DLC8 人さらいを懲らしめる
人さらいたちのアジトは、路地を深く行った、奥まったところにあった。
なるほど、巧妙に隠れていやがる。
「私の友達……みんなここに捕まった……」
「そうか……今俺が助けてやるからな……!」
俺は不安そうなシャルの頭を撫でる。
DLCとして手に入れた、勇者の剣を持って、俺は闘志を燃やす。
この剣で、あいつらを全員ぶった切ってやる……!
「しかし、この建物……どうやって中に入るんだ……?」
「むう……わからない……」
シャルは申し訳なさそうにうつむく。
仕方がない、なんとか道を探そう。
「あ、ねえ……もしかしたら、裏口から入れるかも」
ルミナがそう言った。
人さらいのアジトは、巨大な倉庫のような形になっており。
正面の大きい扉は固く封鎖され、警備もされていた。
しかし、ルミナの言うとおり、裏口には警備が少なそうだった。
「うーん、でも……こっからじゃああまり様子がわからないな……」
「なんとかならないかしら……」
「そうだ……!」
俺は、自分のスキルを確認することにした。
DLCスキル……これまでにも俺に、いくつものチートを授けてくれた。
こんなときこそ、新しいDLCが出ているかもしれない。
「スキル発動:DLC一覧――!」
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使用可能なDLC一覧
・3Dマップ【課金アイテム】
・万能鍵【課金アイテム】
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「うわぁ……都合よすぎる……!」
もしかして、神様的なのが俺を見ているんじゃないか……?
そう勘違いしてしまうほどに、都合のいいアイテム。
というか、このDLCスキル、マジでなんでもアリだな……!
異世界なのに、3Dマップって……。
しかも万能鍵も、こんなすぐに手に入っていいのか?
ゲームでだって、そんな便利なアイテム、手に入るとしても、かなり終盤だろ?
「まあ、なんでもいいか……。とりあえず、今は獣人の人たちを救えれば……!」
これは、神に俺の想いが届いたのだとでも思っておこう。
俺の、他人を助けたいという気持ちが……!
案外この異世界の神様ってやつは、いい奴なのかもしれないなぁ。
俺はDLCから、3Dマップを選択した。
すると、俺の視界の端に、マップが表示される。
今自分がいるところを中心に、敵は赤色で表示され、各種扉などは、扉のアイコン、というふうに、非常に見やすくなっている。
まるでゲームのマップ……いや、それ以上に使いやすいかもしれない。
「よし、これなら敵を避けつつ、扉までたどり着ける……!」
「ね、ねえ……ドルクには何が見えてるの……?」
一人でぶつぶつ言う俺に、ルミナが問いかける。
「あ、ああ……すまんすまん。俺のスキルだよ。俺の視界には、今敵の位置なんかの情報が丸わかりなんだ……」
「そうなんだ……! すごい! ホントに、ドルクのスキルってなんでもありなのね……。もう驚かないことにするわ……」
「ああ、そうしてもらえると助かる。俺も、まだこのスキルがどういうものかわかっていなくて……」
俺の3Dマップに従って、裏道を上手く利用することで、敵を避けつつアジトの裏口までやってきた。
さあて、あとはこの扉を開錠すればいい。
「ドルク、この扉はどうするの……?」
「ああ、これも俺のスキルでなんとかなる」
「えぇ……? もう、ほんとになんでもありなのね……」
「まあな。実質バグ技やチートのようなもんだし……」
「……? バグ……? チート……?」
「あ、いや……なんでもない」
おっと、ついつい異世界では通じない言葉を使ってしまった。
まだまだ、体感としてはつい最近異世界にやって来たばかりという感じだから、慣れないなぁ。
「よし、あけるぞ……!」
「うん……!」
シャルが、期待に目を輝かせて、俺のことをすがるように見つめる。
――ガチャ。
「お、ほんとに開いた!」
この万能鍵ってのも、マジでなんでも開けられるみたいだな……!
これさえあれば、今後もいろいろと苦労しなさそうだ。
「よし、いこう……!」
敵に見つからないうちに、俺たちは人さらいのアジトに侵入した。
いよいよ、本格的な戦いが待っている……!
まあ、今の俺が負けることなどないだろうけど……。
◇
俺はたち、アジトへ足を踏み入れた。
裏口から入り、獣人たちが攫われている檻を見つける。
しかし、檻の前には人さらいたちがたむろしていて、こっそりと連れ出すことはむりそうだった。
まあ、戦っても負けることはないだろうから、ここは正面から助けるか……!
俺は、物陰から勢いよく飛び出していき、やつらの前に立ちはだかった!
「おいお前ら……! 連れ去った獣人の子たちを解放しろ……!」
「な、なんだてめぇ! どっから入りやがった……!」
すぐに数人の人さらいが、俺のことに気づく。
しかし、敵が攻撃を仕掛ける前に、俺は動く……!
「フラッシュライト!!!!」
――ドカン!
「うわぁ……!!!!」
倉庫の中に、閃光が炸裂する。
窓は割れ、砂埃が舞い散る。
人さらいたちは一斉に目を塞いだ。
ルミナから教わった魔法が、こんなところで役にたつなんてな。
「いっけえ! ドルク!」
「よし、いまのうちに……!」
俺はものすごいスピードで、人さらいたちに距離を詰めた。
彼らはまだ目を開けられないでいるようだ。
必死に目を開けようとしているが、俺はその隙に――!
――シュン!
「なんだぁ……!? 今のは! 速すぎる!」
まあ、俺の敏捷ステータスは、常人のそれを遥かに超えているからな……。
そうそう俺に追いつけるヤツはいないだろう。
これでも、手加減をしているんだけど。
「えい!」
――バキ!
俺は目にもとまらぬ速さで、敵の腕を狙って攻撃していく。
もちろん、勇者の剣でみねうちをするだけだ。
腕を狙えば、武器が使えないから、安全に敵を無力化できる。
「くそ……! 俺の腕がぁ……!」
その調子で、どんどんと敵を倒す……!
――バキ!
「うわぁ!」
「なんだ……!?」
「だめだ……! 速すぎてどうしようもない!」
ふぅ……。
あっという間に、檻の前に気絶した男たちが転がる。
どれも殺さずに、気絶させるにとどめた。
本当はこんな連中、殺しても構わないところだったが……それを裁くのは、俺ではない。
こいつらは警備隊にでも引き渡し、あとは彼らに任せればいいのだ。
俺の目的はあくまで、人助け。
獣人さんたちを解放できれば、それでいい。
「すごい! さすがドルク!」
「さあて、それじゃあ獣人さんたちを解放するか」
俺は、獣人たちが捕えられている檻に近づく。
檻の中には、様々な種類、年齢の獣人さんたちが捕えられていた。
中には耳を斬られている子もいた。
かわいそうに……。
「とりあえず、万能鍵で開錠しよう」
――カチャカチャ。
俺は急いで、彼女たちを檻から解放した。
すると。
「みんな……! 無事だったにゃ……!」
シャルが捕まっていたみんなに駆け寄る。
捕まっていたのはシャルのお姉さん分の子だったようで、シャルは甘えるように抱き着いていた。
こうしてみると……本当に助けることができてよかったなぁと思う。
「ドルク……本当に、みんなを助けてくれてありがとうにゃ」