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救出成功

「ここは?」

 相川は周りを見渡しながら言った。

 シノと過去へ向かってここに来るまでは一瞬だった。相川が悟の飛ばされた時間を覚えていたこともあって、見事相川とシノは作戦に成功し悟と共に異空間に飛ばされたのだ。

 つまり、今相川がいるのは反転世界だ。ただ、その場所は悟のいた教室ではなく、相川たちが秘密基地として使っている空き教室だった。

「成功して異空間に来れたわ。だけど神山君とは離れちゃったみたい」

 シノが言った。

 確かにシノの言う通り辺りに悟の姿はない。

「探す必要があるようですね」

「そうね。とりあえずあなたたちの教室に行ってみましょう」

「はい」

 相川とシノは空き教室から出て、二年二組の教室に向かった。

「いないですね」

「そうね・・・」

 途中、反転世界に混乱し時間はかかったものの相川たちは二年二組の教室に到着した。しかし、その場に悟の姿はなかった。

「どこか彼が行きそうな場所に心当たりはある?」

 シノが訊いてきた。

「そうですね・・・脱出の手がかりを探して歩き回ると思いますが・・・」

「これと言って心当たりのある場所は無いか・・・」

 残念そうに言いながらシノは時計を見た。

「そろそろ現実世界で薫ちゃんたちが風間君から逃げる頃ね。急いで神山君を探さないと・・・」

「どういうことです?」

「雫ちゃんを逃した風間君が次に考えるのは神山君を利用することじゃないかしら?」

「!・・・確かにそれは考えられますね」

 『風間翔希は天才。どんな状況でもすぐに次の手を打ってくる。』これは自分で行った言葉だ。それにもかかわらずのんびり探していた自分をちょっと愚かに思った。

 確かに風間翔希なら雫を逃した場合、次に悟を利用して雫を誘き出すなどの手を考えるに決まっている。

「早く探さないと」

 シノにだんだん焦りの色が見えてくる。

「一か八か電話かけてみますか?同じ空間上にいるなら繋がるかも」

「やってみる価値はあるかもね」

 相川は携帯を取出し電話帳から神山悟の名前を探した。


 悟の携帯が鳴った。

 悟は混乱した。出ていいものなのだろうか。ここは風間に飛ばされてやってきた異空間、反転世界なのだ。一通りの場所を回ってみたが悟以外に人はいなかった。普通に考えて、現実世界と異空間で電話が通じるとは思えなかった。

「だ、誰だ?風間か?」

 恐る恐る悟は携帯電話の表示を見た。

「相川?」

 悟は恐れながらも携帯に出た。

『今どこに居ますか?』

 電話の向こうからは相川のいつもの抑揚のない声が聞こえた。

 いつもは感情が読み取れずイライラすることがあった相川の声が今の状況で聞くとなぜかホッとした。

「い、家だ。とはいっても異世界のだが・・・」

『大丈夫。私もそこにいるから』

「え?」

 相川の言葉に悟は耳を疑った。

「どうして?」

『君を助けるためです。すぐ行きます』

 そう言って相川は電話を切った。

「まさか、彼女がこっちに来てるとはね」

 玄関から声が聞こえた。

「またお前か・・・風間」

「やぁまた会ったね」

 笑みを浮かべながら風間は歩いてくる。

「雫はどうなった?」

「残念ながら逃がしてしまったよ」

 悟はホッとした。雫が無事なことに安心したのだ。

「だから君を利用しようと思う」

 風間は笑顔でそう言うと指ぱっちんのスナップ音を響かせた。するとキッチンに置いてあった包丁が浮いて悟に刃を向けてきた。

「なっ?」

「ここは僕が創った空間だ。ここにある物は全て僕の思い通りに動かせる。今、この包丁は君の心臓に標準をあてている。僕の質問に対する君の答え次第では、包丁が君の体を貫くかもしれない」

 笑みを浮かべながら風間は言った。そんな風間の様子に悟は恐怖したが、出来るだけ表情には出さないようにした。

「僕に協力して雫ちゃんを誘き出してくれるかな?」

 ここで「はい」と答えれば悟の命は助かるだろう。しかし、その代り雫の命が無くなる。ならば、答えは一つだった。

「断る」

 悟はキッパリと即答した。

「残念だ」

 風間は再び指ぱっちんをした。すると、浮いていた包丁が一直線に悟に向かって進んできた。

 悟は死を覚悟し目を閉じた。

「・・・・」

 しかし、しばらくしても包丁は悟の体を貫かない。

 恐る恐る目を開けると包丁は悟の体すれすれで止まっていた。

「・・・・?」

「・・・何?」

 悟が不思議な顔をしていると、風間も困惑し始めた。どうやら風間の意志とは関係なく包丁は停止したようだ。

「間に合ったわね」

 悟の知らない声が聞こえた。

 すると次の瞬間目の前に相川と謎の美人が現れた。

「シノさんナイスです」

「相川」

「また君か・・・」

 相川の登場に若干呆れた様子で風間は言った。

「はい。また私・・・それじゃ」

「おい相川・・いったい・・・」

「話は後・・・すぐ行くわ」

 そう言うと、相川はシノと悟の体を掴んで瞬間移動した。

「・・・・」

 残された風間は何もすることが出来なかった。ただただ悔しがることしか出来なかった。

 

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