第12話 冷え込んだ北海道
また、誰もいないのにコンビニの自動ドアが開く。冷たい風が入ってくる。
「うー、佐々木~」
「なんだー中原ー」
「ついに冷え込んできちゃったね~。札幌って、冷えてくると風つよくなるよねー」
「そういう場所だからなー。北海道仕様の強風で反応しない自動ドアとかほしいよな」
「ついこの前まで真夏だったのに、今度は冬かよ~。秋がなくなっちゃったよ~」
「中原、寒がりなんだな」
「もう日本には秋がなくなっちゃうよー。秋の味覚をおいしく食べられる季節がなくなっちゃうよー」
「オータムフェストの最中はほとんど夏みたいな感じだったからなー」
「体の芯から冷えちゃったなー。まだ寒さに全然体が対応してないのに、一日、家に帰るまでずっと寒いの」
「学校は、暖房きいてないのかよ。お嬢さま学校だろ」
「それが、歴史ある木造校舎で寒いったらないの。暖房も、温度上げちゃダメだって言われて。今時木造だよ。お嬢様学校って、もっと金あるはずでしょ。暖房も使うべき時には使わないといけないじゃん」
「マジか~」
「佐々木の学校、十三条高校はどうなのさ」
「あたしの学校は地味に古いせいか、めちゃくちゃ暑いよ。セントラルヒーティングってやつ? あの、白い金属熱したような」
「分かるー。わたしも、中学校の時それだったわー」
「でも、暑すぎて窓開けたら怒られるんだよな」
「そうそう。でも、暑すぎて眠くなるわ具合が悪くなるわで、あれも地獄なんだよねー」
「ちなみに、あたしのところ、まだエアコン入ってないから、夏も地獄だったよ」
「えぇ、エアコンなしかー」
「北海道って、冬だけ乗り切ればいいって時代じゃなくなってるのにな」
「冬も厳しいし、夏も厳しい。なんか、いつも試されている大地だよね……」
「ああ、試されてるな……なぜか」
そこへ、工事現場の作業員といった客が大勢で入ってきた。
「あーさむいさむい。定員さん、ザンギ2つ」
「ホットのかつ丼、まだある?」
「シシャモ、レンジで温めて」
突然の来客に、中原と佐々木はせわしなく客の対応をしていく。
「ありがとうございましたー、次どうぞー」
「おにぎりはあたためますか? これ冷たいコーヒーですけどいいですか? あっちの棚のコーヒーは温めてますよ」
ようやくまた、二人に戻った。
「食べ物、たくさん買っていったね」
「ああ」
とそこへ、佐々木のお腹がぐぅー、っとなった。
「ムフフー」
「なっ、なんだよ」
「佐々木さんー、今のお客さんのごはんにつられましたねー」
「うっ、うるさいな」
「でも、寒いのも、なんかいいよね。おいしいもの、たくさんあるし」
「ああ、そうだな。寒さが、おいしくしてくれるってのもあるよな」
「仕事終わったら、わたしもザンギ食べよう」
「あたしも、シシャモ食べようかな」




