57.初夜の後
ムーンさんに短編投稿済みです。
場面がちょいと重なっています。
協力を取り付けられるかどうか、瀬戸際なのは確かですが、まぁ、お子など今日の明日で産まれるようなものでもありませんし、今でなくてもよいでしょうか。というより、王弟殿下がまったく返答を寄越して下さないので協力云々の段階ではないと言いますか。
「あの‥‥?」
言いたいことはすべて口にしてしまいましたので、私としては何かを言っていただきたいのですが何故黙られているのでしょう、殿下は。
「‥‥義姉上はそれでよろしいのですか」
何かを押し殺した声音でようやく王弟殿下が訊いてきて、私は思わず訊き返しそうになりました。よろしいとは、何がでしょうか。私にはわが姫以上に大切なものなどありませんし、わが姫が望むことは全て私が望むことですが。
けれどその前に、寝室へ続く扉が開き、旦那様が顔を出されました。あれまぁ、気だるいながらも満足気。そういうことをしてきたはずなのに恰好が乱れていないのは、髪が湿っていることからも、きっと水を浴びてから出てみえたのですね、見栄っ張りなことで。
「おめでとうございます」
で、正しいのでしょうかね、私は旦那様に駆け寄り告げました。けれどそれよりも何よりも確認したいのは、
「わが姫はいかがお過ごしです?」
一応名実ともにわが姫の伴侶となられたのですから、ないがしろにすることはできないので悠長に訊いていますが、気は急いています。早くお答えください。
「‥‥何故わが妃殿は侍女のお仕着せなど着ていらっしゃるのだろうね?」
なのに別のことをおっしゃるものですから、私は焦れて、身代わりですよと口にしながら寝室を覗き込みました。寝台に目をやると、仰向きで上掛けを被せられてはいますがぴくりとも動かれないお姿が。
「‥‥少しは手加減なされてください」
思わず口にしながら、迷わず寝室に入りました。この空気からして、きっと清められずに旦那様は出てこられたのでしょうね。このままでいらっしゃるのも不快なことでしょう、今は気を失っていらっしゃいますが。あのへたれが、と私は閉じた扉を半眼で振り返りましたが、まぁ、わが姫の魅力には誰も勝てませんしね、致し方のない事やもしれませんね。
ひとまず空気を入れ替えましょう。このピンクな空気は毒です。何かの毒です。かといってもちろんあられのない格好のわが姫がいらっしゃるのです、窓を開けたりなどするはずがありません。というより寝室に窓はありません。王城のどこよりも守られる必要があるために。抜け道はあるようですけれどね、そのようなかび臭い空気などわが姫に呼吸させるものですか。イメージですが身体に悪そうです。
というわけで、私はこの寝室に、魔法的な窓と言いますか、外界と空気を入れ替えるように空間を直結いたしました。こういうのなら得意なのです。




