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第42話:戦争の終結

 妤玟が自分の方へ向かって猛スピードで駆けてくる人物に気づき、警戒して手に持った武器を構えた。


 しかし、その人物の顔をはっきりと確認すると、張り詰めていた神経がようやく緩んだ。


 妤玟は大声でその人物に呼びかけた。


「お姉ちゃん、ちょうどいいところに来てくれたよ! 奕德と叔父さんたちが、本当に大変なことになってるの!」


 それを聞いた蔡思琴は、慌てて馬から飛び降りると、全速力で李建復のもとへ駆け寄り、彼の怪我を注意深く確認し始めた。


 李建復の右腕が折れているのを見て、蔡思琴は驚きのあまり息を呑んだ。しかし、心の中の動揺を必死に抑えながら、その腕を慎重に包帯で固定した。


 続いて、彼女は足早に奕德のもとへ向かった。矢が神経を傷つけていないことを念入りに確認すると、力を込めて矢を折り、矢柄を二つに分けた。


 蔡思琴の的確かつ素早い判断力に、妤玟はすっかり驚いてしまった。感心した様子で、蔡思琴に声をかける。


「お姉ちゃん、判断力が良すぎるよ! まさか医術まで身につけていたなんて、知らなかった!」


 蔡思琴はちょうど李建復を馬の背に乗せているところだった。妤玟の称賛を聞くと、振り返って答えた。


「また機会があったら、ちゃんと教えてあげるわ! 今はとにかく、この二人を馬の背に乗せるのを手伝って!」


 妤玟は頷くと、すぐさま手を伸ばして奕德を引き起こした。


 二人が無事に馬の背に座ったことを確認すると、蔡思琴は妤玟を急かした。


「早く出発しましょう! 今のはあくまでも応急処置にすぎないわ。二人とも重傷を負っているんだから、これ以上、時間を無駄にするわけにはいかないの!」


 二人は二人を乗せた馬を引きながら、急いで野営地へと向かった。


 旭日がゆっくりと昇り始め、長く苦しい戦いが、ついに幕を下ろしたことを告げていた。


 それから、あっという間に三か月が過ぎ、彼らの生活も再び元の日常へと戻っていた。


「奕德! 奕德! 緊張してる? また風の王様に会いに行くんだよ!」


 妤玟は興奮した様子で奕德の周りを走り回りながら、そう尋ねた。


 奕德は緑色のマントを羽織ると、興奮している妤玟に落ち着いた口調で答えた。


「少しはね。でも、今回、主に呼び出されているのは李建復叔父さんだろう? 何しろ、軍を率いて勝利を収めたのは叔父さんなんだから!」


 妤玟は誇らしげに奕德に言った。


「私たちだって、かなり貢献したんだからね! きっと何かご褒美がもらえるはずだよ!」


 いつの間にか、蔡思琴が二人の背後に音もなく現れ、二人の頭を思い切り叩いた。


 妤玟は頭をぎゅっと押さえ、不満そうに声を上げた。


「痛い! お姉ちゃん、何するの!」


 蔡思琴は腕を組み、怒鳴りつけた。


「今が何時なのか、ちゃんと分かっているの? こんなところでのんびりおしゃべりしている場合じゃないでしょう! もし遅刻したら、生きているのが嫌になるほど後悔させてあげるわ!」


 妤玟は舌を出し、蔡思琴に答えた。


「分かったってば! 今すぐ出発するから!」


 やがて、三人は初めて風の王に謁見した、あの大きな扉の前にたどり着いた。


 奕德は重厚な木製の扉を見つめながら、思わず感慨にふけった。


 数か月前、自分と妤玟は戦火から逃れるために、李建復に連れられてここへやって来たのだった。


 それなのに、再びこの場所に立ったときには、すでに数え切れないほどの出来事を経験し、紛争武士に大きな打撃を与えることにまで成功していた。


 その場で殺すことこそできなかったものの、蔡思琴の推測によれば、あれほどの重傷を負った紛争武士が生き延びることは、奇跡でも起こらない限り、ほぼ不可能だという。


「そろそろ入りましょう」


 蔡思琴は二人の背中をそっと叩き、奕德を回想から引き戻した。


 妤玟に一度目を向けた後、二人は一緒に重厚な木製の扉を押し開き、風の王のもとへと歩いていった。


 そこでは、李建復が風の王の前に立っていた。その傍らには、同じ装束を身にまとった数人の人物もいた。


 彼らは奕德と妤玟の姿を目にすると、その眼差しに敬意をにじませた。


 彼らは長居することなく、風の王に恭しく一礼すると、足早に部屋を退出していった。


 数人が去ると、部屋の空気は途端にどこか気まずいものへと変わった。


 数秒後、風の王が最初に口を開き、蔡思琴に語りかけた。


「微風遊侠よ。そなたが戦場で見せた勇敢な活躍については、すでに耳にしている。本当に感服するばかりだ。そなたがいなければ、この戦いはもっと厳しいものになっていただろうな」


 蔡思琴は一礼し、恭しく答えた。


「陛下、お褒めにあずかり光栄です! すべての功績は、陛下と颶風騎士の皆様のおかげです。私はただ、皆様の命令に従って行動したにすぎません」


 風の王は笑いながら、蔡思琴に言った。


「そなたは、あの二人の小さな功労者たちを忘れているのではないか? あの二人も大きな功績を立てたと聞いているぞ」


 蔡思琴は頭を上げず、深々と頭を下げたまま答えた。


「彼らが今日、これほどの成果を上げられたのも、すべては陛下の慧眼のおかげです。ですから、陛下はすでに二人への褒賞をお考えなのだろうと思い、あえて口にしませんでした」


 風の王は手を伸ばして蔡思琴を立ち上がらせると、少し困ったような表情で言った。


「そなたは昔から変わらぬな。人を観察することにかけては、本当に長けている。確かに、褒賞はすでに用意してある。あとは、二人が受け取ってくれるかどうかだな」


 褒賞という言葉を耳にした妤玟は、慌てて前に進み出ると、風の王に向かって言った。


「心配しなくても大丈夫です! 陛下からいただけるものなら、私たちは絶対に受け取ります!」


 そう言った直後、何かを思い出したかのように、慌てて声を上げた。


「あっ、陛下!」


 風の王は思わず笑い声を漏らし、妤玟に言った。


「そなたの率直なところは実に気に入っている。これからも、その性格を大切にするとよい。さて、そろそろ褒賞の話をしようか。そなたたちは微風遊侠と共に、数か月にわたって遊侠としての訓練を受けてきたそうだな。そこで、そなたたちに与える褒賞は、正式に風の国の遊侠となる資格だ」


 それを聞いた蔡思琴は、自分の耳を疑うかのように驚き、慌てて問い返した。


「陛下、本気でおっしゃっているのですか? 二人はまだ、祝福すら授かっていない身ですよ! それなのに、これほど大きな褒賞を与えるというのは、少々手厚すぎるのではありませんか?」


 風の王は手を振り、蔡思琴にいったん話を止めるよう促した。そして、最後まで話を聞くように告げた。


「これは、あくまでも先行して与える褒賞にすぎぬ。二人が正式にその称号を受け継ぐのは、十五歳になってからでよい。それまでの間、二人が真の遊侠となれるよう、そなたにしっかりと鍛えてもらいたいのだ」


 そう言われてしまっては、蔡思琴もこれ以上、何も言うことはできなかった。彼女はただ頷き、風の王の頼みを引き受けるしかなかった。


 その後、風の王は妤玟と旅先での出来事について、和やかに話を交わした。


 太陽がちょうど頭上へ昇ろうとしていた頃、風の王はようやく手を振り、三人に退出を許した。


 重厚な扉が閉まると、蔡思琴はようやく緊張から解放されたように、大きく息を吐いた。


 李建復は笑いながら言った。


「どうやら、陛下と付き合うのは、相変わらず苦手なようだな!」


 蔡思琴はため息をついて答えた。


「そんなことはどうでもいいわ。それより、自分の心配をしたらどうなの? これからどうするつもり? 正式に引退するの?」


 李建復は、何もない自分の右手を見つめ、少し困ったように答えた。


「おそらくな。騎士の座を退いた後は、風の学院で教鞭を執ろうと思っている。老いぼれたこの身でも、まだ国のために何かできるはずだからな」


 二人の会話を興奮した様子で遮り、妤玟は蔡思琴に勢いよく尋ねた。


「それで、私たちはもう正式に遊侠になれたの? 私もついに、お姉ちゃんみたいに自分の称号を持てるようになったの?」


 それを聞いた蔡思琴は笑いながら、妤玟に答えた。


「それは、これからのあなたたちの頑張り次第ね。もし私が満足できなかったら、陛下からの申し出を断ることだってできるんだから!」


 楽しそうに笑い合う皆の姿を眺めながら、奕德はこれから始まる自分の遊侠としての生活が、一体どのようなものになるのか、思いを馳せずにはいられなかった。

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