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悪役令嬢(男)と攻略対象(女)、理不尽な乙女ゲームの世界を変える  作者: 文字書きA


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115/116

第115話:結婚前日

ジュリアが頬(ほお)を赤くする。唇(くちびる)が触れたのは一瞬だけだったが、彼女はそのまま目を閉じて、彼に身を任せた。クリスの腕(うで)が、ジュリアの体に回される。


(……ああ。幸せだな)


心から、ジュリアは思う。人肌(ひとはだ)の温かさが伝わってくる。クリスの胸に耳を寄せると、彼の心臓の音が聞こえた。


(ドキドキしてる)


2人は抱きあったまま、しばらく過ごす。部屋のドアが、外から開けられた。


「終わった、か……?」


入ってきたのはシリルだった。彼は抱きあう2人を目にして、その場で固まる。


「ああ、ごめんねシリル。ええと……」


「いや、オレのほうが悪かった。先にノックをするべきだったな」


クリスの言葉を遮(さえぎ)って、シリルは言った。


「オレはここにいてもいいか?」


「……ええ、どうぞ」


ジュリアはため息をつきながら返す。クリスが穏やかな笑みを浮かべた。シリルは部屋にすべりこんで、ドアを閉める。


「結婚式は明後日か。楽しみだね。……シリルも参列してくれるの?」


「いや、オレは裏で警備する。メルヴィンはおそらく、式をつぶすために刺客(しかく)を雇うだろうからな。お前たちが無事に式を終えられるように、助けてやるよ」


彼は普段と変わらない調子で話している。クリスはジュリアの背をなでて、ふわりと笑った。


「ありがとう。じゃあ、よろしくね」


「……あ、ああ」


にこやかに笑う彼を見て、シリルはサッと目をそらす。ジュリアは彼にジト目を向けた。


「お前はまだ、こいつのことが好きなのか」


「当たり前だろう」


シリルは彼女のほうを見て、すぐに答える。


「お前と同じように、本気で愛しているさ。ただ、オレはお前のように、クリスと並ぶことができない。それは変えられないことだ」


真剣な目をして、彼は告(つ)げる。


「だからオレは、お前に任せると決めた。……ただ、その人はオレの大切な兄さんで、大好きな女でもあるからな。できる範囲で守らせてもらう」


クリスが戸惑(とまど)い、目を伏せた。ジュリアは深いため息をつく。


「……しかたがないな。お前はクリスの……日奈(ひな)の本質を、先に見抜いた男だ」


結婚しても安心はできない。クリスティアンは、ハッピーエンドを目指している。


(こいつが……日奈が本当の意味で恋愛のことを考えられるようになるのは、エンディング後だ)


それが男たちの共通認識だった。幸せになった上で、いずれは自分を選ばせる。


(俺は絶対に諦めねえからな)


(上等(じょうとう)だ)


2人はクリスに気づかれないように、相手をにらむ。クリスは1人、首をかしげて彼らを見ていた。

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