子なのが、妙に印象的だった。
「はぁ?その弱そうなちんまりした鳥で、何を偉そうに」
アネモネは「下らないわ」と言いたげに鼻を鳴らす。
彼女はフレイムウルフという、火を操る強力な精霊と契約していて、その精霊よりは確実に弱いと思っているから。
「ま、まさか、そんなことがあるはずはないっ……!!たとえ末席だとしても、精霊たちの中でも格が高いとされる鳥の姿をした精霊が、お前のような小娘の元に現れるなど……!!」
すると、叔父様が驚きの情報をもたらしてくれた。
「な……っ!?何ですって!?」
「えっ?」
鳥の精霊って、そんなに格が高いのっ?
叔父様の言葉に、アネモネが勢いのままに大声を上げたけれど、私も同時にびっくりしてしまった。
全く私が知らなかったことだった。
アネモネも聞かされてはなかったみたいだけれど。
でも、叔母様は全く動揺していない。
……ということは、これは「ストレリチアの当主夫妻にしか知らされていない事項」のひとつだったのかもしれない。
「鳥は、鳥だけは、我が一族は絶対に無視できない……。くっ、よりによってお前が……!!」
憎々し気に叔父様は私を見返す。
いつの間にか、アネモネも一緒に、鋭い目つきで私を睨みつけていた。
叔母様だけは沈黙のまま、どうでも良さそうな表情で揺れるワインの水面を眺めながら無関心を貫いている。
「ど、どうせ、餌で呼び寄せた野のスズメを捕まえただけだろう!!私は信じんぞ!!不愉快だ、私はもう寝る!!」
そうして、ガタンと乱暴に席を立つと、叔父様はあっという間に食堂を出て行ってしまった。
「お、お父様!?……くっ、精霊が鳥だったからって、いい気になるんじゃないわよッ、イリス!!」
アネモネも父親の後を追うようにして出て行った。
捨て台詞を残して。
あとは、こちらにはろくに視線さえ寄越さないまま、ただひたすら淡々とワインを飲み続ける叔母様しか残っていない。
沈黙に耐え切れない気分になってきて、私もこのタイミングでサッと食堂を出た。
なるべく足早に歩いて自分の部屋に辿り着いて、ドアを閉める。
それから、ようやく詰めていた息を大きく吐き出した。
……びっくりしたわ。
まさか、精霊の見た目の種類に格付けがあったなんて。それも「鳥」の精霊がそんなに格が高いなんて、思ってもいなかった。
こんなちんまりとした小鳥を目の前にしての、あそこまでの動揺っぷりを思うと、きっとさっき叔父様が口走った一連の情報は間違なく事実なんだろう。
私はチィに――そのスズメのひなのような、小鳥のような姿をした精霊に向かって、問いかける。
「びっくりしたわよね、チィも」
指先でそっと頭を撫でると、チイは気持ちよさそうにじっと私の指を受け入れている。
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