10 魔王、甘いアイスをたべる
「……ちょっとした、“魔王討伐”です」
ツノの人はフェイスシートのまま、ゆっくりとこちらを向くのが横目で見えた。
「ああ、そう。大変ですわね……」
別に気にすることなく、私たちは上質なスパを味わった。
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スパが終わって、ぽかぽかの身体がぼんやりとした眠気を醸し出す。
でも口がちょっと寂しい、おやつが食べたい。
何も考えずにエスカレーターに乗って一番上の階へと辿り着いた。
吹き抜けたガラスが天井を覆って、幾千もの星の光を映した。
部屋も寒色系の光で明るく満ちているのに、不思議と星の輪郭がくっきりと見える。
その階はマッサージチェアがいっぱい並んでいて、本棚もある。
「あれ?」
中央の座席に居座っている人に見覚えがある……ラストじゃん。
私はそばの冷凍庫に入ったソーダ味のアイスキャンディーを手に取って、ラストの方へと歩く。
無警戒にも読書をしてる……
1000年ぶりに、いじわるしてあげる。
「世界が炙られ、人が飢えて嘆いていた1000年間。あなたはずっとこうしていたの?」
「リリーヴァ……」
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なぜ勇者時代のパーティメンバーが目の前に!?
リリーヴァはだらーっとわたしの席の肘掛けにもたれかかった。息がかかるような距離に顔がある。
「そのコーラ、どこでもらえるの」
「え、コーラ?」
「うん」
「ああ、向こうでもらえるよ」
わたしは本棚の近くの冷蔵庫を指差した。
「向こう側なのね……私が来た方はアイスが置いてあったよ」
「へ…へえ。そうなんだ、オイシソー……」
「食べたい?」
「た…べたい…」
リリーヴァは舐めていた棒アイスを、わたしの口元にそっと近づけた。
「あーん」
「ん……」
甘くて酸っぱい味が口に広がる。
わたしはアイスを咥えたままリリーヴァに聞いた。
「おこってふ?」
「怒ってないよ……ラストはかわいいね、ぜんぜん昔と変わってない」
「んん……」
頭も撫でられ、まるで赤ん坊のように扱われている。
「おいしい?」
「うん……ぷはっ。リリーヴァがどうしてここにいるの?」
「魔王ちゃんを捕まえに来た、でもここにいるのは偶然だよ?」
「ほんとに怒ってない、?」
「1000年間怒ってたら変でしょ……怒ってるのは怖い顔をしたおじさん達だけだよ」
「そうなの」
「うん、でも使命があるからラストを捕まえなきゃダメ」
「やだな……」
「やだか……じゃあゲームしよ」
「なんのゲーム?」
「地下一階のアーケードコーナー。2対2で遊ぼ、負けた方が勝った方のお願いを聞く」
「誰がやるの?」
「私の仲間を連れてくる。ラストの仲間もここにいるでしょ、魔物のお姉様が」




