夜
健全 短編 夜
空は暗く、虫の鳴く静かな夜
2人はいつものベットの上で身を寄せ合いながら眠っている
『…すぅ………ん……』寝息が響く部屋の中でヴォルフは目を擦りながら、体を起こした
『……ん……のどがかわいたな…みず…のもう……』
ベットから降り、そのままテーブルにある水筒を取るが、中身はすでになかった様子
『………あ…そういえば……中身なかったな…』
そのまま水筒を持ったまま立っているが、少し目が覚めてしまったため、このままキッチンまで行き、水筒に水を入れる事にした
水が入っているボトルから水筒へと注いだあと、喉を潤したあとは部屋に戻ったが
どうやら目が覚めてしまったようで、ベットに入った後でも眠れない様子だ
ヴォルフ「……う……寝れない…どうしよう…」
明日は予定がないが、それでも時計はもう4時を回っている
もう無理に寝る事を諦め、愛する番の寝顔を見ながら自然に眠気がくるのを待った
ヴォルフ「ノワの顔…かわいい…昔から寝顔は変わらないな………昔……僕が寝れない時は…手を繋いで眠るまで抱きしめてくれたよね…」
まだ13歳の頃、ヴォルフは雷が苦手で大雨の日の夜は眠れなかった事が多かった
過去回想
大粒の雨が降る夜、外は雷が鳴り光と共に大きな音が鳴っている
オオカミ科の獣人はこのような大きな音には敏感で、特に子供は怖がる事が多い
そのためまだ13歳のヴォルフもノワールも雷は怖く、2人はベットの上で座りながら体を丸めている
『ノワール…雷…怖い…』『大丈夫ですよ…私がいますから…』
『でも…ひゃっ…ノワール…ぎゅってして…』
ゴロゴロと鳴り響く雷、白い尻尾を巻きつけ耳をぺたんとひっつけ、小刻みに震えてしまっている
ノワールはそっと抱きしめてあげ、安心させてあげていた
『ヴォルフ様…これで怖くなくなりましたか…?』
『うん…でもまだ少し怖い…あ、ノワールも…雷怖いの…?』
黒い尻尾を巻きつけ、耳を押し倒しながら少しブルブルと震えていた
『いえ…私は…ひゃっ…こんなの…怖くないです…』
ノワールもまだ13歳くらいの子供、当然雷も怖い
ただ自分も怖がるとヴォルフにも恐怖を与えてしまうと思い、平気なふりをしたが
ヴォルフには怖がっている事も分かり、自分にしてくれたように抱きしめてあげた
ヴォルフ「やっぱりノワールも怖いんでしょ…?…僕がこうしてあげる…」
ノワール「ヴォルフ様…私は側近ですので…」
ヴォルフ「側近とか関係ないよ…僕はノワールの事…友達だし…大切な…ヒトだから…様もつけなくていい…」
ノワールは友達、でもそれ以上の感情が湧いてきている
特別がいい、自分だけを見てほしい、友達以上の何かになりたい
これが恋なのか、それともただの友情なのか、まだこの感情がなんなのかはわからなかった
ノワール「友達…私もヴォルフ様…いやヴォルフは友達で…大切な主人です…」
ヴォルフ「うん…僕とノワールは友達…しばらくこうしていい…?」
ノワール「いいですよ…眠くなるまでずっと…こうしてあげます…」
そのまま2人は同じベットで眠っていった
この頃からヴォルフは周りから、番など無縁な存在だと、言われ続けてきた
他の同世代の王族には将来の番候補がいた
それは血統を繋ぐため、そして両者が愛し合う、狼獣人としての人生を歩むためにも
側室制度がない、いや1人の番と共に愛を育み、生涯を寄り添う狼獣人の王族だからこその、幼い頃から親睦を深め、そして成獣になり、やがて番になっていく
もし相手が見つからなければ、成獣の時に縁談や出会いなどもあり、将来的にどの王族も番がいる事になる
これは王族に限らず、オオカミ科獣人は誰しもが番を持ち、愛に生きると言われる
ただヴォルフだけは候補すらいなかった、王家の血筋を持つとはいえ、王と血が繋がっていない
紅い目特有の、その魔力の多さゆえの不安定
それに加えて当時の王族はそのような性格で、見た目の事や、魔力不安定の事もあり、どうせすぐに尽きる命だろうと
誰も番になる獣人はいない、いや番などいらないだろうという理由で、将来の相手も、ましてや友達すらもいなかった
でもヴォルフはこの歳でもそんなのは気にしなかった
異性を好きになる事も、魅力も何も感じなかった
むしろ好都合だった、自分に好意を向ける獣人がいなくてよかったと、ポジティブに捉えていた
ノワールさえいればいい、それだけで幸せだった
ずっと死ぬまでそばにいたいと感じていた
いつかの、将来の番はノワールがいいと、でもそれを本人に言うのは恥ずかしくて
それに加え、あの頃の国は、同性同士の番が居ても、世間ではまだ理解がされづらかった
もしノワールが自分の事が好きじゃなかったら、変だと言われて断られたらと、この気持ちが本当に恋なのかもわからなくて、怖くて言えなかった
そのため16歳のあの時の、告白の時までこの気持ちは伝えなかった
そんな昔のことを思い出しながら、時計を見上げ時間を確認した
ヴォルフ「もう5時…早いな…どうせならこのまま起きようかな…あ…」
横で眠っていたノワールがゴソゴソと動き、目を開けた
ノワール「……ん…?…ゔぉる…?…ずいぶんと…はやおきだな…」
寝ぼけながらも、目を擦り大好きな番に抱きついた
ヴォルフ「ちょっと目が覚めちゃったから…もうこのまま起きようかなって思っただけだから…ノワはまだ寝てていいよ…」顔を見つめ頭を撫でながら
ノワール「いや…おれも…もう起きるよ…ヴォル…?…俺の顔に何かついているか?」
ヴォルフ「ううん…ノワの顔を見ながら、昔の事思い出していただけ…ノワが僕を抱きしめて一緒に眠ってくれた日の事を…」目を細めながら
ノワール「昔の…?…いつの頃だ…?…気になるから教えてくれ…」
体を起こしそのままヴォルフを抱きしめ、どんな事を思い出していたのかを教えてほしいと伝えた
白い顔を赤くし、恥ずかしがりながらもまだ13歳だった頃の事を思い出していたと話した
ヴォルフ「いつの頃って…13歳の…僕が眠れなくて…ノワと一緒に寝た日…」耳を下げながら
ノワールはすぐにあの日の事だと、思い出し、クスッと笑いながら思い出話をした
ノワール「あぁ、あの日か…!…確かヴォルが雷が怖くて、抱きしめてほしいって…懐かしいな…」
ヴォルフ「子供だったから…仕方ないじゃん…でも…ノワに抱きしめてもらったの嬉しかった…ドキドキもしたし…」
ノワール「俺も…あの頃は雷は怖かったし、子供なんてそういうものだよ…ドキドキ…もしかしてヴォルはあの時から…俺の事好きだった…?」
ヴォルフ「うん…好きだった…死ぬまでずっとそばにいたいって思うくらい…大好きで…大切だった…」
ノワール「そうか…実は俺も…あの時からヴォルの事大好きだった…どんな時でもそばにいたいって思ってた…」
あの頃も同じ気持ちだった
ノワールも異性を好きになる感情もなく、ただずっとあの頃からヴォルフの事だけが大好きで、そばにいたいと、特別になりたいと、友達でも側近でもない関係になりたいと、そう思っていた
でもただの側近で、ましてや野良出身でメスでハーフの自分がヴォルフと番になれないと、あの頃から感じており、告白もできなかった
ヴォルフは顔をノワールの胸に埋め、そっとつぶやいた
ヴォルフ「ノワも同じだったんだ…僕…この気持ちが恋だって気づいたの15歳くらいの時で…それで…気持ちを伝えたくてあの時に…勇気を持って告白した…」
ノワール「告白…あの時、すごく嬉しかったよ…ヴォルも同じ気持ちなんだって…だから…付き合って…あの日の夜に番になった…」
ヴォルフ「うん…番になった日もよく覚えている…ノワ…大好き…初めて会った…あの日からずっと大好き…」
ノワール「俺も…大好き…初めて会ったあの日、名前をつけてくれた日からずっと大好きで…ヴォルの一番になりたかった…」
ヴォルフ「僕も…ノワの一番になりたかった…今はもう…それ以上の関係だけど、それでも大好きで…ずっと離れたくない気持ちは変わらない…」
ノワール「うん…俺も気持ちは変わらないよ………ん…すこし眠くなってきたな…」あくびをしながら
ヴォルフ「朝早く起きたし…二度寝してもいいんじゃない…?…っ…僕も…眠くなってきた…」大きなあくびをしながら
ノワール「二度寝……ヴォルも…一緒に二度寝しよう…」
ヴォルフを抱きしめたまま横になり、愛しき番の顔を見ながら微笑んだ
ヴォルフ「ん…僕も…二度寝…する…のわ…おやすみ…」
ノワール「うん…おやすみ…ゔぉる…すぅ……」
2人は体温を共有し、このまま二度寝をした
起きた頃にはもうお昼前になっており、2人は少し慌てながらも支度を済ませ
普段通りの休日を楽しんだ
ヴォルフとノワールはあの時から、初めて会った時から大好きだと、心のどこかで感じていた
最初は友情なのか、恋心なのかもわからなかったが
それは時間が経つごとにつれて、これが恋だと確信した
オオカミ科獣人の番は両者が共に愛し合い、心から求めなければ成立はしない
あの時、ヴォルフの告白はいわば求愛のようなものだ
愛の言葉を伝えた後は、2人は抱きしめ合い、手を繋ぎ、尻尾も絡ませていた、それは恋人として受け入れたという事だ
2人はやがて大人になり、番になれる歳になったが、王族からは婚姻を断られ、追放をすると脅しもかけられていた
でもそんな事を言われても、愛は変わらず、命が尽きる日まで共に過ごそうと、お互い誓っていた
そしてあの日、逃亡を決意し、2人は城を出て、あの場所で番になる事を心に刻み、初めての夜を、愛を深めた
あの誓いもやがて、永遠の命を共に過ごす事を誓うという事に変わっていき、200年以上経った今も共に永遠という、幸せな人生を歩んでいる




