第十三 我が塗料になりて
昼食を終えて、店を出た。久々にまともな料理を食べられたし、旧友とも一緒にご飯を食べられたから、めちゃくちゃ満足のいく時間だった。
「それでさ、これからどうするの?解散する?」
「いや。これから私が請け負った業務に君達も少し手を貸して欲しい。」
「誰か招集するの?」
「あぁ。この付近に住んでる、あの芸術野郎だ。」
「ハハ!アイツを誘うのか!アイツ、ちゃんとついて来てくれるのか!」
「無理矢理にでも集める。じゃないと、国王に言ったことが嘘になってしまうからな。それだけは勘弁したい。」
「彼、この辺に住んでるんだよね?結構前に私も彼の家に行ったけど、場所は変わってないの?」
「家自体の場所は変わってない。その代わり、アイツは今、仕事をしているだろうから職場へ行く。」
「それって大丈夫なの?」
「知らん。しかし、アイツの仕事よりもこちらの仕事の方が優先度は高い。最悪、力づくで来させる。」
クロンは溜息を吐き、歩き出した。私とメビウスもクロンの後を追い、あの芸術家の職場へ向かっていった。
10分ぐらい経過しただろうか。この辺り、ずっと坂道で非常に疲れる。普段から運動してないせいで足腰が痛い。いっそ、メビウスに運んでもらおうかな...。そんなこと考えてたら、ようやく到着したみたいで、クロンはすぐ側の家っぽいところのドアを開けた。
そのドアの先には廊下が続いており、白色の廊下には数多の塗料が付着していた。その廊下の一番先には木製の扉があり、多分そこで何かやっているっぽい。
「ここだ。この先にアイツがい...」
「何をやってる!そこは赤を使うのが常識だ!何度言ったら分かるってんだ!お前はそこまで馬鹿だったか!?あるいは人間じゃないか!?脳味噌が腐ってんのか!?」
「ねぇクロン...。なんかめっちゃキレてない...?」
「・・・だから私はコイツが苦手なんだ。すぐにキレる。もう少し感情を抑えて欲しいが...仕方がない。このまま会うぞ。」
廊下の先のドアを開けると数人が円形にキャンバスの前に座って絵を描いていた。キャンバスに絵を描いている人の後ろでイライラしている、私達が招集すべきうちの一人がいた。
「ハンソ...」
「誰だ!私の名前を軽々しく呼んだ奴は!お前達が俺の名前を軽々しく呼んでいいと言ったか!?」
クロンは目にも見えぬ速度で芸術家の「ハンソン」に近づき、彼の頭を殴った。
「ハンソン。私だ。いちいちキレるのはやめろ。不愉快だ。」
「チッ、痛ぇなクソが...。あ?というか、なんだお前か。それにアウネにメビウスまで。これは失礼したな。謝罪しよう。」
ハンソンはようやく私達に気が付き、いきなり大人しくなって謝ってきた。彼、めちゃくちゃ感情的になりやすく、自制というもののネジが割と吹っ飛んでいるタイプの人間。つまり変人タイプ。私も変人の部類だからあんまり強くは言えないけど。
「ハンソン。これからお前は我々と行動してもらう。何年かかるか分からんが、一年以上は確定でここには戻ってこれないことは了承しろ。拒否権はない。」
「・・・は?どういうことだ。説明しろ。」
「とりあえず場所を移したいのだが。流石に絵を描いている彼らには聞かせられる内容じゃない。」
「・・・分かった。数分だけ待ってくれ。おい、お前達。今日はそこまでだ。それから、ここは長期的に閉鎖。立ち入り禁止にする。お前達はもう自由だ。一人で絵を描くなり、他の人物に教えを乞うなりしろ。もし他の奴に教えてもらうなら、推薦状だけは書いてやる。分かったら、荷物を持って出て行け。」
当然の如く、ハンソンの弟子?達は困惑していた。何があったのか、私達は誰か、どうしてそうなるのかすら分からないまま追い出されるんだから、当たり前だった。それでも、ハンソンの弟子達はテキパキと片付けを始め、すぐに誰もいなくなっていった。




