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狙われた理由


「まず、先に名乗るわね。 私はロロ=カエサル。 そっちのノンビリ屋がララ=オルタナよ」

「あ、ああ。 俺はルルだ。 ルル=ホリィ」


ロロは俺の方を見て、


「あなた私達の事聞いたこと無いみたいね?」

「ん?」

「いえ、ごめんなさい。 なんでもないわ」


ロロは気を取り直した様に、


「今世界中で魔王の呪いによる人間のゾンビ化が進んでいるのは知っている?」

「ああ、その呪いを解く旅を俺と師匠はしていたからな」

「そうなのね!? それはますます助かるわ」

「?」


どうもロロの言う内容がよく分からない。


「話を戻すわね。 そして国王は教会に協力を依頼、呪いを解くため各地に神官や僧侶を派遣した」


それは師匠の話で知っている。

それで俺達の村に来て俺と出会ったからだ。


「呪いを解いて一時は収束すると思われたんだけど、魔王が動き出したの」

「魔王が?」

「そう。 魔族を使って派遣された神官や僧侶達を殺し始めた」

「!?」


初耳だった。


「そこで急遽国王により神官と僧侶の保護が言い渡された。 そしてその命を受けたのが……」

ロロはララの方を見る。


「ん〜?」

よく分かってなさそうな顔でニッコリとするララ。


「私達王国第一騎士団よ」

「王国第一……騎士団……」

「そう、そしてあのノンビリ屋さんが騎士団長のララ。 私が副団長のロロよ」


目の前の少女が王国騎士団長と副団長?

確かに……ララの強さは桁外れだった様に見えたが。



ロロは俺に視線を戻すと、

「そして神官や僧侶を保護しに出たんだけど……」


その表情に翳りが指す。


「魔族は空を飛べる。 私達より素早く国を回り、派遣に出た神官や僧侶はほとんど殺されてしまった」

「そんな!!」


そんな事になってるなんて……。


「僕達はまず神託の神殿に出向き司祭達を保護しようとしたけど、全員……」

ララは首を横に振った。


神託の神殿とは俺がスキルを授かった神殿だ。


「そ、そんな……司祭のじーさん達も!?」


驚愕した声を上げる俺にララは微かに首を縦に振った。



生意気な兵士やアスラさん、僧侶の方、そしてひげが立派な優しそうな司祭……みんなが死んだ。

殺された。



そこで俺はハッと顔を上げた。


じゃあ師匠は最初から狙われていた?

俺のスキルの所為じゃなくて神官だったから?


考えてみれば魔族や魔王が俺のスキルを知っているはずが無い。


師匠は……知っていたんだ!!

魔王が神官や僧侶を殺しているのを。

だから……僧侶の俺を王都に匿うために『聖者』スキルの所為と嘘をついて。


でも城につく前に魔族に見つかったから……自分は残って俺を……?



「ち、ちくしょう……」

食いしばった歯から思わず声が漏れる。


「?」

ロロが不思議そうに俺を見るが、


「ちくしょう!!!」

大声で叫ぶ。


「きゃ!」

びっくりしたロロが尻餅をつくがそんな事はどうでも良かった。



(師匠! 俺の為かも知んないけど、俺はアンタと……ちくしょう!!)

走りだそうとした俺の前を、素早く回り込んだララがとうせんぼする。


「何処行くの〜?」

「師匠の所だ! どうなったかこの目で見る! もし怪我して倒れてたら……回復してそれからぶん殴ってやる!」

「駄目、悪いけど行かせらんない」


ララは悲しげに首を振る。


「何でだ! 俺の勝手だろ!?」

「違う。 貴方は狙われてるから」

「そんなの知ったこっちゃねー! 俺は師匠を助けに行く!」


言うなりララを躱して駆け出す!



「『スリープ』」

ロロの声が聞こえた瞬間、物凄い眠気に襲われた。


(クソっ! こんなもの!)


「『アンチスペル』!」

睡眠魔法を魔法解除で打ち消す!


「嘘ぉ! 解かれた!?」

ロロの驚く声がするが……睡眠で一瞬足が止まった為か再度ララに回り込まれる。


「ごめんなさい。 これ以上行くなら」

「止めんな! 俺は師匠を……」


ドス!


言葉とほぼ同時だった。

俺の鳩尾にララの拳がめり込む。


……って普通なら気絶するだろうが、俺をナメんなよ!


前のめりに倒れるふりをして……そのままララとすれ違い駆け抜けた!


「えぇ〜?」


驚いている割にはノンビリした声。



(完全に抜いた!)

心でニンマリした俺だったが……


(あ、あれ? なんか世界が)

世界が歪んで見え始め足元がおぼつかなくなる。

そしてそのまま地面にひっくり返ってしまった!


「うぅ〜ん、普通ならすぐに気絶するんだろうけどね〜」

「この子なんか色々秘めてそうね」


追い付いた二人が倒れている俺を見下ろして話をしている。



「よ、よくもやりやがったな……」

「ごめんね〜。 でも僕君の事気に入っちゃったから」


ララはしゃがんで俺をお姫様だっこすると、

「殺させる訳には行かないんだ〜」

「だったら……」


俺の瞳からまたもや雫が溢れ出す。


「そんなに強いなら師匠を……助けて……」


ララは首を横に振った。


「どうして?」

「それは……多分君が一番分かってると思う」

「っ! ぐっ!」


こみ上げる涙と嗚咽を必死に抑える。


師匠は死んでいないと言う希望と、

師匠は死んだと言う現実がオレの中でせめぎ合う。



「っくしょう! 俺は信じねー! 師匠は死んでなんかいない。 泣いてたまるか!」


俺はララに、


「もう逃げねーから降ろせ。 こんな恥ずい格好我慢できねーよ」


ララはキョトンとしていたが、なぜか残念そうな表情をすると、

「恥ずかしくないと思うんだけど……」


ブツブツ呟きながらも俺を降ろした。



この二人を相手に逃げるのは難しそうだ。

俺は仕方なくララとロロの二人に付き添われて王都へと向かう事にする。


(師匠ならきっとあのカマキリヤローからうまく逃げた筈。 あんなのに殺られる訳が無い!)

俺はそう自分に言い聞かせる。


そうでもしないと暴走して、この二人に無理矢理捕獲されそうだ。

そうなると今度こそお姫様だっこだろう。


ちなみにララとロロの二人は他の部下達と国を回っていたが、魔族が城に向かうのを見て、ひとまず二人だけ戻って来たとの事だった。





跳ね橋を通り、王都に入ろうとした時だった。


「貴様! また懲りずに来たのか?」

俺をボコボコにした門兵が声を上げて走って来た!


「む? お前傷はどうした? あれだけ痛めつけたんだ、すぐに治るはずが無いだろう」



「どれくらい痛めつけたの〜?」


「そりゃあお前……」

門兵が声を掛けてきた人物を見て凍りつく。

そして呻くように、


「王国第一騎士団長」

「ん〜?」


呼ばれた騎士団長ララはゆったりと首を傾げたが、


「この子をどれくらい痛めつけたの?」


再度尋ねられた兵士は口をパクパクさせつつ、


「す、少しであります! 余りにしつこく業務に支障をきたした為、跳ね橋の向こう側に連れていき放置しました」

「……もう一度聞くね? どれくらい痛めつけたの?」


相変わらずのんびりした様に聞こえるが……門兵は青くなっている。


ロロがコソッと、

「ルルさんには分からないかもしれないけど、今のララって少し怒ってるのよ」


(……うん。全然わからん)

口調も先程通りに聞こえるけど……それより、


「ルルで良い、『さん』付けなんてむず痒くなる」

「あらそう? じゃあルルで呼ばしてもらうわ」



俺達がそんな会話をしている中、ララは門兵に詰め寄っている。


「僕があの子に会った時、あの子の服は血や泥で汚れていた。 それにあそこに足跡見えるよね? 踏んだり蹴ったりしないと付かないような跡だ」


言われて気付いたが、僧侶服の腰の場所に大きな足裏の跡が付いている。


「あれ、君の足裏と合わせてみても良いかな? あの靴は兵士に配られる支給品のものに見えるんだよね〜」


門兵は今にも卒倒しそうに見える。



ララはゆっくりした口調のまま、

「僕達兵士はね〜国の民を守るべき存在だよ〜。 その兵士が民を傷つけてどうするのさ?」


兵士は耐えられなかったように地面にヘナヘナと腰を落とす。


「多分君一人じゃ無いでしょ? 他の者達も出ておいで」

ララが他の門兵達に視線を向ける。


数名がノロノロと前に出てくる。


ララはニッコリ笑うと、

「うん、みんな正直で良いね。 まぁ正直じゃないと僕怒っちゃうけど」


その言葉に門兵達が震え上がる。


「じゃあ、もう家に帰って良いよ。 みんなお疲れ様!」


門兵達が顔を見合わせる。

言っている意味が分からないようだ。



「ララ、あなたの言葉は分かり辛いですよ」

「え〜? そう?」


ロロは一歩踏み出すと、


「この子に乱暴を働いた貴方達は今日限りでクビと言う事です」

そう言って眼鏡を軽く持ち上げる。


「ええ!」

「そんな!」


どよめく門兵達。


「えっと意見が……」

「はいはい、もう。 私が言いますから!」

言いかけたララの言葉を遮り、


「ララ団長はこう言っています『文句があるならかかってこい!』」


その言葉に門兵達は全員黙り込んで、すごすごと戻って行った。



残った門兵に、

「後で城から人を回します。 それまで現人数で対応を頼みます」

「はい! 了解しました!」


門兵は敬礼して業務に戻っていく。


それを見送ったララとロロは、二人揃って俺に頭を下げた。


「ごめん。 兵達が」

「ごめんなさい」


「は? いやいや何でおめーらが謝んだよ?」


「兵の不始末は僕達のせいだから」

「ええ、ララの言うとおりです」


「はぁ、だったら謝罪より師匠を助けに行って欲しいぜ」


「それは出来無い。 今の最優先は君だから」

「融通きかねーな!」


ララは首を傾げて、

「融通って何?」


「いや、もういいや」

ララに気を抜かれて脱力した俺は、そのまま黙り込むのだった。



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