表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/457

トラウマ案件


「『アンチカーズ』」


俺が魔法を唱えると苦しそうにしていた少年の顔が落ち着いたものに変わる。


「ふぅ、まぁこれで大丈夫だぜ」


俺の言葉に子供の両親は、


「ああ! ありがとうございます!」

「何てお礼を言っていいか!!」


涙ながらにお礼を言うと、子供の体に抱き着いた!



俺はその様子を見ながらその家を後にする。


「すみません、僧侶様。 次はあちらの家です」

俺が家から出て来たのを見計らい、髪の薄い老人が話しかけてくる。

この村の村長だ。


「ああ、任せろ!」

俺は村長について次の家に向かった。




俺が次についた村は呪い真っ盛りの村だった。

急いで重体の者から対処していき、今は軽度の咳や熱の出始めた者だけが残っている。


「こちらの家です。 一人暮らしの男性で熱が出ております」

村長が一軒の家の前で立ち止まる。


「ああ、じゃあちょっと行ってくるよ」

俺は村長にそう告げると、その家のドアを開けた。



「邪魔するぜ」

「おお、いらっしゃい!」


俺が入ると……家主だろうか? 筋トレをしていた男がこちらをみて眩しいばかりの笑顔を見せる。

全身が日に焼けて黒い中、真っ白い綺麗な歯がキラーンと光る。

彫りの深い濃い顔付きの中年男性だった。



俺は無言でその家を出て扉を乱暴に閉めた!!


バン!!


余りの乱暴さに扉が外れたがそんなことはどうでもいい。



「村長」

「は、はい? 何事でしょうか?」


俺の雰囲気に怯えたのか村長が声を震わせる。


「ここにいる奴は呪われてるんだよな?」

「は、はい。 咳の後から熱が出始めたと聞いております」

「なるほどな」


俺は村長に詰め寄りながら話す。


「熱が出ているはずの男が猛烈な勢いでスクワットしていたんだが?」

「は? す、スクワットですか?」

「そうだ、スクワットだ。 本当にここの家なのか?」

「は、はい。 間違いないはずなんですが……」

「なるほど、だがそれはまだ良い。 熱が出ても筋トレしたくなる奴もいるかもしれん」

「は、はぁ」

「だけど……だけど……」


俺は声を溜めると一気に爆発させる!


「どうして真っ裸で筋トレしてるんだ!!!!」

「は?」

「熱が出て……スクワットして……しかも真っ裸!!!!」


うぅぅぅぅ……なんてもの見せやがったんだアイツはぁぁ!!!


「俺はこう見えて僧侶だぞ? 女だぞ? 分かってんのか!?」

「ひぇぇ!」

村長は身を縮こませる。


「ぐぅぅぅぅ~~なんてものを見せやがったんだ!」


「ふむ、何を見たのかね?」

「何をって……あーー!!」


真っ裸男が外に出て来ていた。

外だからか一応大きめのローブを羽織っている。


「てめぇ! なんちゅーもの見せてくれんだ!?」

「ふむ? 今も言ったが何を見たのかね?」

「な、何をって……そ、そりゃ……ほら? えと、あれだよ」

「あれとは?」

「だ、だから……っていうかわかんだろ!? おめぇの体に付いてるもんじゃねーか!!」

「ふむ、つまりはオチ……」

「だぁーーーーーーーーーー!!!! 言わんでいい!! 言うな! ばかぁ!!!」


はぁはぁはぁ……こ、こいつ疲れるわ。


「村長!!」

俺は村長に向き直ると、


「こいつは一体何なんだ!?」

「な、なんだと申されましても……」

「私の名前はライオント=ハーネスト。 是非ライオンと呼んでくれたまえ」

「だーー! おめぇーには聞いてねぇよ!」


何故か筋肉を見せつける様にポージングをしている変態ライオン


無視したいが……確かに汗が多く出ており、顔も少し赤く見える。

熱があるのは本当っぽい。


「……はぁ、まーいいや、変態だからって見捨てる訳にも行かねーしな」

「変態って誰の事だい?」

「おめぇーだよ! 自覚ねーのかよ!」


くっ! 突っ込んでばかりで疲れる。


「『アンチカーズ』」

さっさと終わらせようと魔法を唱える。


「お? なんだか体が楽になったようだ」

「『なったようだ』ってなんで他人事みたいに言うんだよ! お前の体だろうが」

「いやいや、君のおかげか? 君は凄いな」

「聞けよ! 俺にだけ突っ込ませてどうすんだよ!」


ヤバイ……こいつ天然物だ。 

こういう奴は相手にするだけこっちが負けだ。


「……村長、次の家は?」

「あ……ああ、つ、次の家ですね?」


茫然としていた村長は俺の言葉で我に返ると、慌てて俺を次の家に案内し始める。


家の中に戻って行く変態ライオンを尻目に、俺は次の家に向かったのだった。





その夜は村長の家に泊めて貰う事になった。


村の恩人という事で村としては頑張ってご馳走を出そうとしてくれたが……俺も村の出だから分かるんだよ。

こういう物準備するのにどれだけ苦労があるか。


肉は一番いい牛や鶏、豚を使うし、野菜も取れたてで大きく身が詰まっている物。

でも、そう言うのはきっと売りに出したい訳で……。


だから俺は丁寧にお断りする。

俺は……そんな贅沢はいらないから。

みんなが無事だっただけで……それだけで報われる。



そうして村の人達から多大な感謝をされ夕飯は終わり、今は風呂でゆったりと浸かっていた。

『せめてお風呂だけはゆったりして下さい!』と村はずれの場所に急遽大きな樽風呂を準備してくれたのだ。


(ふぃ~~やっぱりお湯はいいなぁ)

布の仕切りで囲まれた所、樽風呂につかりながら俺はゆっくりと体を伸ばす。

髪は長いので頭で丸めてタオルで包んでいる。


樽風呂の下には石のかまどがあり風呂のお湯が冷めない様に薪が炊かれている。

おかげで暖かいお湯をゆっくり堪能することが出来た。


(しっかし……俺が城に籠っていたらこの村の奴らは……)


最悪な出来事を思い浮かべる。


(ふん! やっぱり城を出て正解だったじゃねーか!)

みんなの喜ぶ顔が浮かぶ中……あの変態ライオンの顔も浮かぶ。


(ぐぇ……全く……変な奴も世の中にはいるもんだぜ)


と、風呂を隠している布に影が映る。


(ん?)

がっしりした体型の成人の様な影だ。


(ま、まさか覗き!?)

今の俺は一糸纏わぬ姿だ。

服とかはそこにあるけど、この状態で風呂から出る方が見られちゃうかもしれない。


(ど、どうしよう!?)

いくら俺がこんな性格でも男に裸見られるとなるとそれは別。

体はしっかり女性だし、見せても良いかなって人は別にい……ってそんな場合じゃなかった。


ピッ……ピィィィィィィィ!!


布が音を立て大きく切り裂かれていく!!


「う、うそぉ!!  きゃーーーーーーー!!」


布が斬られて丸見えになった為叫び声を上げてしまう。

……っていうか、俺も女みたいな悲鳴上げられたんだな。


しかし、次の瞬間俺の顔から血の気が引いた。

そこにいたのは覗きなんかじゃなかった。


全身黒い体、触覚、そして逆三角形の頭。


切り裂かれた布の向こうから現れたのは……魔族だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ