表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宵闇の騎士  作者:
第3部
36/59

35.団欒

 奇妙な虚脱がありました。


 私が何を言おうとも、わが姫は多分、今の生活を変えられることはない。それが分かってしまって、そしてそれが苦痛ではないものだから、私は受け入れるしかないのです。


 数日、何をしていたものやら分かりませんが、あっという間に時間は過ぎました。


「そろそろ、賓客が到着する」


 そう、夕食の時に父が言ったのはそれから何日後でしたでしょうか。


「‥‥賓客」


「‥‥え。父上、それはもしかして」


「それは勿論、お前の成婚の儀の列席者たちだ」


「‥‥兄殿下‥‥自分のお式の日取りくらい把握していてください‥‥」


 まぁそういう私も、まるで知りませんでしたけどね。


「‥‥あと何日くらいありましたっけ」


 兄の虚ろな笑顔にとても不安になりました。


「‥‥お前はまた、各師の手を煩わせるのだろうな‥‥」


 でも不安を覚えたのは私だけではないらしく、父も溜息を吐かれました。あぁ、思い返されるのは成人の立太子の儀の騒ぎ。逃げ出す兄を何度捕まえたことか。


「‥‥兄殿下。ちなみに逃げられた場合には、私、以前にも増して全力を以て追いかけさせていただきますので」


「‥‥えぇー‥‥」


「‥‥それは頼もしいな」


 姫君がすることではないのは分かっていますが、だってこれでも皇太子ですから遠慮なくしばくことができるのって私くらいなのですよ。だから父よ、そう諦めたように息を吐かないでください。恐らく私がこの国で行う、最後の仕事ですし。


「‥‥義姉君(あねぎみ)はどうなさっておいでです?」


 兄に訊いてもどうせ分からないでしょうし、私は背後に控えていた兄の騎士に声をかけました。


「物思いはされているご様子でしたが」


 無口で存在感もありませんが、訊かれたことにはきちんと答えてくださいます。


「‥‥では、このあとお声をかけに参りましょうかね」


 これからちょっとばたばたするお詫びも兼ねて。


「‥‥お前の婚約者殿も、数日内に到着予定だが」


「あら、そうなのですね。ではなおのこと、今のうちにお話ししに参らねば」


 義姉妹として過ごす時間はまるでないでしょうけれどね。


 それくらいしか、私にはできませんし。どうしようもない虚無感を持て余しても、やるべきことだけやっていれば、時間など過ぎていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ