死か栄光か・見知らぬ明日に向かい走り続ける 3
一行を乗せた魔動車はとある村落に近づきつつあった。かつて、ジュダスプーリ王国の領地だったその場所も今はモルタヘイド王国の領となっている。そして、その村を過ぎれば別の王の支配地域に入るのであるが。
「そこらで少し休憩するか」
魔道車のスピードを落とし、村内に侵入する。
「どこか休める店の一つでもないのか? 」
「そういえば随分閑散としているような・・」
レイミが言う通り、まだ昼前と言うのに人通りが全くない。
「過疎の村なのでしょうか・・? 」
ようやく、「お食事処」と表示してある建物が見つかった。民家に毛の生えたような感じの店ではあるが。
店内に入る一行。
「邪魔するぞ・・ん、誰も居ないのか? 」
店内には他の客の姿は見当たらない。店の住人も・・と思ったら奥の方より一人の老齢の男が出てきた。
「あ、お客さんかい・・い、いらっしゃい・・」
彼がこの店の主人なのだろうか? メニューを渡したと思ったらまた奥に引っ込んでしまった。どうしたのだろうか? などと考えることもせずメニューを見始める一行。
「ふん・・ド田舎の店だけあって大したものないな・・しかも値段はいっちょ前ときたもんだ」
「もう・・聞こえるよ、えーと私はサンミッチ(野菜や肉を加工した食材を穀物の粉をこねて焼いたものに挟んだ料理)のセットで」
「えっと、わたしはザヌキー(穀物の粉をこねて伸ばしたものを細く切って汁で煮込んだ料理)を」
「お前ら、そんな軽いものでいいのか? 育ち盛りなんだからもっとボリュームある物食べろよ。だから乳小さいままなんだよ」
「大きなお世話だ、それより早く決めなさいよ」
「厚切り肉焼き定食をゴハラ(穀物をそのまま火を通して盛りつけた食品)大盛で。あとタンカード酒を大ジョッキで」
「ちょっと、昼間からお酒なの? 」
呆れたような表情のレイミ。
「別にいいだろ、お前らも何か飲みたかったら頼めばいい」
「ボマー茶はありますかねえ? 」
なんやかんやでくつろぎつつある一行であった。すると、主人が再び姿を見せた、のだがどうしたことかもう一人初老の男性が一緒に出てきた。
「?」
訝しがる一行。その男性が口を開く。
「私はこの村の村長です。実は折り入ってお願いがあるのですが・・」
「うちらは只の旅の者だ、お願いとかされても困る」
「またまた御冗談を。あなた方、キルミスター王の関係者ではないのですか?」
「「「!?」」」
ぎくり、とショック受け村長を見つめる三人。
(なぜそれを・・? あ、そういえば魔動車に描いてある紋章消すの忘れていたわ・・それでか)
「もし、引き受けてくださるのであればこの村での宿泊費と食費をすべて無料と致しますが」
とりあえず、注文した食事が運ばれてくる。食べ始める三人。その彼女らに向かい話始める村長。
「食事しながらでよろしいので聞いてください。実はここ数か月前から怪物が現れるようになりまして、村の者たちが襲われる被害がでておるのです。」
「・・ふむ、味は悪くないな、・・で、怪物とはどんな? 」
食べている料理から視線を外すことなく一応答える。
「はっきりとした姿を見た者はまだ誰もおりません。何しろ出会った者は殺され、生き延びた者もほうほうの体でようやく逃げてきた者ばかりなので・・」
「お困りのようですから何とかしてあげませんか? 」
食べ終わったフイリンが食後の茶を飲みながら言葉を発す。
「そんな訳分からん怪物相手に宿と食事だけただなんて割に合わないな」
カーラは料理足らなくて追加したようだ。
「その怪物は最近現れたんですか? 」
食後のデザートの甘味物を食べつつレイミが質問する。
「はい。先程も申した通りここ数か月前からいきなり、という感じです。そもそもこの付近に過去から伝わっているような怪物の伝承もありませんでしたし」」
「それも不思議ねえ。調べてみる必要があるかも・・(そう、モルタヘイド王国の姫として・・あっ、もう王女の地位は捨てることにしたんだった・・)」
「ちっ、かったるいなー・・」
ようやくメインの食事を終え、食後の酒をすすっているカーラ。
「まあ、そう言わずに・・」
あくまで面倒くさそうな表情は崩さずにそれでも、
「しょうがないな、引き受けてやるから有難く思え」
「おお、引き受けてくださるのか、ありがとうございます。それで、怪物の出現場所は・・」
村長がそう言いかけると、いきなり、
「おおっ親父、ここに居たのか?」
彼らより少し若く見える男が店に入ってきた。村長の息子なのだろうか?
「喜べ親父。怪物を退治してくれそうな人を連れて来たぞ。何と本職の傭兵だそうな」
そしてカーラ一行に目を向ける。
「この人たちは?」
「いや、実は今この方々に怪物退治をお願いした所だ。何とキルミスター城ゆかりの方のようだぞ」
するとカーラ、
「ならそいつに頼めばいい。戦闘のプロの方が相応しいだろ、うちらは所詮素人だからな」
「詳細な話聞かせてもらおうか? 」
件の傭兵が入店してきたようだ。カーラどんな奴なのかと振り向く・・と!
「!? げっ! お前は!?」
「!? きっ貴様は?! なぜここに!?」
凍り付く両者。レイミとフイリンも固まっている。なぜならその傭兵には見覚えがあったからだ。長身、筋肉質の体、片目に眼帯、そして燃える炎の如く真紅の髪、以前彼女らの前に立ち塞がり、結果カーラに敗北したマノン・ウオウその人であったからだ。
「よもやこの様な場で再会するとはな。捜す手間が省けたというものだ。この前の屈辱晴らしてやる! 」
例によって背に負った大剣を手にするマノン。
「このラウダーザンヘル・マークⅡの最初の餌食にしてくれる! 」
「ほう、余程私のテクが忘れられなかったとみえるな。それとも今度はマジに刻んで欲しいのか?」
カーラ、立ち上がり手に気を集中させつつある。
「ちょっと! やめなさいよ、二人とも。ここは人の店の中よ! 」
両者の間に割って入るレイミだが・・。




