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異世界転生してパワハラ上司を駆逐してたらいつの間にか偉くなってた  作者: ぽてと
第七小隊の労働環境改善〜最強の社畜による軍隊ホワイト化計画〜

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第2話 劣悪な労働環境と、倉庫で泣く少年兵

翌日。僕は支給品のチェック柄のスカーフを首にしっかりと巻いていた。

バッカス小隊長から受けた絞殺未遂の痕、あのどす黒い痣を隠すためだ。


(……まったく、労災申請が通らない世界というのは本当に厄介だ)


昨日の『物理的監査』のおかげで、バッカスは僕を見ると怯えて目を逸らすようになった。一時的とはいえ、直属の上司が大人しくなったのは職場環境改善の第一歩として悪くない。

だが、第七小隊の労働環境そのものがホワイト化したわけでは決してなかった。


「……なんだ、この惨状は」


午後の業務のため、第七小隊が管理する第一倉庫に足を踏み入れた僕は、思わず頭を抱えた。

そこは、文字通りの有様だった。


錆びた剣、手入れされていない革鎧、使用済みのポーションの空き瓶、いつの時代か分からないほど古い書類の山。それらが一切の規則性を持たず、乱雑に積み上げられている。

前世の僕が見たら、間違いなく「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が全くできていない」と頭痛を覚えていただろう。動線は最悪で、これでは必要な装備を探すだけで日が暮れてしまう。


(在庫管理の概念が完全に欠如している。これでは緊急時の出撃など到底不可能だ。兵站を軽視する組織はいずれ確実に崩壊する)


ため息をつきながら歩みを進めると、物陰から微かな声が聞こえてきた。


「うっ……ひぐっ……どうしよう、これ……明日までに全部なんて、絶対に終わらないよぉ……」


積み上がった木箱の裏側に、小さな影がうずくまっていた。

ダボダボの、明らかにサイズが合っていない少年兵の軍服を着た子供。茶色い髪をウルフカットにした小柄な少年だ。

彼の名前はティノ。僕と同じく、この掃き溜め小隊に配属されたばかりの新人だったはずだ。


「ティノ、こんなところで何をしているんだ?」


声をかけると、ティノはビクッと肩を震わせ、ウサギのように怯えた目を僕に向けた。


「あ、アレン……? ご、ごめんなさい、サボってるわけじゃないんだ! ただ、その……」


ティノの足元には、埃まみれの帳簿と、無数に散らばった武具の山があった。涙目で鼻をすする彼を見て、僕は瞬時に状況を理解した。


「もしかして、この倉庫の棚卸しと整理を、君ひとりで任されたのか?」

「う、うん……。マイペースすぎる先輩たちが、『新人の仕事だ』って言って……。明日までに終わらせないと、一週間は夕食抜きだって……」


(出たよ、最悪の丸投げパターンだ)


新人に対して適切なOJTオン・ザ・ジョブ・トレーニングも行わず、マニュアルもなしに膨大なタスクを押し付ける。そして失敗すればペナルティを与える。

ブラック企業で死ぬほど見てきた光景だ。前世の僕自身も、入社一年目の時に全く同じような絶望を味わった。


(それにしても、この軍服……いくらなんでも大きすぎないか?)


肩のラインはずり落ちており、袖も余っている。小柄で細身な彼には、全くサイズが合っていない。備品の適切な支給すら行われていないという、組織の杜撰さが浮き彫りになっていた。

そんなぶかぶかの服の袖で必死に涙を拭うティノの姿は、ひどく痛々しかった。顔立ちもどこか中性的で線が細く、重い荷物を持たせるような体格ではない。


「無理だよ……僕みたいなどんくさいやつじゃ、何日かかっても終わらない。やっぱり僕なんか、部隊のお荷物なんだ……」


膝を抱え、自己嫌悪に陥るティノ。

その姿が、かつての『使えない』と罵られ、深夜のオフィスで一人泣いていた自分自身と重なった。


「ティノ」


僕はしゃがみ込み、彼の目線に合わせて静かに告げた。


「君は、どんくさくなんてない。お荷物でもない」

「え……?」

「終わらないのは君の能力が低いからじゃない。単純に、仕事の割り振りという『マネジメント』が腐っているからだ。これだけの物量、ベテランが三人がかりでやっても一日じゃ終わらないのが適正な工数だ」


僕は立ち上がり、周囲の惨状を見渡した。


「泣かなくていい。僕が手伝う」

「だ、ダメだよ! アレンだって自分の仕事があるのに……それに、先輩に見つかったらアレンまでいじめられちゃう!」


ティノは慌てて僕を引き留めようと、小さな手で僕の袖を掴んだ。兵士にしてはひどく柔らかい手だったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

僕は首に巻いたチェック柄のスカーフをキュッと締め直し、不敵に笑ってみせた。


「気にするな。僕は、理不尽な業務命令を絶対に許さないと決めたんだ」


それに、と僕は心の中で付け加える。

こんな劣悪な在庫管理状態を放置しておくのは、元社畜としてのプライドが許さない。


「ただ片付けるだけじゃない。明日から、誰が来ても一秒で必要なものが見つかるように、この倉庫のシステムそのものを『最適化』する」

「さいてき……か?」


きょとんとするティノの前で、僕は腕まくりをした。


「さあ、業務改善の始まりだ。まずは手始めに、『ABC分析』を使ってこのガラクタの山を宝の山に変えてやろう」

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