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漂流企業 食品工場まるごと異世界転移  作者: 蒼木しの
続章【 新婚旅行は異世界で 】
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第20游 キリハリの塔③

 仁と慈愛(ジア)は順調に塔を攻略していった。

 一通り走り回って宝具No72[知恵の輪]でマッピングした後、ゲームマスターが動かしているであろう壁を予測して行動した。

 塔の内部の物質量は変わらない。そう予測した慈愛の考えは壁が動いて道を塞げば、新たに道が出来る。そこを進んで行けばおのずと塔に上がる階段が見つけられると言う攻略法であった。


 仁と慈愛は二手に分かれ、予測した動く壁に手分けして進む。すると壁は両方とも動かないままである。

 塔の内部の壁が動くとは今までチャレンジした冒険者から話は出なかった。出たとしても、それにゲームマスターは気にしない。それが自らに課したルールであるからだ。

 冒険者自ら考えた攻略法、それこそ「いつでもこい」の精神で人の目につかぬように壁を動かして冒険者の行方を阻む。

 そのルールを予測した慈愛は、それを逆手に取り、二人の声が届く範囲で塔を進み、階段を見つけると声を出してお互いを呼ぶと言った作戦だ。


 しかし、この攻略法にも欠点があった。


 それはある意味、ローラー作戦であることだ。隅々まで走り回る事で動く壁を予測し、階段を何とか見つけることが出来るが、時間が掛かりすぎていた。


 仁と慈愛は塔の32階まで来ていたが、既に時間は残り僅かであった。


 33階への階段を見つけ、二人は合流して駆け上った。

「はぁはぁ・・慈愛、もう時間が無い!」

「ふむ・・・わかっておる・・・」

 慈愛は何か考えがあるように仁へ答えた。



 最上階にある暗がりの部屋で様子を伺っていたゲームマスターは、鼻歌を歌い居ながら時計の針を見つめていた。

「ふふぅ~ん、残念ですがぁ~慈愛のチャレンジもここまでですぅ~。でも新記録でした~」

 ゲームマスターは杖を握り、自らの足元の方に先端を向けた。

「それでは~ゲームオーバーですぅ」


 その瞬間、クリスタルビジョンに映し出されていた慈愛が妙な動きを見せた。それにゲームマスターも気が付き、画面を凝視した。

「むむむぅ、何をするきですかぁ?」



 慈愛は左手を上に掲げ魔法を唱えた。

「シャイニングシューター!」

 そう叫んだ慈愛の左手からは光で具現化された弓が現れた。そしてそれに右手を重ねると、今度は光の矢が現れた。

 慈愛は塔の壁に向かって一気に弓を引き始めた。


「ちょっ、おいおい!何をする気だ慈愛!」

「黙って見ておれ。シャイニングアロー!!!」


 焦る仁を横目に、慈愛の手からは光の矢が発射された。その光の矢は塔の壁をぶち破り、空へと放たれた。


「よし!次はレヴィテーションウィンドじゃ!」

 慈愛がそう叫ぶと、仁と慈愛の身体の周りに気流ができ宙に浮いた。そしてそのままの状態で、一気に壊れた壁の外へ出ると、その場に二人は留まり、宙に浮いたまま静止していた。


 ピピピピピッ

 仁の持つスマートフォンのアラームが180分経過した合図を鳴らした。しかし、しばらくしても仁と慈愛がテレポートする様子はなかった。


「あれ?テレポートしないぞ・・・?」

「そりゃそうじゃ、注意書きには[制限時間は180分。制限時間を越えると外に出されます。]とあった。元から外におれば出される事は無い」

「えええ、ムチャクチャな理論だな・・・」

「あほ~、頭脳プレーじゃ!ルールに一度外に出てはいけないとは書いておらん!そうじゃろー!なぁキアラー!」


 慈愛は塔の最上階を見て[キアラ]と名を叫んだ。その名前はまさしくこのキリハリの塔のゲームマスターへ向けたメッセージであった。


「え?キアラって、あの六賢者の一人のキアラか?」

 仁が驚いたように慈愛の顔を見た。

「そうじゃ、忘れたか?アヤツのスキルは[召喚士]。この塔も召喚しておるのじゃ」


 キアラとは六賢者の中でも最年少であり年齢はまだ11歳の女の子だ。以前、仁と慈愛とは行動を共にし、一緒に魔王討伐をした仲間でもある。


 最上階にいるキアラは若干悔しそうな顔をするも、どこか嬉しそうな表情へと変化した。

「くぅ~、今回だけは特別ですよぉ~」



 仁と慈愛は再び塔の内部に入り、地面に足を着いた。

「さて、制限時間もリセットされたのじゃ。ガンガン行くぞダーリン!」

「ははは、おけおけ。もうひと踏ん張り行きますか」


 再び、仁と慈愛のローラー作戦が始まった。


◇◇◇


 そして更に2時間以上が経過した。

 仁と慈愛も既に45階まで辿り着いていた。


「はぁ、疲れた・・・腹も減った・・・」

「あともう少しじゃ!終わったら慈愛様特性のマッサージをしてやるのじゃ」

「おお、裏オプはあるのかな?」

 仁がニヤけた顔で慈愛に冗談を飛ばしてきた。


「好きにせい。ほれ行くのじゃ!」

「よし!俄然やる気が出て来た!」


 すると慈愛が仁が手に持っている数枚のカードへと目線を映した。

「なんじゃ?その手に持っているのは?」


 仁が慈愛に数枚のカードをトランプのように広げて見せた。

「動いた壁の跡にまるで隠されていたかのように、このカードが落ちてたんだ」


 慈愛はカードを手に取り、書かれている内容を見た。

 カードには方眼紙のように線が引かれ、カードには3~5か所にランダムに2ケタまでの数字が描かれていた。

「36、24、5・・・なんじゃろうか、何かの暗号かもしれんの」

「だろ?慈愛も見つけたら一応拾って置いてくれ」

「はよ言うのじゃ。そんなん無視してたわ」


 こうして、何だかんだで48階で階段を見つけ、49階まで辿り着いた。ゲームマスターが最上階の50階にいるとすれば、この49階が最終ステージとなるはずだ。


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