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第29話:殺意を思う存分、咲かせよう! 2

「妤玟! 妤玟! 私の声が聞こえる?」


  蔡思琴は妤玟の両肩に手を置き、肩を軽く叩きながら呼びかけた。


  妤玟は苦しそうに目を開くと、蔡思琴へ笑いかけた。


「私、すごく頑張ったでしょ? まさかお姉ちゃんに賜福を使わせることができるなんて」


  蔡思琴は無理やり笑顔を作り、妤玟へ優しく言った。


「あなたの動きは、本当に私の想像以上だったわ。どうやら、本当に一生懸命訓練していたみたいね」


  その言葉を聞いた妤玟は、褒められたことに満足したように目を裏返し、そのまま完全に意識を失った。


「私は誰? ここはどこ?」


  一時間ほど意識を失っていた妤玟は、自分のテントの中でゆっくりと目を覚まし、困惑したように呟いた。


「妤玟、やっと目を覚ましたのね。奕德と同じように、何日も眠り続けるのかと思ったわ」


  妤玟が目を覚ましたのを見て、蔡思琴は少し驚いたように言った。


「十日も寝るなんて、さすがに長すぎるよ。私の身体は、奕德みたいにそんなに弱くないんだから!」


  妤玟は笑いながら答えた。


  そして周囲を軽く見回した妤玟は、奕德の姿が見えないことに気づき、不思議そうに尋ねた。


「奕德は? どうしてここにいないの?」


  蔡思琴はテントの外を指差し、小声で答えた。


「さっきからずっと、あなたをちゃんと休ませようとしなかったから、外へ追い出したのよ。たぶん今頃、外でこっそり聞き耳を立てているんじゃないかしら」


  妤玟はゆっくりと立ち上がり、蔡思琴に尋ねた。


「私、まだウサギを捕まえる時間には間に合うよね?」


  それを聞いた蔡思琴は驚いた。


「あなた、あんなに酷い怪我をしたばかりなのよ? 今は大人しく休みなさい!」


  しかし、妤玟は固く首を横に振った。


「私たちには、もうあまり時間が残ってないんだよ。お姉ちゃんも言ってたでしょう? 二つの国の軍隊は、もうすぐ集結を終えるって。だから、私はできるだけ早くあのウサギを捕まえないといけないの」


  蔡思琴は仕方なさそうに手を振り、無理をしすぎないように念を押した後、妤玟を外へ出した。


  妤玟がテントを開けると、そこには奕德がテントに這いつくばりながら、こっそり聞き耳を立てていた。


  まさか妤玟がこんなに早く出てくるとは思っていなかった奕德は、その場で固まってしまい、どうしていいのか分からなくなった。


  話題を逸らすため、奕德は慌てて尋ねた。


「今、本当にそんな全身傷だらけの身体で風の兎を捕まえに行くつもりなの?」


  妤玟は頷いた。


「うん。だから早く行こう! そうしないと、またあいつら洞窟の中に隠れちゃうよ」


  しかし、奕德は突然妤玟の手を掴み、意味ありげに言った。


「そんなに急がなくても大丈夫だよ! だって、僕はもう、どうすれば風の兎を捕まえられるのか思いついたから」


  妤玟は驚いたように言った。


「本当? まさか私を騙してないよね?」


  奕德は自信満々に頷くと、妤玟の耳元へ顔を近づけ、自分の作戦を伝えた。


「本当に大丈夫なの? あのウサギたち、全然怖がらない気がするんだけど」


  奕德の作戦を聞き終えた妤玟は、不安そうに尋ねた。


  奕德は力強く頷いた。


「蔡思琴おばさんが前に教えてくれた情報によると、あのウサギたちは殺気を感じ取るのがすごく得意なんだ。つまり、殺気に対する感知能力がとても鋭いってことだよ。前にあいつらが怖がらなかったのは、殺気が足りなかったからなんだ」


  妤玟は疑問そうに尋ねた。


「でも、それがあなたの作戦とどう関係するの?」


  奕德は続けた。


「つまり、あいつらを捕まえる方法は二つあるってことだよ。一つは殺気を完全に隠して、あいつらに気づかれないようにすること。そしてもう一つは、ものすごく強い殺気を放って、恐怖で考えることすらできなくさせることだよ」


  妤玟は奕德へ言った。


「なるほど。でも、この作戦の最大の問題は、私たちにはそんな強い殺気がないってことじゃない?」


  奕德は妤玟に言った。


「この作戦では、僕が強い殺気を出す必要はないんだ。それに、さっき君が蔡思琴おばさんを攻撃した瞬間、実はもう強い殺気を放つことに成功していたんだよ。ただ、君自身が気づいていなかっただけなんだ。だから、この作戦通りにやれば、きっと成功するよ」


  妤玟は驚いて尋ねた。


「本当にそう言い切れるの?」


  奕德は頷き、自信満々に答えた。


「うん。だって、君があの拳を振り抜いた時、蔡思琴おばさんは明らかに怯えた顔をしていたからね! きっと、君が突然放った殺気に驚いたんだよ。だから心配しなくていい。僕たちは今日、絶対に風の兎を捕まえられるよ」


  奕德の言葉を聞いた妤玟は、彼の手を引っ張り、平原へ向かって走り出した。


  二人は最後にもう一度作戦を確認すると、作戦を開始した。


  まず、妤玟がウサギたちを木陰へと追い込み、その間に奕德がこっそりとウサギの視界の死角へ回り込んだ。


  その時、風の兎は自分がすでに絶体絶命の状況に陥っていることなど知る由もなく、相変わらず悠々と草を食べていた。


  奕德は影の中へ潜り込むと、素早くその風の兎へ向かって走った。


  そして、ウサギから五メートルの距離まで近づいた瞬間、風の兎は奕德の予想通り、頭を上げ、警戒するように周囲を見回した。


  しかし、今回の奕德は影から飛び出して攻撃することはせず、そのまま影の中に留まりながら、風の兎へと近づいていった。


  風の兎は、奕德が放つ気配が自分へ近づいていることを察知すると、本能的に身体の周囲へ一陣の微風を呼び起こし、奕德とは反対方向へ走り出した。


  だが、風の兎が奕德にすべての注意を向けたその時、妤玟はいつの間にか、その進行方向へ回り込んでいた。


  妤玟は手にした武器を持ち上げ、先ほど自分が蔡思琴へ放った一撃を必死に思い出した。


  次の瞬間。


  妤玟の身体から凄まじい殺意が噴き出した。


  それは周囲のすべてを無差別に呑み込むほどの殺気だった。


  賜福の中にいる奕德ですら、思わず身震いしてしまうほどだった。


  その時、風の兎はすでに妤玟の殺気に怯え、回避することすら忘れていた。


  ただ真っ直ぐに、妤玟の攻撃範囲へと突っ込んでいく。


「これでもくらえぇぇぇ!!!」


  妤玟は全力で風の兎へ向かって武器を叩きつけた。


  奕德も緊張した面持ちで、妤玟の攻撃を見つめていた。


  ――ドォォォン!!!!!!


  凄まじい轟音が響き渡った後、すべては再び静寂へと戻った。


  蔡思琴は当然、その大きな音を聞きつけ、慌てて平原へ向かって走っていった。


  そして彼女がその場へ駆けつけた時。


  そこには、興奮した様子で自分の前に立ち、得意げに風の兎を手に持って振り回している二人の姿があった。

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