プロローグ:終わりなき連環
剣が、空間を裂いた。
「単調斬り──疾風斬──回転斬──崩壊斬!」
四つのスキルが、途切れることなく連鎖する。一撃が終わる前に次の一撃が始まり、その隙間を別の斬撃が埋める。もはや個別の技ではない。一つの巨大な破壊の奔流だ。
これが、俺の戦い方。
これが、『反復の極意』が生み出す、無限コンボ。
目の前にいるのは──巨人。
いや、巨人などという生易しいものではない。全身が漆黒の結晶で覆われ、その体躯は十メートルを超える。四本の腕にはそれぞれ異なる武器──斧、槍、剣、鎚。一つ一つが建物を破壊できる質量と力を持つ。
【階層守護者:『四腕の破壊神』】
「オオオオオオオッ!」
破壊神が咆哮する。その声だけで、空気が爆発したように弾ける。
上段の右腕──巨大な斧が、俺めがけて振り下ろされる。
速い。この図体で、音速を超える速度。
「っ!」
横に跳ぶ。斧が地面に激突し、石畳が粉砕される。衝撃波が俺の体を吹き飛ばしそうになる。
着地と同時に、反撃。
「単調斬り!」
三連撃が破壊神の左脚を斬りつける。
ガキン、ガキン、ガキン──!
「硬っ...!」
結晶の装甲に弾かれる。傷一つつかない。
その隙に、下段の左腕──槍が突き出される。
「くそっ!」
剣で受け止める。ガギィン!金属音と共に、俺の体が後方へ滑る。腕が痺れる。
【反復回数:8,234回】
まだ足りない。まだこの程度じゃ、こいつは倒せない。
「なら──もっと繋げる!」
地面を蹴り、破壊神に接近する。
「単調斬り──」
三連撃。
「疾風斬──」
五連撃の高速斬り。
「回転斬──」
体を回転させながらの全方位攻撃。
「崩壊斬──」
装甲を砕くための重い一撃。
四つのスキルが、一秒の間に全て発動する。合計十四回の斬撃。
それでも──。
「まだ、倒れないか...!」
破壊神の装甲に、ようやく亀裂が入った。でも、それだけだ。
「ガアアアアッ!」
破壊神が四本の腕を同時に振るう。
斧、槍、剣、鎚──四つの攻撃が、四方向から俺を襲う。
避けられない!
「ッ──!」
剣を構え、全ての攻撃を受け止めようとする。
ガギィン!ガギャァン!ゴギィッ!
衝撃が、衝撃が、衝撃が──連続で俺の体を貫く。
「がっ...あっ...!」
剣が砕けそうだ。腕の骨が軋む。
全身から血が噴き出す。肋骨が折れる音。内臓が潰れる感覚。
「ぐっ...はっ...!」
膝が、地面につく。
視界が揺れる。立っていられない。
破壊神が、ゆっくりと四本の武器を振り上げる。
次の一撃で、俺は死ぬ。
それが、分かる。
「くそ...っ...」
でも、止まれない。
止まったら──。
「遥斗...」
弟の顔が浮かぶ。
まだ小学生の遥斗。両親が事故で死んでから、俺だけが頼りの弟。
「兄ちゃん、いつ帰ってくるの?」
いつもそう聞いてくれた。
俺がいなくなったら、遥斗はどうなる?
親戚の家に引き取られて、寂しい思いをするのか?
「それは...嫌だ...」
俺がいなきゃ、ダメなんだ。
遥斗を、一人にはできない。
「絶対に...帰らなきゃ...!」
震える脚に力を込める。
立ち上がる。剣を、握り直す。
「まだだ...まだ終わってない...!」
破壊神の四本の腕が、今にも振り下ろされようとしている。
【反復回数:9,000回突破】
体が熱い。限界を超えている。
でも──。n
「遥斗が待ってるんだ...!」
剣を、構える。
「俺は...帰らなきゃいけないんだ!」
破壊神が、四本の腕を振り下ろす。
俺も、剣を振るう。
「だから──ここで、倒れるわけにはいかない!」
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