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輝け! ヤバ高キュイジーヌ  作者: しーなもん
第1章:創設ヤバ高調理部
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第11話『5人の調理部』

 昼休憩になり、弁当を食い終わった俺は、1年4組の教室を訪ねた。

 村岡に会うためではない。

 杉浦に会うためだ。

 教室に入ると、ちょうど杉浦も昼飯を食べ終えたようだったので、俺は声をかけた。


「杉浦、ちょっと話したいことがあるから、こっちに来てくれるか?」


 そう言って、人気ひとけのない階段の踊り場へ連れ出す。


「えーっと、ごめん、君の名前をまだ聞いてなかったね」


 杉浦にそう言われ、そういえばまだ名乗ってなかったことに気付く。


「1年2組の麦野だ」


「そっか。それで麦野君、一体何の用?」


 俺の用は、もちろん勧誘だ。

 だけど、ストレートに入部してくれと頼んでも、断られるだけだろう。

 どうにかして、杉浦の興味を引かなきゃいけない。


「お前がこの前教えてくれた、焼きそばにちくわを入れるやつ、あれすげぇ旨かった」


 そう言うと、杉浦は笑った。


「でしょ? 僕もあれ好きなんだ」


「それでさ、思ったんだ。お前の料理の知識、もっと役に立てなきゃ勿体ねえって」


 そう言うと杉浦は笑うのを止め、不思議そうに首を傾げた。


「勿体ないって……。料理の知識なんて、自分が美味しく食べれたらそれで充分じゃない?」


 ど正論である。

 ましてや杉浦は一人暮らしだ。

 自分一人だけが美味しく食べれれば、それはもう充分知識として役に立ったと言える。


「そうなんだけどよ、もっと他にも活躍の場があるっていうか……」


「もしかして、また部活の勧誘?」


 怪訝にこちらを見て杉浦は続けた。


「だったら、この前断ったよね。何度誘われても、考えは変わらないよ」


 そう言って帰ろうとする杉浦を、慌てて止める。


「あー、ちょ、ちょっと待ってくれ。お前さ、金ねえって言ってたじゃん。バイトもしてねえんだろ?」


「うん、まあ。親の少ない仕送りだけでやっていってるけど……」


「だったらさあ、いい話があんだけど」


 わざと小声になる。

 小声はパフォーマンスだ。

 杉浦に、これは旨い話だと思わせることができたら、俺の勝ち。

 俺は小声で続けた。


「生徒会顧問の高橋先生って知ってるか?」


「うん。確か、3年の体育の先生だよね」


「そう。その先生が調理部の顧問になったんだけどよ、顧問の条件として、先生の晩飯を作らなきゃいけないんだ」


「えっ、何その条件……」


「もちろん、先生の金で食材は買う。それでよ、食材をちょっと安く仕入れて多めに作っちまえば、自分の分くらい余分に作れると思わねえか?」


「それって……」


 俺の言葉に、目を丸くする杉浦。

 俺は、杉浦の耳元でささやいた。


「タダ飯が食えるんだよ、調理部に入ったら」


 実際には、俺たち部員全員が食べる分を先生から貰う食費だけで賄うのは不可能だ。

 部員もそれなりに部費を払うことになるだろう。

 だけど、その事は敢えて言わない。

 後々になって杉浦が部費を払えないと言ってくる可能性もあるが、それは杉浦が部に入った後に皆でどうするか考えればいい。

 とにかく今は、杉浦に入部すると言わせることが重要だ。


「そ、その話は本当かい?」


 動揺を隠しきれない杉浦に、俺はニヤリと笑って言ってやった。


「ああ。先生の金で、タダ飯食おうぜ」


「ちょ、ちょっと考えさして……」


 そう言って、杉浦は教室に帰っていった。

 そしてその日の放課後、杉浦の入部届けが提出されたのだった。




 ~数日後~

 家庭科室の使用が解禁され、調理部初の部活の日がやってきた。

 調理部部長となった村岡が、皆の前で挨拶する。


「部長をやらせてもらいます、1年4組の村岡千穂(ちほ)です。得意料理は魚料理です。よろしくお願いします」


 そう自己紹介した後、ちらりと杉浦を見てから皆に言う。


「それじゃあ初めて部活やるし、互いに知らない人もいるしさ、みんな改めて自己紹介しようよ。クラスと名前と得意料理を言ってね」


 まあ確かに、松原と杉浦なんて初対面じゃないだろうか。

 俺は村岡に続いた。


「1年2組、麦野むぎの直人なおとです。得意料理というものはないけど、家庭料理なら大抵作れるかな。まっ、よろしく」


 俺に続いて、松原が言う。


「同じく1年2組、松原紅葉(もみじ)です。洋菓子を作るのが好きです。だけど、お菓子以外は全然作ったことがないので、迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」


 松原に続き、プリアが言う。


「1年1組、内藤プリヤンカです。プリアって呼んでください。親がインド料理屋をやっているので、昔から店を手伝ってます。色んな人に美味しいって思ってもらえるインド料理やエスニック料理を開発したくて、この部に入りました。よろしくお願いします」


 プリアに続き、杉浦が言う。


「1年4組、杉浦景太(けいた)です。得意料理というか、料理がそもそも得意ではないです。どちらかと言うと、安い代用品の食材を考えたり、どうすれば手を抜いて料理が作れるのかを考えるのが好きです。よろしくお願いします」


 一通り自己紹介が終わり、村岡が言う。


「じゃあ、部の方針というか、顧問の高橋先生との取り決めをみんなに説明するね」


 高橋先生との取り決めということは、晩飯の話だろう。

 毎月いくら食費を部に入れてくれるのか、村岡と高橋先生で話し合っていたはずだ。


「高橋先生と生徒会長に晩御飯を作るのは、毎月10日間になりました。高橋先生からは1万円、会長からは5千円貰えることになってるから、一食1500円を目処めどに作っていきましょう! 勿論、普段は節約して、どこかのタイミングでパーッと豪勢な料理を作ってもいいかもね」


 高橋先生と会長の二人分で一食1500円か。

 まあ、妥当な線かな。


「みんなで料理を作るのが楽しみです」


 笑顔でそう言うプリアに、村岡が頷いた。


「うん。だけどね、私たちの目標は、あれだよ!」


 そう言って、村岡は家庭科室の隅っこの壁に貼られたA3サイズの紙を指差した。

 紙にはでかでかと『目指せ全国大会優勝』の文字が書かれてある。


「優勝とはでかく出たな」


 俺がそう言った隣で、松原が真剣な眼差しで紙を見ながら言った。


「ううん、あれでいいよ。私は中学の時、準優勝だったんだもん。優勝を目指さなきゃ、私はここでやる意味がない」


 そうか、松原からしたら、全国優勝は高望みでもなんでもないのか……。


「それじゃあみんな、全国優勝目指して、頑張っていこう!」


「オー」


 高々と拳を挙げてそう宣言する村岡に、俺たちは同じく拳を挙げて思い思いの声量で声を出したのだった。



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