邂逅・悪の華と聖女 2
連れてこられた先には簡単な作りの牢があった。奴らが拉致した人間を一時的に入れておく場所なのだろうが、やはり簡単には破られそうにない作りではある。
「オラ、大人しくしていろ」
牢内にぶち込まれる二人。
カーラ、憤まんやるかたなしという感じで
「せいぜい今のうちにいい気になってろ、あとでたっぷりと地獄見せたる」「ん? 」
牢の中には先客がいた。老人が一人、壮年の男が一人、女が二人、そして少女が一人・・。彼らは同じような白を基調とした服を着ている。何のグループなのだろうか?
「おや、あなた方も奴らに捕まったのですか? 」
レイミが問う。
「その恰好、あなた方はもしかして『聖楽園の南』の巡礼の方たちですか? 」
「いかにも。旅の途中で奴らに襲撃され、数人が殺された」
老人が答える。彼がこの巡礼たちのリーダーのようだ。
(『聖楽園の南』か、聞いたことがある、女神アンジュエラを信仰する一派だったか・・清貧を旨とする教義だか何かだったか)
「殺されるよりはましと抵抗をやめ、こうして囚われとなったのだが・・」「何とか彼らを説得できないものか・・」
「は!?」
カーラ、訝し気に聞き返す。
「武装もせず、護衛も付けないでこんな物騒な所うろついていれば山賊どものいい獲物だわな」「男は労働奴隷かホモ奴隷、女は性奴隷として売られるだろう、そこのじじいは役に立たんだろうから殺されるだけだな」
「あ、あのぉ・・」
牢の隅の方の方に居た少女が口を開く。歳は14、5くらいか、レイミより若干年下のようだ。三つ編みにした金色の髪をし、緑掛かった瞳に眼鏡を掛けている。見た目気弱そうなのだが・・。
「私も無益な争いは嫌いです」「でも、奴隷として売られるのはもっと嫌です」
「フイリンよ」(それがその少女の名のようだ)「我が神、アンジュエラの教えは『争うより愛を』だ、祈り続ければ道は開けるかもしれぬ」
「へえ~」
カーラ、馬鹿にしたような声を出す。
「お祈りすればその何たらとかいう神様が助けてくれるってか? アホか、ボケが! 」
「ちょっと、幾らなんでも失礼よ」
「で、お前ら、ここから逃げたいのか、このままでいいのか、どうなん? 」
巡礼たち「むろん俺は出たい」「私も」「私も」口々に答える。
するとフイリンと呼ばれた少女がカーラの元に近寄り、
「あのぉ・・貴方が何とかして下さるというのですか? 」
するとレイミ偉そうにドヤ顔で、
「そうよ、この人、こう見えてもすごく強いんだから! 大船に乗ったつもりでいていいよ」
(何でお前が威張るねん・・)心の中で突っ込み入れるカーラ。
「うるせえぞ! てめえら、静かにしてろ!!」
牢番の山賊、イラついたのが牢の格子をガンガン叩いて怒鳴る。もう一人の番人が
「なあ、中の女ヤってもいいよな? こっちは退屈な番人やってんだ、少しくらい役得ねえとな」
「あ、馬鹿言うな、ヤっちまったら女の価値下がっちまうだろうが、お頭にぶっ殺されるぞ。どうしてもヤりたかったらあの男のケツでも掘ってろ」
「ねぇ、かっこいいお兄さんたち」
いつの間にか番人たちの所に近づいていたカーラ。
「二人とも、溜まっているんでしょ? 」
上目遣いで野郎共を見つめ舌で唇を舐めつつ、豊満な胸を今にも乳首が見えそうな程はだけさせている。これでグッと来ない男はおらぬ。ホモかロリコン趣味でもない限り。
「うっ、うう」
しかし、敵もさるもの、やはりヘマやらかすとお頭が怖いのか、努めて冷静に振る舞おうとする。
「お、おい、何のつもりだ? い、色仕掛けなんぞに引っかかる俺たちじゃねえぞ」
「お願い、そんな事言わないでぇ、何してもいいから私だけでも助けて欲しいなぁ」
格子の隙間から片手を出すカーラ、指を艶めかしく動かす。そして・・。
「ねえ、手でするのがいい? それとも口のがいい? 」
番人の一人、とうとう落ちたか、
「お、おう、そこまで言うならやってやるぜ、その代わり気持ちいい事してくれよ~へへへ」
鍵を取り出し牢の扉を開けてしまうのだった。
「お、おい、やめろって、大体こいつ、いつ手の縄をほどいたんだよ!?」
「あっ!!!???」
気が付いてももう遅い。番人の一人の眉間にはカーラの右人差し指が深々と突き刺さっていた。
素早く指を抜き取ると血と脳漿を噴出させ絶命した番人一人を蹴りよけ、"気"を纏った左の手刀で残り一人の喉元を切り裂くのだった。
「ぶあーーか! 誰がお前らなんぞにヤらせるか! 」