第13話 冬のアイス
今日はよく客がくる。主婦、スーツに身をくるんだサラリーマン。道路工事の作業員。
そして、きまって、買っていくものがある。
「ねえ佐々木。またアイス売れたね」
「そうだな中原。みんな、ついでに必ずアイス買っていくよな」
「冬にアイスが売れる地域って、北海道くらいって知ってた?」
「ああ。知ってた。結構常識じゃん?」
「うそ、マジ」
「みんな知ってんじゃね?」
「こう暖房入れてると、のど乾くから、アイスほしくなるんだよね」
「そうだな。家の中でも、今暖房入れると、すぐに暑くなるから、やっぱりアイスが必需品になるよな」
「冬はなんと言っても、ソーダーのついたクリームアイスだよね」
「はぁ、冬と言えば大福に囲まれたバニラアイスだろ?」
「えぇ、絶対ソーダーだよ」
「いや、冬は大福系アイスだろ」
「佐々木は分かってないなぁ。ソーダー系のアイスはシュワシュワするから、乾燥したノドにもいいんだよ。大福なんて食べたら、乾燥も相俟って、むせちゃうよ」
「ああん。ソーダーこそ夏仕様だろ。真夏思い浮かべて、寒いのか暑いのか分からなくなるじゃん。それよりも断然、冬は大福系だろ。雪を見ながら食べると風情があるだろ」
「風情とか関係ないですぅー。わたしは効率を求めるんですぅー」
「効率って、それは普通の食事はそれでいいかもしれないけど、アイスは嗜好品だろ。風情を求めないとだめだろ」
「北海道で食べるアイスは体を守るものなんですぅー。効率を求めないとダメなんですぅー」
「効率ばかりを求めた結果、今の日本は立て直し不可能な状況なんじゃん」
「でたー、話しのすりかえー。詭弁使いー」
「今日の中原、むかつくな」
「よし、じゃあ、お客さんがソーダー系のアイス買うか大福系のアイス買うかで勝負しよう」
「負けた方はアイスおごりな。しかも、相手の主張するアイスも自分用に買って食べること」
「いいよ。佐々木の口の中、ソーダーのシュワシュワで爆発させてやる」
「言ってろ」
客が来た。
しばらく日用品を探している。
お目当ての商品を手に取り、レジにやってこようとしたその時、ふと何か思いついたように、冷凍コーナーに向かう。
「さあ、どんなアイスを買うのかな。きっとシュワシュワソーダ系だよ」
「いや、きっと大福系だな」
客が、中原のレジに商品を置く。
支払いを終えた客が帰っていった。
「ん、中原?」
中原が佐々木の方をゆっくりと向く。
「スイカのアイスだった……」
バイトの時間が終えたコンビニの事務室。
「暖房きいてるし、スイカのアイスが体にしみておいしいよね」
「そうだなー。期間限定のあまりもので、最後の二つだったからちょうどよかったな」
「これはこれで良かったのかな」
「痛み分けだなー」
チラチラと雪が降っている中、最後のスイカアイスが溶けていった。




