第一話:悪魔の子 1
陽光が眩しく輝き、穏やかで心地よい風が吹いている。辺りには、ほのかに小麦の香りが漂い、遠くからは、鳥の羽ばたく音や人々の呼び声がかすかに聞こえてくる
その声のする方向へ目を向けると、二人の十二、三歳ほどの少年がいるのが見えた。一人は赤いスポーツ刈り、もう一人は金色のトゲトゲした髪型。
その二人は。棒と石を手に、一人の十歳ほどの少年をいじめていた。
その少年は黒い短髪に、一つが黒、一つが赤という異なる色の瞳を持ち、全身にボロボロの服をまとっていた。
赤いスポーツ刈りの少年が、黒髪の少年に向かって大声で叫んだ。
「この呪われた悪魔の子、さっさと俺の前から消えろ! 昨日、二度と俺の前に現れるなって、あれほど言ってやったよな? なのにどうやら、この俺様の言ったことをまったく聞いてなかったみたいだな! どうやら、少し痛い目に遭わせてやる必要がありそうだな」
そう言うと、手にしていた長い棒を振り上げ、黒髪の少年の肩へ向かって力いっぱい振り下ろした。
少年はまさか自分が攻撃されるとは思っていなかったらしく、反応する暇すらなく、その一撃をまともに受けてしまった。
黒髪の少年は鋭い呻き声を漏らし、その身体は衝撃で後方へと吹き飛ばされた。
地面を何度も転がり、ようやくその場で止まった。
赤髪の少年は、黒髪の少年の無様な姿を見ると、大声で笑いながら、彼に向かって叫んだ。
「見たか? 俺が父さんから三年間剣を習ったのは、お前みたいな呪われた悪魔の子を倒すためなんだぜ! 大人しくそこに立って動くな。俺の修行の成果をたっぷり見せてやるよ」
そう言って、再び手にした長い棒を振り上げ、頭部へ向かって勢いよく振り下ろした。
だが、今度は黒髪の少年も身構えていた。
後ろへ跳躍し、その一撃をかわす。
しかし、彼が内心で安堵したその瞬間――赤髪の少年が手首をひねった。
棒は空中で半円を描き、少年の肩口へと鋭く突き出された。
「うわああああああ!!!!!」
その一撃は、黒髪の少年の身体へとまともに突き刺さった。
攻撃を受けた瞬間、黒髪の少年は肩口がまるで燃え上がったかのように感じた。
肩に焼けつくような激痛が走った。
彼は身体が思うように動かなくなり、そのまま地面へと真っ直ぐ膝をついた。
黒髪の少年の反応を見た赤髪の少年は、さらに遠慮なく笑い声を上げた。
そして、再び手にした長い棒を振り上げ、黒髪の少年の頭へ向かって真っ直ぐ振り下ろす。
少年は全身の痛みに耐えられず、身動きが取れなくなっていた。
ただ、その一撃が自分の目の前へ迫ってくるのを、黙って見ていることしかできなかった。
――その瞬間。
黒い影が、彼の背後から飛び出してきた。
そして、赤髪の少年の腹へ向かって、思い切り蹴りを叩き込んだ。
赤髪の少年は、突然誰かが現れて自分を攻撃するなどとはまったく思っていなかった。
身体はまるで反応できず、その一撃をまともに受けるしかなかった。
「うわああああああ!!!!!」
蹴りを受けた赤髪の少年の身体は、まるで糸の切れた凧のように後方へと吹き飛んでいった。
だが、自分を救ってくれたその黒い影は、赤髪の少年には目もくれなかった。
そのまま真っ直ぐ黒髪の少年の前まで歩いてくると、厳しい口調で尋ねた。
「大丈夫? どうしてこんなにボロボロになるまでやられてるの?」
黒髪の少年もゆっくりと顔を上げ、目の前にいる自分を救ってくれた人物を見つめた。
黒髪の少年には、彼女は自分と同じくらいの年齢に見えた。
鮮やかな赤い長髪に、整った美しい顔立ち。
顔には少しそばかすがあったが、それでも百花の中に咲く牡丹のように、自らの魅力を放っていることには何の影響もなかった。
彼女は、その澄んだ青い大きな瞳で黒髪の少年を見つめていた。
黒髪の少年は、彼女の心配そうな眼差しを見た瞬間、慌てて起き上がって礼を言おうとした。
しかし、激痛に襲われ、両足から力が抜けた。
「ぱたっ!」
そのまま再び地面へと膝をついた。
それを見た少女は、命令するような口調で黒髪の少年に言った。
「今は大人しく座って、私を見てればいいから。私がきっちりこいつらを懲らしめてあげる。」
そう言うと、少女は身体の向きを変えた。
そして、ゆっくりと立ち上がろうとしている赤髪の少年を睨みつけ、激しく怒鳴りつけた。
「私ね、弱い者いじめをするような人間が一番嫌いなの。あなたみたいな人を見ると、すごく腹が立つの。私を怒らせたらどうなるか、分かってる?」
赤髪の少年は、落ちていた長い棒を拾い上げると、負けじと赤髪の少女へ向かって怒鳴った。
「お前が町長の娘だからって、俺がお前に手加減すると思うなよ! さっきは俺が油断して、お前の攻撃を食らっただけだ。今度はそうはいかないぞ。これからお前に、『怖い』っていう二文字がどういう意味なのか、たっぷり教えてやるよ!」
そして、後ろにいた金髪の少年へ向かって言った。
「俺たち二人で行くぞ! 二人がかりなら、こいつだってどうにかできるはずだ!」
それを聞いた少女は、軽蔑するように唾を吐いた。
そして赤髪の少年に指を突きつけ、叫んだ。
「やってみればいいじゃん! 泣いてママに助けを求めることになっても知らないからね!」
そう言うと、少女はそれ以上何も言わず、二人に向かってまっすぐ駆け出した。
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