30話『仁義に似ずは合わぬ酒』
◇◇◇◇◇◇◇レイテルside◇◇◇◇◇◇◇
来たのだ。
意外と早くて助かったのだ、あっ殺そうとするのは止めてくれなのだ……
「……この銃に弾は入ってないのだ。
そっちにしても聞きたいことはあるんじゃないのだ?」
「……そうだね、母さん。」
まずは対話から入るのが、無意味な戦闘を避ける必須事項。
そして、相手の感情を逆撫でしない。
大人しく従う。
「なら雑談を楽しもうなのだ。」
それが私の生存戦略なのだ。
「にしても随分と枯れた森なのだ。
木の実食べたかったのだ。」
野いちご食べたかったのだ。
「山火事の後の場所だよ…知らないの?」
ほうほう……だからこんなに真っ黒焦げなのだ。
……ん?なんか燃やした後に農業する奴もあった気がするのだ。
あれなんで育つだったのだ?
「あいにく、人間社会の出来事は好まないのだ。」
万年テストは赤点ギリギリ、好きなのはゲームとかの外に出ない奴、体力テストの最低評価。
それでも楽しかった部分はあれど、知能が低すぎて苦労することの方が多かったのだ。
「【模倣】して、盗みでも何でもやって生きる方が圧倒的に楽なのだ。」
……今の生活は嫌いじゃないし、人を騙すことも、人を困らせることも、人を裏切ることだって何も思わないのだ。
「ねぇ…聞いていいよね……」
「ああ、うんなのだ。
答えられることなら話すのだ。」
ただ何かの知識が必要な奴は拒否するのだ
やぁーい、脳内快楽物質の粉塵爆発~。
……何言ってるのだこれ……
「お前の裏にいる奴は誰なの。」
「……!いや、流石に普通の物語でそれを言ったら私がどうなるか察せ…すまないのだ。
……
お前の聞きたいのはどういう意味なのだ?」
普通の漫画なら多分それ言ったら私ミチルに殺されるのだ。(※良くて飼い殺し)
まぁ、意外と常識的な感性のミチルなら言っても怒られるぐらいで済みそうだけども……
「悪知恵だけでこそこそして、世界樹に居た時も居たんでしょ?
本当に、卑怯な奴だね。」
何なのだこいつ!?いや確かに性格がちょ~っと悪いのは否定しないけど…
そこまで言われたら私のメンツも丸潰れなのだ……
「はぁ……結局文句を言いたいだけなのだ…?」
「そんな卑怯な奴に」
勘弁して欲しいのだ。
「お前が命を賭ける価値はあるの?」
「……はっ?」
……んなぁー…これ一応ミチルも見てるのだ。
…あっ…変なこと言ったらヤバいことになるのだ……!!!ヤバいのだぁ!!
「心の底から、お前はソイツの為に死にたいの?」
んなぁぁ!?重い重い重い!!!過重力なのだぁッ!!!
……どう…どう返せば…っ…!?
『単純に推しカプの一人』…いや伝わる訳がねぇのだ…
それともあれなのだ…飼ってくれるところ!?いやでもそれなら他の奴でも良いってことになるのだっ!
「んな…」
いやミチルの良いところ?……ミチルの…良いところ…!?
体温が高い…!?えっでもそれでここまでするか普通……!?
……私が好きなのは…善良さとかじゃ…ないのだ…
ミチルの………
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「もうレイテル、そっち行って。」
…少し人を見下す癖があるところとか。
「ねぇ、レイテル。」
……何時だって名前を呼んでくれるところがあるところとか。
「レイテル……ありがとう!」
………ちゃんとありがとうを言ってくれるところとか。
「……レイテル、私達少し似てるかも知れないわね♪」
何処か、似ているから御互いに自分のことを捨てるだなんて思ってもないところとか。
……でも、それだけで。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「…確かにソイツは、性格も悪いし卑怯なのだ。」
この異世界に来て、持ってこれたものなんて何も無かったのだ。
家族も、先生も……友達も
全員、居なくなって。
「でも私もそうなのだ。」
希望も、夢も、思い出も、大切な物も。
全部消えた。
「だから、似た者同士だから少し信じられるのだ。
思うところがあるのだ。」
これが、16歳で死んだ私の。
「だから、アイツは私の生命線なのだ。」
生存本能なのだ。
…………ただ狸になるとは思ってなかったのだ。
人間と狸の生き方が違いすぎて正直真似は出来ないのだ。
「……そう言うなら
……お前も、居たんじゃないのだ?」
「っ!」
「この燃え尽きた森で、お前を導いてくれた。
友達が」
そうじゃなかったら。
「…村の犠牲になった友達が居たんじゃないのだ…?」
……お前に送ったこの花が、ここに供えられてる訳がねぇのだ……
「なんで知ってるんだよ下等種族如きが。」
◇◇◇◇◇主人公side◇◇◇◇◇◇
「こんにちは、ミチルたん。
ランタンを持って何処に向かうおつもりで?」
「あら、ありがとう♪
……邪魔者さん♡」
流石に武器は持って無さそうですし、見たところランタンしか…
ランタンで殴ってくる…ような子だなぁ。
カッコ良いし、そんな所も大好きだけどその暴力性の扱いには気を付けないといけない。
ミチルたんが傷付かないように。
「すみません、僕は戦闘が苦手なもので…
なので、その手に持つランタンを下ろしてくれませんか?」
「ふふっ♪私も、対話が好き。
変に争うよりもずっと傷付かないもの♪」
……このミチルたんの言動は少し不思議ですね。
確かにミチルたんに戦闘出来る程の力は無くても、それでも敵と対話を求めるぐらいなら逃亡を選ぶそんな生存本能が色濃く出てた……
なのに、今目の前にいるミチルたんは……今までも怖いくらいに保守的だった。
「ねぇフィルミアは?行ってあげないの?」
「……フィルミアくんの場所を知ってるんですか…?」
…待って下さい。
可笑しいです、それほどまでに保守的な人間なら現状維持を望む筈。
それでも、本当に保守的な人間なら悪事を止めるか…自分の手を汚さない筈なのに、ミチルたんはここに来た、その状況がまず可笑しいんです。
「ええ♪そうね。
私も向かうつもりだったし一緒に来る?」
「へ?一緒に着いてって良いんですか?」
……まさか、このミチルたんにとってはこの世界さえ自分の手の平に乗るものだと言う確信がある?
だから余裕を持っている?
そうじゃなきゃ、今までのミチルたんの行動はあまりにも『辻褄が合わない』。
短絡的過ぎる。
「ええ♪だって貴方が居ないと…多分……♪」
…でもそれなら、何故彼女は。
動いた?
「…この山が火事になっちゃう可能性があるわね♪」
保守的であるのなら原作通りにする理由がない。
楽観的であるならば隠れる必要がない。
短絡的であるならば自ら動く必要等無い。
そうだ、この違和感は
全ての言葉に彼女の行動は当てはまらないからだ。




