【 ディストピア・八王子駅南口。サイバーパンクの美少女をデトックスせよ 】 彼の腕の中で、デジタルノイズ混じりの甘い声を上げ、完全にシステムダウン(骨抜き)にされていった
カチリ、ピピッ、ジーーーー。
不快な電子音と、鼻を突くジャンクなオイルの臭いで彼は目を覚ました。
「う、頭が……っていうか、ここどこよ!? 御簾は? 香木のアロマは!?」
気がつくと、彼はネオン管が怪しく明滅するサイバーパンクな路地裏に倒れていた。
空を見上げると、巨大な立体ホログラムが『ようこそ、2350年のネオ・八王子へ』と無機質に点滅している。空飛ぶ軽トラが排気ガスを撒き散らしながらビル群の間をすり抜けていく。
手鏡代わりに近くの割れたサイバー液晶画面を覗き込むと、そこに映っていたのは――
サイバーパンクなピチピチの黒レザーのコンバットスーツに身を包んだ、銀髪ツーブロックの超絶クール系サイバー美男子(22歳)。
しかし、その中身(精神)は、またしてもバグを起こしていた。
「八王子の若手社員」でも「港区の40歳ハイソ女子」でもない。どういうわけか、今回は「巣鴨在住・35歳の下町べらんめえヤンキ兄ちゃん」の意識が完全に入り込んでしまっていたのである。
「てやんでえ! なんだこのツブツブ光る壁画は! 飯屋はどこだ、縁側で茶でもすすらせろい!
……っていうか、なんだこの格好は! 尻のラインが丸見えじゃねえか、ハレンチ極まりねえ!」
中身が35歳ヤンキーとなったサイバー美男子は、驚異の足腰(若者の肉体)でアスファルトを蹴り、フットワーク軽くメンチを切りながら周囲を睨みつけた。
ラグジュアリーな暮らし(前世)から一転、超ハイテクなスラム街。だが、ジジイの適応力は侮れない。
「けっ、昔の縁日だと思えば、どってことねえ。要は気合いよ」
だが、このネオ・八王子は、ただの未来都市ではなかった。
第二章:妖怪サイボーグ井伊直弼、襲来
その時、路地裏の電子シャッターが火花を散らしてぶち破られた。
重低音のモーター音が響き渡り、現れたのは、全身の8割を違法パーツで改造した巨大なサイボーグ怪物――妖怪サイボーグ「井伊直弼」であった。
「ブオオオォン! 安政の大獄ッ! 脳内チップを全消去せよッ!」
なぜ幕末の大老がサイバーパンクの怪物として未来の八王子に現れたのかは不明だが、その機械化された両腕は巨大なガトリング砲に変形しており、赤色レーザーの照準を撒き散らしている。
そしてそのレーザーにロックオンされ、今まさにデータ転送用のカプセルへ引きずり込まれようとしていたのは、一人の美少女だった。
「バグ野郎! 私の暗号資産(仮想通貨)に手を出すな! システムからデリートしてやる!」
少女は叫んでいた。しかし、その姿は尋常ではない。
彼女の頭部からは無数の光ファイバーが触手のように伸び、激しいクラッキング電波を周囲に撒き散らしている。怒りでその瞳は赤く発光し、ネットの海を丸ごと焼き尽くさんばかりの「電子阿修羅」のごとき凄まじさ。美しさと圧倒的なサイバー破壊衝動が同居した、恐るべきハッカー美少女であった。
「おいおい、バカ言っちゃいけねえ。若い娘さんを寄ってたかって脅すたぁ、江戸の恥だ。
それにあの鉄クズ、さっきからギチギチうるせえんだよ。耳が遠い俺でも響くじゃねえか!」
中身が35歳下町ヤンキーのサイバー美男子は、すっと足を踏み出した。
八王子の若い社会人だった頃の「美少女を救う」という魂の防衛本能と、下町ヤンキーの「曲がったことは許さねえ」という職人気質のヤンキーマインドが奇跡のシンクロを遂げたのだ。
「そこな鉄クズ野郎。年長者の前で、そんな不粋な鉄砲をぶっ放すんじゃねえ!」
サイバー美男子は、腰のホルスターから、なぜか一本の「錆びついたクランクレンチ(工具)」を優雅に引き抜いた。
その瞬間、彼が放つ「職人の勘」が、未来のナノテクノロジーを媒介にして炸裂した。
「スガモ・トラディショナル・頑固一徹・ストライク!!」
カチーンと火花を散らすレンチの一撃が、妖怪サイボーグ井伊直弼のメイン基盤(脳天)を直撃する。
「グハァァッ! これが……これが昭和初期から培われた、職人の絶妙な力加減かァァ!」
井伊直弼は、未来のAIでも予測不可能だった「アナログな打撃の角度」にシステムエラーを起こし、過電流で爆発、ただのスクラップとなって煙を上げた。
第三章:電子阿修羅美少女との、愛欲まみれの暮らし
「……チッ、余計なお世話よ。でも、まぁ、ログは残しといてあげる」
助け出された電子阿修羅のごときハッカー美少女は、ふいとプラグを抜いた。ツンとした態度だが、そのサイバー義体の冷却ファンは、彼のあまりの男前さにオーバーヒート寸前まで跳ね上がっている。
「いいんだよ、気にするねえ。それより姉ちゃん、顔色が悪いぞ。そんな冷てえ電気の板ばっかり見てるから血行が悪くなるんだ。俺の部屋で、美味い大根の煮付けでも食っていきな」
サイバー美男子(中身:35歳下町ヤンキー)の包容力は、娘を狂わせる底なしの深さだった。
そこからは、世界線を超えた「愛欲まみれの暮らし」が始まった。
電子阿修羅美少女は、普段は冷酷なネットの支配者だったが、彼の圧倒的な美貌(22歳の最高峰の肉体)と、時折見せる「酸いも甘いも噛み分けた下町の気のいいアニキ」のような渋い大人の色気に抗えなかった。
夜な夜な、二人はサイバー長屋の片隅で、ネオンの光を浴びながら肌を重ねた。
彼のテクニックは、35年間の人生経験(人体のツボを知り尽くした知識)と、22歳サイバー戦士の強靭なスタミナが融合したハイブリッド。
「あんた……なんで、バイオセンサーも通してないのに、私の感じてるところが完璧にわかるのよ……!」
「へっ、伊達に35年、ネェチャンの我が儘に付き合ってねえよ。ほら、ここが凝ってるんだろ、力を抜きな……」
激しい情念を持つ電子阿修羅美少女は、彼の腕の中で、デジタルノイズ混じりの甘い声を上げ、完全にシステムダウン(骨抜き)にされていった。
毎夜、合成合成酒(のような安酒)を湯呑みで酌み交わし、贅の限りを尽くした愛欲の日々。
八王子の社会人、ん億年未来の戦士、港区女子、そして下町ヤンキーのカルテットミーニングを持った彼は、この未来都市の夜を完全に支配していた。
第四章:突然の終幕
だが、最高の下町情緒は、長くは続かない。
ある夜、電子阿修羅美少女が彼の胸元で、完全にセキュリティを解除して愛おしそうに眠りについた、その瞬間だった。
部屋の片隅のジャンクパーツの山から、シュルシュルと不気味な音が響く。
「あぁ? なんだい、この煙は。田舎の野焼きにしちゃあ、妙に紫じゃねえか」
見ると、ホログラムのノイズを突き破り、古びた「魔法のランプ」が浮遊していた。その注ぎ口から、紫色の怪しい煙がモクモクと立ち上る。
「おい待てコラ! まだ小遣い帳の計算が終わってねえんだよ! 次の巣鴨の縁日はどうすんだ!?
違った、午後からの定例ミーティングは!?」
必死に抵抗しようとするが、ランプの煙は容赦なく彼の鼻腔へと吸い込まれていく。
強制瞬間ワープの力が、彼の魂をサイバー肉体から引き剥がしていく。
「ああっ、俺の、俺の極上の愛欲ライフがぁぁーー!」
意識が遠ざかる中、最後に見たのは、愛欲に溺れたハッカー美少女の、幸せそうなバグ画面(寝顔)だった。
「うわあああマジでいい加減にしろよコラ!!!
今度はサイバーパンクかよ!!!
おまけに中身がヤンキーって、設定の渋滞が限界突破してんだろ!!!
おい、時空の裏で暇そうにランプ擦ってるクソ黒幕!!!
次はせめて、中身と見た目の年齢層をアジャストさせやがれ!!!
今すぐあのネオンの長屋の布団にロールバックしろォォォ!!!(大激怒)」
カチリ、と時空の歯車が回る。
気がつけば、彼はまた別の、見知らぬ異世界へと放り出されていた。次は果たして、どんな美少女を救い、どんなカオスな姿で愛欲に溺れるのだろうか。
ん億年の未来から続く彼の放浪記は、まだ、始まったばかりである。
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