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宵闇の騎士  作者:
第2部
16/59

15.それから2年が経ちました

 この2年で何があったかと言えば、隣国との付き合いが密になったことでしょうか。2年前の脅しが効いたのか、それとも婚姻を結ぶ話が出ていたことを考えればもとよりそのつもりだったのか、それは分かりませんが、私の身の周りは平和なようです。


 あとは私の目的を果たすことができれば、輿入れするのに問題は何もないのですが、まだ果たせずにおります。兄の婚約者が成人するまであと1年、猶予はあまりありません。


 そんなある日、私は尖塔のふもとに呼び出されておりました。


「‥‥で、貴方はここで何をしていらっしゃるのですか兄殿下」


 私は目の前で阿呆っぽい笑顔を浮かべている、私を呼び出した当人であるところの兄を睨みつけました。背後では兄の騎士が相変わらず無表情で空気のように立っていますが、空気のようなので無視します。これで兄を傷つけようとする者には容赦しないというのですから、分からないものです。


「ご公務はどうされたのです?」


 兄はへらへらと軽薄な笑顔で言いました。


「5日に1日は休みを勝ち取ったから大丈夫!」


「‥‥公務ってそんな軽い物でしたっけ‥‥」


 あの父を見て育ち、どうしてこんな風になったのでしょうね‥‥


 思わず遠い目をする私に、空気のような兄の騎士がちょっと頷いて見せたのが驚きでした。あぁ、彼も己の主の軽さはきちんと認識しているようです。かといってどうしようもないのでしょうね‥‥


「‥‥で、その勝ち取った休みをつぶしてまで、この封印の塔に来て何をするおつもりですか?」


 私は尖塔を見上げました。


 封印の塔。それは、かつて一の王国の最後の姫が、最後にこもったと言われる塔。その一つ。もともとの役割は何だったのか、それは伝わっていません。


 一の王国時代、大陸は一の王国ただひとつで治められておりました。それゆえにか、その王城も広大なものでした。現在の大小の国々の、一つの国土くらいはあったのではないでしょうか。ちなみに、我がクルサンド王国は、かつての王城に隣接してあります。封印の尖塔は、王城の4隅に立っていたそうで、実際最後の姫がどの塔にこもったのかは伝わっておりませんが、それぞれに隣接する王国がそれぞれに、我が国土の塔こそがそれだと主張しています。国土と言っても、ふちのふちですけどね。


 つまりここは現在の国境付近。


 それはともかく、古代のロマンに想いを馳せますと、もともとの役割が何だったかはともかく、現在封印の塔と呼ばれているその理由は、かつての王城に誰も立ち入ることができないことに由来します。王城は封印されたのだと、その要となっているのが4つの塔であるのだと、まことしやかに囁かれているのです。


「もちろん、探検に決まっているじゃないか!」


 阿呆の兄は能天気にのたまいました。


 ‥‥危機感って何でしたっけ‥‥

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