第26話 抑えきれない欲望
7日目の作業も終わり、水路作りに関する全工程が終了した。
しかし、すぐに水路が開通する訳ではなかった。水路は枠となる石垣の上からセメントで補強している。最後まで補強作業をしていた為、完全に乾くまで丸1日待つ事となる。
同時に乾燥期間の明日は、設備課により水路に不備が見当たらないか入念な最終チェックを行う。
その為、設備課以外の8日目は異世界に漂流して初の休日となる。
そして9日目の早朝に、ようやく水路が開通する予定だ。
電気に関しても順調であった。敷地内で足りない部品はドワーフのローガンが少しずつ持ち込み、着々と発電機の作成を進めていた。
エネルギーとなる魔法石であるが、これは慈愛が日々、少しずつ魔法石に魔力を注入し準備をしていた。
魔法石は魔力を込めると褐色の黒から濃い緑色へと変化する。一般的にデルカニアで流通している魔法石は手の平より少し大きいぐらいである。
慈愛の用意した魔法石がどのくらいの期間が持つかわからないが、慈愛は羽曽部食品の敷地と川までを覆う結界魔法[オーロラフォートレス]を維持しながら魔法石に魔法力を込めている。
現代人で<落ち人>である自分達に、それがどれくらいの労力なのかは不明ではあるが、慈愛は積極的であり協力を惜しむことは無かった。
それが六賢者と呼ばれる責務なのか、個人の匙加減なのかは不明なところではあったが。
◇◇◇
7日目の作業が終了し、品質管理課の部屋へ戻ると、小田の机にあるキーボードの下に黄色の付箋が折りたためられて置いてあった。
〈今晩11時、6階にある商談ルームで待つ。須沖仁〉
「(え?いつ置いたのかしら?)」
小田は不思議に思いながら、一緒に帰って来た仁を見た。仁はいつも通りの感じで疲れた顔をして椅子にもたれ掛かかっていた。小田は首を傾げながら付箋をポケットに入れた。
誰かのイタズラなのかもしれない。そう小田は思っていた。それもその筈、用事があれば朝だって作業場に向かう途中で話し掛けた時に言えたはず。こんな手の込んだことをしない筈だ。
だが・・・仮に本当だったら?その可能性が0ではない限り、時間通りに赴くしかないと考えていた。
いつものように自社商品で簡単に夕食を済ませると、各々はペットボトルの水とタオル、そして小さいチャック袋に小分けされた中性洗剤を持ち、身体を拭きに面談室や商談室などの各小部屋に交代で行く事となる。各部屋にはバケツが用意され、その中に不要な水を捨てる。そして交代する度にトイレへ不要な水を流していた。
交代で見張りを行い、男女が混同しないようにプライベートを守る。
異世界に漂流したばかりの日から2日程は風呂に入れずとも我慢できたが、3日目以降となるとやはり昼間の作業も相まって身体を清潔にしておきたい。基本的に食品会社に限らずとも、日本人は毎日風呂に入る習慣がある。
それでも最低限はあるが、工場に常備してある中性洗剤を使い、汚れを拭いて落とす程度を行う事が日課となっていた。
そして時間は夜の10時50分となった。
周りは作業に疲れ、軽い吐息が聞こえ皆ぐっすりと眠っていた。小田は皆を起こさないようにそっと上半身を起こし、暗闇の中、廊下へと出た。
廊下は月明かりが差し込み、完全な暗闇ではなかった。小田は仁の姿を確認したかったが、品質管理課の男性陣は壁一枚隔てた検査室で寝ている為、不用意に扉を開けて確認する事が出来なかった。小田はそのまま階段へ向かい6階にある商談ルームへと足を運んだ。
商談ルームの扉の前に立ち、小田は一呼吸して扉に手を掛けた。扉に鍵は掛かってなく、室内は暗くて見えないが、そこに人影はない。
小田は一歩商談室に足を踏み入れたその時だった。
「んんっ!(なに?)」
急に誰かの手が小田の口を塞いだ。予想もしなかった出来事に、小田は反射的にその手を振りほどこうとした。しかし、さらに強い力が彼女の腰や両腕を掴み、まるで逃げ場のない捕食者の前に引きずり出された獲物のように、部屋の奥へと引きずり込まれていった。扉が閉まる音が響き、逃れられない閉鎖感が彼女を襲った。
小田はこの時、呼び出したのが仁ではないことを悟った。彼女の背後には一人、両側には一人ずつ、計三人の男たちがいることが身体に触れる感覚で分かった。恐怖が骨の髄まで染み渡り、心臓が凍りつくような絶望が小田を包み込んだ。
男たちは全身に工場の作業服をまとい、帽子と白いマスクで顔を覆っていた。暗がりの中、彼らの顔はほとんど見えないが、冷たい視線だけは鋭く光っているのが感じられた。彼らの動きは無慈悲で機械的だった。小田は声を出そうとしたが、押さえつけられた口からは一切の音が漏れなかった。
まるで悪夢の中にいるような現実感のない時間の中、小田は必死に抵抗しようとするが、男たちの力は圧倒的であった。彼らの冷酷な力に押しつぶされ、絶望と恐怖が小田の心を締め付けた。彼女の視界は徐々に暗くなり、心の中で一筋の希望が消えかかっていた。
小田は無理やり商談室のソファーに倒され、仰向けの状態となった。冷たい革の感触が背中に伝わる中、彼女は必死に抵抗しようとするが、まるで悪夢の中にいるかのように動けない。一人の男が彼女の両腕をがっちりと固定し、もう一人が足首を持って広げ、大の字の格好にされた。
「んっーー!!!んっ!!」
小田は必死に叫ぼうとするも、恐怖に満ちた声はただ喉の奥でくぐもるだけだった。第三の男が彼女の口を無情に押さえつけ、その手の力強さが逃げ場のない絶望をさらに深めた。彼女の叫びは押し殺され、苦しげなうめき声だけが商談室の静寂を破った。
薄暗い部屋の中、男たちの無慈悲な行動が続く。
小田は身体を必死に捩らせようとするが、鉄のような力で抑えつけられ、自由を奪われたまま動くことができなかった。彼女の瞳には恐怖と絶望が浮かび、涙がじわじわと溢れ出す。目の前の現実が信じられず、心臓は激しく鼓動し続けた。
彼女の抵抗は次第に無力感へと変わっていった。圧倒的な力の前に、自分の力がどれほど無力であるかを痛感し、希望が徐々に薄れ、暗闇が彼女の意識を飲み込んでいくようだった。男たちの冷酷な目が暗がりの中で光り、彼女をさらに深い絶望の淵へと追いやった。
小田は最後の力を振り絞り、再び声を出そうとした。しかし、その声はもはや彼女自身にすら届かず、ただ無情な静寂の中に消え去るだけだった。
男が手で小田の口を押さえながら、顔を近づけて低く囁いた。
「静かにしろよ。須沖課長と浮気してるの、バラすぞ?」
絶望の中で、小田は全てを諦めかけ、運命の糸が切れる音を感じた。
男は冷酷に顔を上げ、もう片方の手で小田のブラウス越しに乳房を鷲掴みにした。小田は痛みに悲鳴を上げようとしたが、押さえられた口からは苦しげな声しか漏れなかった。彼女の心は絶望に打ちひしがれ、逃れられない運命に囚われていた。
男は容赦なくブラウスのボタンを引きちぎり、強引に広げた。下着越しに小田の乳房が露わになると、男たちの興奮はさらに高まり、彼らの呼吸が荒くなった。小田を押さえていた二人の男も、欲望に駆られて彼女の身体を弄り始めた。
薄暗い商談室の中、彼女の絶望と恐怖が濃厚に漂った。小田の心は砕けそうになり、瞳には涙が溢れ出し、希望の光は完全に消えかけていた。男たちの冷たい手が彼女の肌に触れるたび、心臓が凍りつくような恐怖が彼女を襲った。
しかし、押さえつけられていた力が一瞬緩んだ。小田はその僅かな隙を見逃さなかった。再び必死に身体を捩らせて抵抗を試み、心の中で最後の力を振り絞った。
「(仁ニィの強さを分けて!)」
そして、口元を押さえている手に隙間ができたその刹那、小田は思い切りその手を噛んだ。鋭い痛みが男に走り、その手が反射的に離れる。小田は声を上げ、再び身体を捩らせて抵抗し始めた。
「だっ!誰かーーーーー!!!」
彼女の叫び声が暗闇の中で響き渡り、男たちの動きが一瞬止まる。小田の心にはわずかな希望が灯り、絶望の淵から一歩踏み出そうとする決意が固まった
「このやろー!!!」
咬まれた男は逆上し、怒りに任せて小田の顔面を思いっきり殴りつけた。突然の痛みに何が起こったのかわからなかった。普段感じたことのない激痛が頭の中をグワングワンと揺らし、視界が一瞬、真っ白になった。
6階には人はいない。ここは会議室や商談室などの小部屋が多く、通常は静まり返っている階だ。異世界漂流後も、誰かが勝手に使う事は禁止されていた。誰かが独占してしまうと不公平差が出るからだ。
そして今、人気のない階で小田は3人の男に囲まれている。どう考えても、女性一人では分が悪いと、冷静な判断が恐怖と混ざり合いながら理解し始めた。
恐怖と絶望が小田を襲った。このまま朝まで、この男たちの相手を交替でしなければならないのか。それは身の毛がよだつ思いだった。
「へ、ようやく大人しくなったか」
小田の目から涙がポロポロとこぼれ落ちた。男たちは顔を見合わせ、頷くと小田の着衣を脱がす為に一斉に手を触れ始めた。




