第一話「邂逅」
黄泉の政、また取りまとめ申す。〜大老・酒井忠清の冥府改革〜
のスピンオフになります
第一話「邂逅」
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198X年8月12日。
私は大阪に向かっていた。
羽田を離陸してから、三十分も経たなかっただろうか。
機体が揺れた。
普通の揺れではなかった。
次の瞬間、私の意識は途絶えた。
気づいた時、私はどこかの広間にいた。
薄明るく、白く、昼とも夜ともつかない場所だった。
周りには、見知らぬ顔が何人もいた。
阿部も稲葉も久世も、近くにいた。
私たちは顔を見合わせた。
何かが起きたことは、分かった。
「……ここは、どこだ。」
誰かが呟いた。
誰も答えられなかった。
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それから、仮判定を受け閻魔様のご判定受けた私たちは
穏やかな時間が流れる場所
でのんびりと過ごさせてもらっていた。
穏やかな時間が流れる場所には
呼び名がないので、これが天国なのであろうと感じていた。
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
私は本を読むことがすきだったので、
この場所でいろいろな本を読んで過ごしていた。
これから先はどのようになるのか分からないが、
輪廻転生の順番が来るのを待っているのであろうと思っていた。
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ある日、使いの者が来た。
「堀田健吾、阿部誠、稲葉光司、久世恵子。
閻魔様のご命令で、閻魔庁へ。」
私たちは、顔を見合わせた。
「閻魔様の命令、か。輪廻転生の順番だろうか。」
阿部が静かに言った。
「分からんが、行こう。」
私は立ち上がった。
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閻魔庁についた私たちは、
黄泉ネットの概要を聞かされた。
なんて途方もないことを考える人がいるんだと
驚きと呆れが先に来たが、
出来なかった仕事をもしかしたら完成させられるかもという
期待も後から来て、
いろいろ混じった感情で少しその場から動けなかった。
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4人とも協力することを了承し、
閻魔庁から作業場に通された。
そこには、一人の男が立っていた。
羽織袴の姿だった。
背筋が伸びていた。
静かな目をしていた。
感情を外に出さない、そういう顔だった。
男が口を開いた。
「取りまとめ役の酒井忠清と申す。」
私の頭の中で、何かが噴き出た。
いままで下界でも穏やかな場所でもたくさん本を読んできた。
歴史小説が好きだったので、
有名な歴史小説はほとんど読んできたと思う。
「樅ノ木は残った」では酒井雅楽頭は
冷徹な権力者として描かれていた。
あの忠清が目の前にいる。
歴史書には「下馬将軍」といわれ、
将軍をも凌ぐほどの権勢を誇った大老。
宮将軍擁立を画策した男。
「権力の亡者」と、読んだ記憶がある。
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酒井忠清。
下馬将軍。
権力の亡者。
伊達騒動の黒幕。
宮将軍擁立を画策した男。
「樅ノ木は残った」の中で、
原田甲斐を追い詰めた男。
その人物が、目の前にいる。
閻魔庁の先、いわゆる天国の書庫はそこまで大きくなかった。
しかも時間があったのでだいたい読み終えていた。
閻魔庁と下界の間の黄泉の国にも本があると聞いた。
黄泉の国の書庫に、
私が知らない忠清に関する本がもっとあるかもしれない。
探してみよう。
そして。
この人物を、もっとよく知りたいと思った。
なぜそう思ったのか、うまく言葉にできなかった。
ただ、目の前の男の目が。
権力の亡者とは、どこか違う気がしたのだ。
黄泉の政、また取りまとめ申す。〜大老・酒井忠清の冥府改革〜
のスピンオフを追加で今後書くかもしれませんが、
一旦このスピンオフで忠清シリーズはお暇致します




