第47話:35階層・反転重力
天井に、立っていた。
三十五階層。階段を登り切った瞬間——体が浮いた。
「えっ——うわああ!」
翔が叫ぶ。
体が逆さまになる。
天井に足がつく。
いや——天井が、床になっている。
重力が、反転していた。
「え、え、え?」
葵が慌てて杖にしがみつく。
「何これ...頭に血が上る...」
「逆さまじゃないわ。重力の方向が変わってるだけ」
美咲が冷静に分析する。
確かに、体感としては普通に立っている感覚だ。
ただ——見える景色が逆さまになっている。
元の床が頭上にあり、天井だったものが足元にある。
「気持ち悪い...」
翔が頭を振る。
「慣れろ。ここは、こういう場所だ」
前に進む。
通路を歩いていると——敵が現れた。
壁から這い出す、蜘蛛のような魔物。
【重力蜘蛛 Lv24】×5
「来るぞ!」
蜘蛛たちは壁を自在に移動する。上も下も関係ない。
翔が槍を突くが、蜘蛛が天井に逃げる。
いや、天井は今は足元だ。混乱する。
「くそ、上下が分かんねぇ!」
翔が体勢を崩す。
葵が氷を放つが、反転した重力で軌道がズレる。
「当たらない...!」
通常の戦闘と、何もかも違う。
「美咲、援護!」
「やってる!」
美咲の矢も、微妙に軌道が狂っている。
この空間に慣れていない。
俺も同じだ。
剣を振るたびに、体が浮く感覚がある。
——だが。
ふと、思いついた。
「回転斬」。
体を回転させながら斬る技。
通常は水平方向の回転。
だが——重力が反転した空間なら。
三次元で回転できる。
「やってみるか」
蜘蛛が壁から飛びかかってくる。
「『回転斬』!」
体を縦に回転させる。
反転した重力が、回転に勢いを加える。
通常では届かない角度からの斬撃。
ズバッ!
蜘蛛が、真っ二つになった。
「今の...!」
翔が目を見開く。
「空中でそんな動きできるのか!」
できた。
反転重力と回転斬の組み合わせ。
もう一体。
「『回転斬』!」
今度は斜めに回転する。
ズバッ!ズバッ!
二体を一気に斬り落とす。
残り二体。
「翔、上に蹴り飛ばせ!」
「おう!」
翔が槍で蜘蛛を弾き上げる——いや、反転重力だから弾き下ろす。
空中に浮いた蜘蛛を——。
「『回転斬』!」
三次元の斬撃が、残りを一掃した。
「...すごい」
葵が息を呑む。
「蓮さん、もはや人間じゃないですね」
「ほめてるのか、それ」
「ほめてます」
葵が苦笑する。
階層をクリアし、次の階段に辿り着く。
階段をくぐった瞬間、重力が元に戻った。
ふわっ、と全員が床に着地する。
「もう二度とこんな階層は嫌だ」
翔が笑う。
「同感ですね」
葵も笑った。
俺は、手のひらを見た。
三次元の回転斬。
新しい武器が、また一つ増えた。
文字数:約2,500字
到達階層:35階層クリア
備考:重力反転階層。三次元での回転斬を実戦で完成。通常では届かない角度からの攻撃が可能に




