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週一度コンビニバイトで逢う二人  作者: おとさらおろち
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第30話 ムシが嫌いなかわいい佐々木(中原)

「きゃーーー!!」


 突然レジに立っていた佐々木が大声をあげたのでびっくりした。


「どっ、どうしたの、佐々木!?」


「ク、ク、クモクモクモ!! でっかいクモがレジの上を歩いてるぅぅぅ!!」


 見ると、確かに真っ黒い大きなクモがのそのそと歩いている。


「な、な、中原、どうにかして! クモがあたしの方を見てるぅぅぅ!!」


 わたしは急いで佐々木のもとへ駆け寄り、近くにあったコピー用紙を丸めて、


「ていっ!」


 と一発、クモを仕留めた。


「す、す、捨てて捨てて、早く捨ててぇぇぇ!!」


 佐々木はまだ怖がっている。


「だいじょうぶだいじょうぶ、もう捨てたから……」


 佐々木は肩で荒い息をしている。


「佐々木?」


「ご、ごめん、取り乱した……」


「それにしても、きゃーって……。佐々木、あんな声出すんだ」


 佐々木は顔を赤らめた。


「だって、怖いだろ、虫。嫌だろ」


「いや、確かに嫌だけど、そこまで驚くことないんじゃない?」


「クモだぞクモ。糸かけられたら、粘っこくってくっつくし、もし体の上をはったら、ムニョムニョって、変な感覚になるだろ」


「確かに、そうだけど……」


「クモがいるだけで怖いだろ。夜中に見かけたらもう眠れないだろ。よく、夜のクモは親と思ってでも殺せって言うだろ。クモの糸でグルグル巻きにされて食べられちゃうだろ!!」


 取り乱した、と自分で言っておきながら、佐々木はまだ興奮している。


 クモの糸でグルグル巻きにされるとは、子どもみたいなことを言うものだ。


 ちょっと、佐々木が大きなクモにグルグル巻きにされる様子を思い浮かべてしまった。全身をクモの糸で巻かれてしまって、身動きが出来ず、片目を閉じて、辛そうな体で涙目で必死にもがこうとしながら、助けを求める様子……。なかなかエロイ……。


 普段、キリっとして、姉御肌の雰囲気のある佐々木が弱っている姿。なんだか、想像すると、ドキドキしてきてしまった。


「中原、なにぼーっとしてんだよ」


 佐々木に言われて、我に返った。


「い、いや、別にー」


 わたしは、佐々木を使ったちょっとエッチな想像をしてしまったことを悟られないように、目を横にそらした。


「あたし、昔から虫ってだめなんだよね……。弟なんて、虫が好きで、昔はよくカブトムシとか捕まえてきてたけど、見るだけでダメだった」


「カブトムシも?」


「もう、虫という虫は全部ダメだ……」


 なかなか、意外だ。でも、なんだかかわいらしい、と思ってしまった。


「それにしても、中原は虫、だいじょうぶなんだな」


「まあ、嫌ではあるけど、佐々木ほどダメなわけでは……」


「これから暖かくなったら、虫がどんどん出てくるんだろうなー」


「虫と言えばさ、うち仏壇屋でしょ。毎年夏が終わった頃に燻蒸してるよ」


「燻蒸?」


「うん。ガス薬品を使うってムシを殺すの。仏壇って木でできているから、木を食べるムシがついたら大変だからさー」


「いいな! それ、うちのコンビニでもやろう!」


「いや、時間かかるし。値段も高いから無理だろうけど」


「そっかー。ムシなんか、この世からいなくなればいいのになー」


「佐々木、生物多様性に喧嘩売ってるよ……。でも、今年からちょっとムシの駆除は難しくなったみたいだよ」


「どういうこと?」


「今まで主流だったガスが、環境を汚染するってことで、生産できなくなったの。このガスは強力で、ムシの卵まで殺すことができたんだけど、これからは炭酸ガスに切り替えないといけなくて、卵を殺すまでは効果が出ないんだって」


「マジっ! それじゃあ、これまで燻蒸で死んでいた卵がかえっちゃうってこと!! 自然界に、あのにっくき虫たちが大量に放出されるってこと! 世界の危機じゃん!!」


「いや、それほど大事にはならないと思うけど……。でも、うちみたいな木を扱う事業者はたいへんだよねー」


 とそこへ、珍しく店長が顔を出した。


「二人ともお疲れさまー」


「店長、どうしたんですか?」


「いやーね。これからの時代は、穀物を作るエネルギーが枯渇していくだろうって言われてるの知ってる?」


「なんか、ニュースでやってますよね」


「そこで、昆虫食を使ったお菓子を販売してみてはどうかって、本社が言っているんだよ」


 店長は、持っていた資料を広げる。


 そこには、コオロギが一匹丸ごと、せんべいやクッキーに取り込まれた写真が写っていた。


「さすがに抵抗有るよねー。二人はどう思う……って、佐々木さん?」


 佐々木は、口から魂が抜けて、灰になっていた。


「アハハ、佐々木には無理みたいです」


 うーん、やっぱり、女子高生には受けないかー。まあ、どうなるかは、本社次第なんだけどね。


 佐々木は、あまりの衝撃にポカンとしている。


 でも、今日は佐々木の珍しい一面が見ることができた。まさか、こんな弱点があったなんて、なかなかかわいらしい。


 わたしは、もう一度ムシに襲われる佐々木を想像してしまった。


 大型のイモムシのようなムシに、制服姿の佐々木が粘液をかけられ、服が溶かされている。戦意を喪失した佐々木は地べたに女の子座りをしてうずくまり、両手を前方の地面につけて力も抜けてしまっている。ヒックヒックと涙を流してしゃくりあげている。


「も、もう、やめて……」


 と、声にならないような声を漏らし、こちらの意思が通じる相手でもないと分かりながらも、必死に懇願している。


 そこで、


「中原、助けて……」


 と、ぼそっとつぶやく佐々木を想像する。


 おもわず、自分の想像なのだが、ドキっとする。こんな佐々木、かわいすぎる……。


「中原?」


「うっ」


 我に返ると、佐々木が、わたしの顔を不思議そうにのぞきこんでいる。


「どうしたの? ぼけっとして」


「いやいやいや、な、なんでもないよー」


 しかし、あまりにエッチな想像をしてしまったので、わたしは顔が赤くなってしまった。


 そこに、佐々木がぐいっと顔を近づける。


「熱でもあるの?」


「ないないない、ぜんぜん元気だよー」


 わたしには、もう今の気持ちを隠せる余裕がなかった。


「あっ、お客さんもいないし、バックヤードでペットボトルの補充してくるねー」


 わたしは、なんとかその場から逃れられた。


 それにしても、仲良しの佐々木でこんなエッチな想像をしてしまうとは……。


 でも、やはり佐々木はかわいい。今日くらい、いいよね、などと自分で自分を納得させる。


 そ、そうだよ。ムシをこわがる佐々木が悪いんだよ……。


 意識を強く持たないと、またムシに襲われる佐々木という、エッチな想像をしてしまいそうだ……。

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