古代空中宮殿 【 羽衣天女をアジャストせよ 】
序章:突然の開幕
最高のラグジュアリーは、長くは続かないものである。
ある夜、ゴシック羽衣聖女がヤスヒロの胸元で、完全に心の警戒を解除して愛おしそうに眠りについた、その瞬間だった。
祭壇の片隅から、シュルシュルと不気味な音が響く。
ヤスヒロ:「え……? この匂い、まさか」
見ると、ステンドグラスの影を突き破り、古びた「魔法のランプ」が浮遊していた。その注ぎ口から、紫色の怪しい煙がモクモクと立ち上る。
ヤスヒロ:「おい待てコラ! まだ俺、この大聖堂の隠し財産を半分も八王子の口座に移してないんだけど! 次の定例ミーティングは!? 午後からのプレゼンは!?」
必死に抵抗しようとするが、ランプの煙は容赦なくヤスヒロの鼻腔へと吸い込まれていく。強制瞬間ワープの力が、彼の魂を肉体から引き剥がしていく。
ヤスヒロ:「ああっ、俺の、俺の極上のゴシックハーレムがァァーー!」
意識が遠ざかる中、最後に見たのは、愛欲に溺れた羽衣聖女の、幸せそうな寝顔だった。
「うわあああマジでいい加減にしろよコラ!!!
今度は中世暗黒街かよ!!!
おい、時空の裏でランプを擦り続けてるクソ黒幕!!!
煙の演出サボって、バグ負けしてんじゃねえよ!!!
主人公ヤスヒロは読者の化身なんだから、今すぐあの大聖堂の天蓋付きベッドにロールバックしろォォォ!!!(大激怒)」
カチリ、と時空の歯車が回る。
気がつけば、大天使ガブリエルⅡ・ヤスヒロはまた別の、見知らぬ異世界へと放り出されていた。次は果たして、どんな美少女を救い、どんなカオスな姿で愛欲に溺れるのだろうか。
第一章 古代空中宮殿。羽衣天女をアジャストせよ
カチリ、ピピッ、ジーーーー。
神秘的なハープの音色と、鼻を突く濃厚な桃の甘い香りで彼は目を覚ました。
(元・ヤスヒロ)
ヤリチンヒロ:「う……ここはどこだよ!? 大聖堂は? 聖女ちゃんとのゴシックな夜は!?」
気がつくと、彼は白い雲海を見下ろす、古代の美しき空中宮殿のサンデッキに横たわっていた。
見上げれば、青空にきらめく七色の虹が常時ライトアップされている。
手鏡代わりに近くの水晶の柱を覗き込むと、そこに映っていたのは――
背中に神々しく発光する巨大な六翼を生やし、漆黒のハイテク南蛮胴具足をスマートに着こなした、超絶クールな大天使ガブリエルⅡ・ヤリチンヒロ(22歳)の姿。
ヤリチンヒロ:「よし! 今回もブレずに20代イケメン、大天使ガブリエルⅡ・ヤリチンヒロのままだな。中身も八王子生まれの俺自身。読者の化身として、バッチリ若さと圧倒的なポテンシャルをキープしてるぜ」
脳内スマホのホログラムがピピッと起動し、今回のヒロインデータが表示される。
ヤリチンヒロ:「えーっと、今回のヒロインは……『神の啓示を受けつつも、怒りで我を忘れた羽衣天女』ね。お、目の前で今まさにピンチじゃん。ってか、今回の敵、歴史のチョイスが相変わらずマニアックすぎない!?」
第二章:妖怪側近田沼意次、急襲
空中宮殿の美しい大理石の床が、凄まじい轟音と共にぶち破られた。
現れたのは、全身を冷酷な黄金の鎧でサイボーグ化し、無数の「株仲間(独占許可証)」の紙片をマントのように蠢かせる巨大な怪物――妖怪側近「田沼意次」であった。
「ウオオオォン! 重商主義ッ! 浮世の娯楽にすべて税を課し、健全な流通を異端として処刑せよッ!」
なぜ江戸中期の側用人が古代の空中宮殿に異端審問官のごとく現れたのかは不明だが、その手にした巨大な帳簿からは、周囲の華やかな色彩をすべて『質素倹約の白黒』に変える緊縮レーザーが放たれている。
そしてそのレーザーにロックオンされ、今まさに冷たい地下牢へ引きずり込まれようとしていたのは、一人の美少女だった。
羽衣天女:「不浄の役人め! 私の聖なる祈りと、秘蔵の高級ワインを没収しようなんて許さない! 神の御名においてデリートしてやるわ!」
天女は叫んでいた。しかし、その姿は尋常ではない。
彼女の背中からは炎のような暗黒オーラが立ち上がり、激しい神聖魔力を周囲に撒き散らしている。怒りでその瞳は真紅に発光し、異端の軍勢を丸ごと焼き尽くさんばかりの「阿修羅」のごとき凄まじさ。美しさと圧倒的な破壊衝動が同居した、恐るべき戦闘美少女であった。
ヤリチンヒロ:「おいおい、女の子を寄ってたかって脅すたぁ、異世界審問官の風上にも置けねえな。それにあの黄金クズ、さっきから増税増税うるせえんだよ。そんなガチガチなルール押し付けてんじゃねえ、どんな場面でもアジャスト(柔軟性)が重要なんだよ!」
大天使ガブリエルⅡ・ヤリチンヒロは、冷徹な瞳をキラーンと輝かせ、すっと教壇を踏み出した。八王子生まれの若手社員としての「美少女を救う」という魂の防衛本能が、聖剣『高尾』とシンクロする。
ヤリチンヒロ:「そこな緊縮野郎。俺のテリトリーで、そんなオーガニックじゃない白黒のビームをぶっ放すんじゃねえ!」
ヤリチンヒロが聖剣『高尾』を優雅に一閃すると、最高峰の天使のフェロモンオーラが、物理的な衝撃波となって炸裂した。
「アークエンジェル・ラグジュアリー・エステティカル・フラッシュ!!」
カチーンと輝くウインク光線が、妖怪側近田沼意次のメイン思考回路(脳天)を直撃する。
「グハァァッ! これが……これが令和の若手社員の、圧倒的なアジャスト力とラグジュアリーな輝きかァァ!」
規律にしがみついていた田沼意次は、ヤリチンヒロの放つ臨機応変なプレッシャーに耐えきれず、ドロドロに溶けて大理石の床に染み込み消え去った。
第三章:羽衣天女との、愛欲まみれの暮らし
羽衣天女:「……ふん、見事な手並み。でも、私は神に身を捧げた天女。あなたのような大天使に惑わされたりは……」
ヤリチンヒロ:「いいんだよ、気にするねえ。それより姉ちゃん、肩がガチガチだよ。そんなに四角四面に神の教えばかり気にしてたら、交感神経が優位になりすぎてターンオーバーが乱れるよ。俺の部屋で、Take it easy(気楽に)デトックスしていきなよ」
ヤリチンヒロの20代ならではの強靭な肉体美と、ん億年の放浪で培われた包容力は、抑圧された世界を生きる天女の心を完璧にロックした。
そこからは、世界線を超えた「愛欲まみれの暮らし」が始まった。
羽衣天女は、普段は冷酷な神の代弁者だったが、ヤリチンヒロの圧倒的な美貌(最高峰のオスとしてのフェロモン)と、洗練されたエスコートには抗えなかった。
夜な夜な、二人は空中宮殿の奥に設けたラグジュアリーな天蓋付きベッドで肌を重ねた。
ヤリチンヒロのテクニックは、八王子の社会人3年目の知識と、大天使としての強靭なスタミナが融合したハイブリッド。
羽衣天女:「あんた……なんで、聖書の教えにも載っていないのに、私の感じてるところが完璧にわかるのよ……!」
ヤリチンヒロ:「ふふ、港区の夜……じゃなくて、未来のトレンドを舐めないことね。ほら、ここが凝ってるんだろ、力を抜きな……」
激しい情念を持つ羽衣天女は、ヤリチンヒロの腕の中で、神聖な讃美歌ならぬ蕩けるような甘い声を上げ、完全に骨抜きにされていった。
毎夜、最高級の聖杯のワインを酌み交わし、贅の限りを尽くした愛欲の日々。大天使ガブリエルⅡ・ヤリチンヒロは、この空中宮殿の夜を完全に支配していた。




