下地投稿
これからお送りするのは私が去年こんな感じの奴あれば面白いなーと思い書いたものです。
続きを書く気は有りませんのであれですが、取り敢えず次話に書く内容の前に上げておきます。
「これ受けるんでおなしゃーっす」
まだ日の出に差し掛かる前の刻。
少年は一枚の紙とカードをテーブルの上に出す。
渡された受付嬢はそんなサトウの顔を見て、溜め息を吐いた。
「はぁ。またスライムですか?サトウさん」
テーブルの上に置かれた紙を確認すること無く、受付嬢はその紙に何が書かれているかが分かっていた。
サトウ、と呼ばれた少年は、受付嬢の溜め息を気にしたふうもなく頷いてみせる。
「いえーす。またスライムですわい」
へらへらと笑って答えるサトウに呆れた表情をする受付嬢。
「まったく……。もうサトウさんはバットやボアを倒せるレベル何ですから、それを行ったらどうなんですか?」
「いやいやいや、あんなんと闘う意味がわからないわ俺には。俺はいつも通り人畜無害なスライムを相手にするさね」
けらけらと受付嬢の意見を、客観的に見てどう考えてもバットやボアにビビってる様にしか思えない発言で一蹴するサトウ。
受付嬢はそんなんだからいつまでも草原から先に進めないんですよ、などと言いつつもクエスト受理の判をサトウの持ってきた紙にペタッと押印する。
すると判を押されたクエスト用紙は光出し始める。その光に包まれた紙は宙へと浮遊し、隣のサトウが置いた白色のカードに吸い込まれるように近づいて行く。
カードと用紙が接したと思うと用紙は光とともに消滅をする。そして白のカードには先程まで無かった黒丸が表示される。クエストがカードに記録されている事を示すその表示を確認したサトウは、
「あんがとミルアちゃん、この御礼はまた今度するわ」
テーブルの残されたカードを持って、この場を走り去っていくのだった。
何か幼さを感じるようなその後ろ姿を見送りながら、受付嬢――――ミルアは拗ねた様な、寂しげな表情を浮かべる。
(何で私よりも年下の男の子にちゃん付けで呼ばれなきゃなんないのまったく。それに、毎日スライムばっかり倒してたらお金も無いのに何が御礼よ、ホント……バカね)
ただそれでもサトウを嫌いになれないミルアは、気持ちを切り替えるように新しく来た冒険者の対応に集中するのだった。
▽▼▽▼▽▼
クエスト受注済みのカードをズボンポケットに入れたサトウは、冒険者西ギルドを出ていつもの場所へと向かう。
まだ日の出前と言う事もあり通る人は疎らで、道行く顔見知りには軽く挨拶をしつつ向かった先は、先ほど居た冒険者西ギルドから差ほど遠くない位置にある塔だった。
塔に近付くにつれ、人の数が増えていく。この殆どが商人であり、盛況になり始める朝になる前に準備に来ているのだ。
息も切らさず走るサトウは冒険者西ギルドから五分で塔のある、直径七百メータもの大広間に到着する。
ここまで来るとサトウと同じような冒険者の数もちらほらと見えてくるが、同業者にも目もくれずにサトウはそのまま走って来た勢いで受付へと向かう。
塔の目前に置かれた受付へと到達したサトウは、三人ほど立つ受付官のうち、いつもの受付官へと足を向けた。
自分に向かってサトウが来ているのに気付いたのだろう。サトウが(一方的に)懇意にしている受付官は、見るからに舌打ちをして嫌な顔をする。
受付嬢の溜め息すらへらへらと笑って流していたサトウは、この嫌悪感丸出しの受付官に対しても気にもせずに、ポケットから取り出したカードを提示する。
「おっちゃん、いつも通りよろしくぅ」
自分に対してアホみたいな笑みを見せるサトウにもう一度舌打ちを聞かせて、おっちゃんと言われた受付官はサトウが差し出しているカードを受け取った。
「…………はぁ、いつも通りスライムか」
受け取ったカードをタップして操作し、受注クエストを表示した受付官は、そのクエストを見て溜め息を吐く。
「いえーす。スライムでんがなー」
受付嬢と似た様な遣り取りをここでも繰り返す。もうこの二年間で幾度となく繰り広げられた遣り取りでもあったりする。
「お前のレベルなら他のモンスターでも草原程度なら楽に倒せるだろ。それを飽きもせず毎日毎日スライムばっか……」
「はっはっ。似た様なことミルアちゃんにも言われたぜ!」
「あぁ……受付の嬢ちゃんか。あの娘も毎日毎日こんな奴の相手してんのか。苦労してやがんなぁ」
哀愁漂う雰囲気を出す受付官。
「いやぁ、そんな褒めないでくれ、照れるぜ」
うぇっへっへと笑声を洩らすサトウを受付官が睨み付ける。
「褒めてねぇよボケッ。…………ったく。それで、内容はいつも通りで良いんだな?」
「おっけいだべさ」
受付官の問いに笑顔でサムズアップして答えるサトウ。その何処か能天気ぶりに受付官は色々考えてやってるのが馬鹿らしく思えてくる。
受付官はサトウの答えを聞いて、ギルドカードに第一階層と書かれた札を近付ける。
札は受付嬢が判を押した用紙のように光はじめ、そしてギルドカードの中へ吸い込まれていき、札と光が同時に消える。
するとカードには、黒丸の横に〈1〉という数字が描かれる。
これで転移魔法陣に乗ると第一階層へ転移するようになった。
「じゃあ説明に入るぞ」
受付官はギルドカードをサトウに返すと、説明に入り始める。
「はーいせんせー。もう何度も聞いてるから省いてもいいと思いまーす」
カードを受け取ったサトウは手を挙げて省略を希望するがそれを受付官は即座に切り捨てた。
「駄目だ。これはどんな奴でも聞くのがルールだからな。それはこの国の最有力クラン、【赤龍の蹄】ですらだ」
きっぱりと却下される。それに対してサトウはぶーぶーと垂れているが、それを無視して受付官は業務である説明を開始した。
「この聳え立つ塔は〈ソニア神の大迷宮〉と呼ばれる我らが神、ソニア様が創り出したと言われる迷宮である。迷宮内は計百層で出来ているとされ、各層にはモンスターが蔓延っている」
どう考えても百層という超巨大な面積をこの塔は持っていないだろとサトウは毎度思う。だがそれを突っ込んでもソニア様が創り出したのだからそういう造りになっているのだとか言うので、今更そこを突っ込むような野暮な事をする気はサトウには無い。
「お前にはこれからその蔓延るモンスターを討伐する事になる。そのモンスターはスライム二十匹だ」
これ、やめてくんねぇかなぁと聞きながらサトウは感じていた。
これのせいでサトウは他の冒険者から面倒な絡みに合っているので、省くなりなんなりして欲しいと願っていた。とはいえそれが受付官の仕事なのだ、それに受付官はあまり聞こえないようボリュームを下げる気遣いもしてくれているのだからサトウもあまり文句は言えなかった。
「もし仮に生命力が無くなった場合、強制的にその表の大広場へ転移する事となる。その時、装備している武具・防具とその時に迷宮内で手に入れた道具は全て迷宮が奪い、経験値とレベルアップに伴うポイントも消える為、細心の注意を払うようにしろ」
過去二度ほど死に戻りした事のあるサトウは、これによって多大な損害を出した経験を持つため、死に戻りを起こさないよう何があっても大丈夫なよう、万全の準備をするようにしている。
「それじゃあ、お前にソニア様の加護があらんことを心より願っている!」
そう叫び、受付官はサトウの前を避けて立つ。サトウはアクビを噛み殺しながらようやく終わったと、横に避け横向きとなった受付官の前を通り、迷宮内への転移魔法陣へと向かって走る。
「死んで戻ってくるんじゃ無いぞ、良いな?」
その時、受付官がすれ違いざまに小さな声で、サトウに向かって言葉を掛けた。
「おぅ!とりま、そうならないよう頑張ってきますわ」
そんな受付官に向かってサトウはいつものへらへらとした笑いを見せて、転移魔法陣の上に乗ったのだった。
(はぁ。スライムしか狩らねぇとかホントあいつは何をやりたいんだか……)
後に残るのはスライムしか狩らないサトウに呆れる受付官の姿だけが、そこに残るのだった。
▽▼▽▼▽▼
転移魔法陣によって〈ソニア神の大迷宮〉内へと転移したサトウは、慣れた手つきでステータスを出し、様々な道具を無限に収納可能とする〈ボックス〉から武器を取り出す。
武器の名前をタップすると左腰のベルト辺りに光の粒子が出現してくる。
それら粒子は何かを形作るように集束していき、ものの五秒もせずに凡そ七十センチ程のダガーがポーチと共に左腰に装備された。
それを確認したサトウは、よしっ、と気合の声を入れて、果てしなく広大な草原の大地を走り始めた。
▽▼▽▼
ノンストップの疾走で草原を駆け抜けるサトウは、討伐対象である〈スライム〉にも目もくれずに、ある場所へと向かっていた。
それは転移した場所から三キロほど離れている洞窟だった。岩が重なって出来上がった洞窟の入り口に辿り着いた、勢いそのままに中へと入っていく。
サトウの目的地は洞窟に入って入り組んだ場所を抜けた部屋に有る為、洞窟のモンスターである〈バット〉や、第一階層では経験値が多い〈スマウルゴブリン〉も居るが、それらが攻撃を仕掛けて来る前に通り過ぎて行く。
そして何度目かの枝分かれの道を進んでいくと、目的地へ到着。
足を止めたサトウの前には木製の扉。この中にこれからサトウは入ろうとしていた。
「さて」
サトウは中に入る前に、いつものように武器の交換をする。が一応、大事を取って自分の周囲に対してスキル〈索敵〉を発動する。
〈索敵〉の能力は自分の周囲にいるモンスターと人の場所をそれぞれ知る能力。感覚的なものになるが、モンスターと人の索敵反応の違いは明確に分かるようになっている。
今回サトウが〈索敵〉で知りたいのはモンスターの方ではなく、他の冒険者の有無だった。
「問題無し、だな……」
〈索敵〉に人の気配が感じられない事を確認して、ようやく武器の交換に入る。
第一階層に来て装備したダガーを〈ボックス〉に仕舞い、別の武器を〈ボックス〉から出す。名前は――――〈フェルグラキス〉。
その名前をタップすると、今度はサトウの背中に光が顕れる。そうして形作られた〈フェルグラキス〉を抜剣する。
軽量化とデザイン性からか樋の部分が削られた銀色の剣。
ステータスに素早さの上昇と大きな攻撃力の上昇を施すこのロングソードは、一年間ほど前からこのクエストの時に愛用している剣だ。
幾度となく握ってきた剣を二振りほどし、サトウは木製の扉へと手をかけた。
軽く触れるだけで開く扉。そういうシステムみたいなもんだろうと思っているサトウは対して気にもせずに扉を潜っていく。
そして部屋へとサトウが入り、数歩進んだ次には、入ってきた入口の扉が、今度はサトウが触れること無く自動的に閉まる。
すーっと閉まっていく扉が完全に閉じられ、ガチャン、と鍵の閉まるような音がした――――――――刹那。
それまで全く何も居なかった部屋一面にサトウの討伐対象、スライムが一斉に出現し始めたのだ。
その数なんと三十体ほど。
その三十ものスライムが出現し終えたのを確認したサトウは、手に握るロングソードを肩に担いでニヤリと笑みを浮かべる。
「さぁーって。今日もスライム狩りと行くかねぇい!」
こうしてサトウのスライム蹂躙劇が始まろうとしていた。
▽▼▽▼▽▼
「っら、っほ、っせ、っそい……せいやっさ!」
群がる〈スライム〉の元へ瞬足で駆けたサトウは即座に近くの標的を斬る。
サトウのSTRと、〈スライム〉のVITに大きな差があるせいか、一刀の元にスライムは光に変わる。
その姿を確認しないままにサトウは自らを囲む敵を次々と斬って光へと変えていく。
この間にも〈スライム〉の素材と魔石、そしてたったの2程しかない経験値も入っているが、サトウはそんなものはどうでもいいと、とにかく〈スライム〉を斬る。
この部屋は最大で〈スライム〉が三十体ほど出て、その後減った数に応じて〈スライム〉は新しく出現するのだが、出現に掛かる速度を、サトウの剣速が上回っており、今では形を成した〈スライム〉の数は二十五体と減っていた。
敵も負けじと続々と出現するが、それを超える速度で〈スライム〉を倒していくサトウ。
そして部屋に入ってからのサトウの〈スライム〉討伐数が五十に差し掛かろうかという、その時。
それまでとは違う光が部屋一面を包み込む。眩い光に目を細めながらもサトウはその光源へと向かう。
通りに邪魔な〈スライム〉を剣だけでなく蹴りも含めて攻撃をして倒しながら向かっていく光源が、形を作りながらに収まっていく。
そして姿を現したのは、水色の小さくて柔らかな体質である〈スライム〉ではなく、銀色の大きくて硬い体質を持つ〈スライム〉と同じシルエットをした敵が現れた。
「大当たりキターーーーーーー!!!!」
その姿を確認したサトウは〈スライム〉の放つ体当たりをものともせずに一直線に距離を詰め、
「経験値くれやあぁぁぁ!!」
上段に構えた〈フェルグラキス〉を敵に向かって垂直に斬り下ろしたのだった。
〈スライム〉が湧く部屋に入って四十分近くが経った頃。ようやく最後に残った〈スライム〉を斬り捨てたサトウは、光になって消えていくのを見ながらに深呼吸する。
昂っていた心を落ち着けるように呼吸をしたサトウは、今日の成果を知る為にステータス画面を表示させる。
レベルは四も上がっており、これによってステータスポイントが八、スキルポイントが五十二ほど手に入っていた。1レベルあたり二と十三である。
サトウは上がりづらくなったレベルが一気に四も上がった事に心中でガッツポーズをしつつ、手に入れたポイントを振り分ける。否、振り分けるではなく振る、といった方が正しいだろうか。
何せサトウは今回手に入れたステータスポイントをAGIに、スキルポイントのその全てを、生産職の鍛冶系統主スキル、〈鍛冶師〉へと振ったのだから。
ステータス画面に表記される〈鍛冶師〉Lv.40が一気に増え、Lv.92に変わる。スキルポイントと同じ数だけ増えたのだ。
「よしよし。もうちょいで〈鍛冶師〉もコンプリートだ。あとは〈武器強化成功率上昇〉と〈武器修復〉をそれぞれLv.10まであげれば完璧だ!」
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サトウ・シノブ
LV:286
性別:男
年齢:18歳
職業:無職
STR:615(+67)
VIT:553(+10)
DEX:768(+100)
AGI:1024(+143)
MND:350
LUC:609
スキルスロット:〈索敵〉〈片手剣〉〈危険察知〉〈軽業師〉〈強化魔法〉
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最後にサトウは自身のステータスを確認して、帰る準備を始めるのだった。




