DLC12 ギルドへ行った
「にゃあ、ドルク……くすぐったいの」
「ちょっとだけ我慢してくれ」
俺は、シャルに新しい服を買ってやり、着せてやった。
いつまでも汚れた服のままだと、いろいろと問題があるからな。
それから、俺たちは冒険者ギルドへ行くことにした。
「これから、お金も稼がないといけないしね……」
「そうだな、冒険者になってみるのも悪くないな」
ルミナは金の心配をしているが、正直なところ、俺としてはいざとなればDLCでなにかと売るものはあるので、その辺の心配はしていない。
だからまあ、冒険者になるといっても気楽なものだ。
でも、なるべくなら何も売ることなく稼ぎたいのも事実。
あまり異世界に規格外のものを流通させすぎるのもよくないだろうし……。
それに、せっかく異世界で暮らすのであれば、一度くらいは冒険者ギルドというものに登録してみたいと思うのが、転生者ってものだろう?
「というわけで……」
俺たちは街の中心部にある、巨大な冒険者ギルドを訪れた。
冒険者ギルドの中は、机がたくさん置かれていて、カウンターもたくさんあり、まるで大きなショッピングモールのフードコートを思い出させる。
俺はカウンターの受付嬢のお姉さんに話しかける。
「あの、冒険者登録をしたいんですけど……三人」
「新規ご登録の方ですね! ではまず、こちらの用紙にお名前とジョブを記入してください」
「はい。わかりました」
俺たちはギルドカードに必要事項を記入していく。
ルミナは魔法使いのジョブを持っているようだった。
俺はDLCと書く。
「あの、ドルクさん、こちらのジョブはいったい……?」
「ああ、聞いたことないですよね……」
「ええ、うちのギルドにも、過去に登録された方はいません……」
「登録……できませんか?」
「いえ、可能ですが……現状、こちらのジョブの能力値がわからないので……」
そう言って、受付嬢さんは水晶玉をとりだした。
「まあ、まずは能力測定をしてみないとですねぇ」
「あ、はい。お願いします」
能力値測定。
ギルド登録の際には、その人物がどの程度の能力を持っているのかを測るのだ。
DLCなんて得体のしれないジョブ、せめて能力値がまともじゃないと、登録してもらえないだろうな……。
ちなみに、ステータス画面を直接見せるようなことは、通常しない。
ステータス画面は個人情報として、大切に守られている。
だってまあ、それがわかってしまうと、命にもかかわるからな。
相手のステータスがわかっていれば、戦う前に狙い撃ちできるというものだ。
だから、こうやって水晶での能力判定を行っている。
まあ、俺としてもそれはありがたかった。
もしステータス画面を見せなきゃいけないのであれば、俺はここで詰んでいただろうからな……。
改めて、俺は自分のステータス画面を見てみる。
もはや数値がインフレしすぎていて、数字がなんだかわからなくなっている……。
えーっとBってのはビリオンだから、十億か……!?
レベルも既に、100を超えていた。
これ、チートかバグ技にしか思えないな……。
こんなステータス画面を他人に見せたら、引かれるし、卒倒されてもおかしくない。
だが、水晶での判定はステータスの総和をぼんやりと測るものだ。
なので、規格外であることはバレても、具体的な数値まではわからないだろう……。
水晶は一定以上の数値は全部、黒色に変化するらしいからな。
「では、水晶に手を置いてもらえますか……?」
「あ、はい」
まずは、ルミナから測定をする。
ルミナが水晶に手をかざすと、水晶は水色に変化した。
「水色――でしたら、冒険者ランクはEになりますね」
「うー私、そんなに弱いんだ……」
肩を落とすルミナ。
「まあ、大丈夫だって。俺がいっしょだからさ。そのうちルミナも強くなるよ」
「ドルク……ありがとう。やさしいね。えーっと、じゃあ次はドルクだね」
「うん……」
俺は水晶に、手をかざす。
Sランク冒険者なら、ほとんどが黒色に変化するはずだ。
そして、そのSランク冒険者よりはるかに上の存在である俺も、もちろん黒色になるはずだった。
「えい……!」
水晶に手をかざし、魔力を込める。
すると――。
――バキバキ……!
「え……?」
――パリーン!!!!
なんと水晶は、変色することなく割れてしまった。
「えー、っと……これ、どういうことですか……?」
「その……ドルクさんのステータスはどうやら……この水晶では測り切れないようですね……」
「あー、まじか……そのパターン……」
俺、知ってるぞ。
これ、漫画で読んだことあるわ……。
まさか俺がそれをやってしまうなんてな……。
つまり、俺のステータス数値が高すぎて、水晶が持たなかったというわけか。
「えーっと、この場合、どうなるんですか……?」
「さあ、ギルドとしても、前代未聞のことですので……」
「なにか、代わりの方法はないんですか……?」
「そうですねぇ……。Sランク冒険者の方に、試験を行ってもらうっていう方法もできないことはないですが……いそがしい方ばかりなので……」
受付嬢さんはすっかり困り果てていた。
うーん、困ったな。
なんだろう……。
俺をどうしても登録させたくないという鉄の意思を感じるのは気のせいか?
まあ、俺のようなわけのわからないステータスのヤツはめんどうなんだろうな。
それか、マジでどうしたらいいのかわからないのか?
そうこうしていると――。
「いいじゃねえか、別に。試験くらい俺がやってやるよ」
そう言って現れたのは、筋骨隆々の男。
裸にほぼ近い格好で、斧だけを背負っている大男だ。
「デスマさん……」
受付嬢が、その男を見上げながら言った。
「デスマ?」
「デスマ・デスマキウス――我がギルドが誇る、Sランク冒険者の一人です。」
どうやらこのデスマという男は、試験を自ら買って出たらしい。
俺としては、ありがたいことだが……大丈夫か?
「受付嬢ちゃんよ、いくらこの少年が規格外のステータスだろうが、門前払いはいけねえよ。ギルドは常に、優秀な人材を求めてるんだ。どれ、俺がいっちょう見てやろう」
「デスマさん……ですが……!」
受付嬢はなおも反対のようだ。
まあ、Sランク冒険者同士の対決となると、危険だから、それもそうだろうな。
だが、デスマはそれを手で制止した。
腕まくりをして、既にやる気のようだ。
「よし、ドルクくんとやら。外へ行こう。俺が君の実力を見てやるよ。なに、俺もかつて、同じように門前払いを食らった口だ。なにせ、俺のステータスも規格外でよ。当時の基準じゃ、測り切れなかったんだ」
「そうなんですか……。ありがとうございます、よろしくお願いします」
デスマか……さすがはSランク冒険者、俺と同じく規格外。
まあ、ジョブによってはそうなることもあるだろう……。
実際、俺の親父も剣神だったが、攻撃のステータスなどはバグ技かってくらいにイカレてたしな。
だが、それなら遠慮なくやれるな。
俺のステータスで思い切り戦ったら、相手がどうなるかわからないしな……。
「よし、行くぜ……!」
デスマは斧を構えた。
「では、Sランク認定戦、はじめ!」
受付嬢の一声で、戦闘が開始される。
瞬間、俺はデスマに向かって走った。
「あれ……?」
しかし、俺からすればデスマは止まって見えるくらいに遅い。
Sランクって、こんなものなのか……?
それとも、素早さだけは低いのだろうか。
「えい!」
とりあえず、デスマの後ろに回り込み、俺は攻撃をする。
剣で斬ると危ないので、拳でグーパンチ。
あれ、せっかくの勇者の剣なのに出番がないなコレ……。
「ぐわあああああああああああああああああ!!!!」
しかし、デスマは俺の拳を受けて、断末魔の悲鳴を上げながら、赤子のように転げまわった。
「え…………?」
Sランク、規格外のステータスと聞いていたのだが……?
これはどういうことだろう。
「よっわ……」
Sランク冒険者デスマ、ここに敗れる。
で、俺は見事、Sランクにしてもらえたわけ。
「はぁ……なんとかデスマさんの怪我が治ってよかった」
背骨が折れていたようだったが、俺の回復魔法ですぐに治った。
「っく……不甲斐ない。まさかドルクくんがここまでの実力者だったとは……」
「いやいや、そうでもないですよ」
まあ、とにかく冒険者登録が無事にできてよかった。




