14.本質で対話
けれど多少心に壁があったところで、一度つながれた心は離れたりはしません。だからのろいと紙一重だというのです。
「‥‥それで、これは、自国に戻ってもつながるのでしょうか?」
王子はすぐさま気を取り直したようでした。賢明なご判断です。
「つながりは保たれたままだと思いますが‥‥
国をまたいだ距離でもたとえば声が届くかどうかは、分かりません」
何せ使ったのは初めてですし。誰かから習ったわけではないので、実体験も聞いたことはありません。首を傾げる私に、特に悪意がないことははっきりしているので、王子は苦笑いをしてみせました。
「そうですか。
そうですね、どうせ私は数日後には帰りますし、実験も兼ねられるのではないでしょうか」
「‥‥そうですね。もっとも、私はこのの‥‥まじないを、広めるつもりはありませんけれど」
「‥‥貴女の性格がなんとなく分かってきました」
えぇ、のろいと言いかけたのはわざとです。ただのいたずら心ですよ。でもそれを受け流さない、王子の性格も分かってきました。意外と傍付きのかたがたは苦労していそうですね。
「きっと私たち、うまくやれると思うのです」
生涯の友ですし。結婚しても、きっとうまくいきます。
「‥‥知っていたのですか」
「はい。昨夜、父王に聞きました」
ということは、王子は分かっていてこのつたない外交につきあってくださったということですね。単純な興味もあったかもしれませんが。
「‥‥私には譲れないことがいくつかありますが、そのひとつが、無血です」
それは私の願いではありませんが、私の願いを叶えるためには不可欠なもの。
まっすぐに王子の眼を見つめました。お互い座っているので、目が合わせられるのはいいことです。立つと見上げざるを得ませんもの。えぇ、もちろん椅子の高さは割増済みですよ。
「‥‥だから、この国を手に入れようと思うのは自由ですが、武力を以てすることだけは禁じさせてください」
えぇ、この王子、意外と血気盛んです。いかにもな王子様の顔をして見せているくせに。
「‥‥攻め入ったらどうなるのでしょうか?」
ちょっと楽しそうなのがいい性格だと思います。
「流血を厭う私の気持ちを貴方の心に全力でぶつけます」
つながっていますからね。自己嫌悪でつぶれそうになればよいのです。何せ魔の力は私のほうが段違いに強いのですから、逃げられませんよ。




