13.まじない≒のろい
「それで、これは、どのような魔法なのですか?」
確かに心をつなぐと言っても、想像しにくいかもしれません。
「‥‥そうですね。殿下と私との間に、一本の細い線が結ばれたようなものでしょうか」
意識をしなければ感じられない細い線。つながりを意識すれば、その線がどこへ続いているのかなんとなく分かります。強い感情が伝わるというのは、心の震えがそのまま線に乗るという感じでしょうか。その感覚については、先ほどの私の喜びと感謝で体験済みですが。
それから、お互いにつながりを意識すれば、このようなこともできます。
「私へとつながるものを意識していてくださいね‥‥」
(――分かりますか?)
神妙にしていた王子が、その瞬間目を見開きました。
「今の、は?」
「この呪いの最大の効用が、これでしょうね」
(文字通り、『想いを伝える』のです)
心をつなぐ線は、誰にも見えません。それは魔の素養の有無で決まることではなく、お互いにしか感じられないものなのです。そこを通じて思いを共有できるという、それがこのまじないです。とても地味ですが。ある意味強力な魔法です。
王子はしばらく一人で唸っていましたが、やがて私の脳内に涼やかな声が響きました。
(‥‥聞こえますか?)
(えぇ、聞こえます。よかった、ちゃんと成功していました)
「‥‥ちゃんと、成功?」
「‥‥あ」
いけない。回線を遮断するのを忘れていました。
私はしぶしぶ説明します。
「‥‥呪いと呪いは紙一重なのです‥‥」
意志と意志とをつなぐ回線を作るのは、実はそれほど難しい事ではありません。難しいのは、その線の太さと強さをきちんと設定することです。太ければ始終つながってしまい自我の境界が曖昧になりかねませんし、細すぎれば意味はありません。強さは双方向に向かう方向性と言いますか、たとえば私から一方的に情報を垂れ流す仕様になることもありえます。その場合、受け取る側にも当然意志があるものですから、それらはぶつかり合い、受け取る側の精神を圧迫し、最悪壊します。そしてそのように壊した相手を意のままに操る魔術もかつては存在したそうです。外道の業ですね。そんなものは最早のろいでしょう。
「‥‥すみません。危険性を、把握はしていました」
謝れば、王子は笑って許してくださいましたが、心に少しの壁を感じたのは確かです。笑いもひきつっていました。悪いのは全面的に私ですね。




