物語ってちょっと無理あっても割りきれるよね
僕は家に着くと、今朝までとなにかが違うと玄関を見て違和感を感じたがそれがなんなのか気付かずにリビングに入った。
「おかえりー」
と適当にお母さんが言うそれに遅れてお父さんも「おかえり」と言った。さらにそれに続いて「おかえりなさい」という小さい声が聞こえた。
んんんんん?
うちの家族におかえりなさいなんてそんな綺麗な言葉遣いができる人はいないと心得てるのですが。
辺りを見渡すとそこには見るからに中高生くらいの少女がいた。
いやいや、ちょっと待てっていうかかなり待て。
僕は今日あった出来事すら忘れ、目の前の現実を理解できずにいた。
こういう時は正直にいこう。
「えーっと、君は誰?」
しまった率直すぎたか。
「有栖」
これまた率直な返答で。
「有栖ちゃんって言うの?」
そう訪ねると彼女はうなずいた。
「どこから来たの?」
「家?」
こっちに聞かれてもねぇ~困った。
「じゃあ、おうちの人は?」
「いない」
なんか、複雑な予感が…
すると、お父さんがそこに割り込んできた。
「その子は、飯田有栖ちゃんっていうんだけど…まぁ、これからは山口有栖になるんだけど…」
何か隠してるなこの親。僕はそんなに鈍感じゃないぞ。しかし、飯田ってお母さんの旧姓と同じだな。でもお母さんには弟しかいないし、おじさんは結婚してないし…じゃあ、誰だ?
「あの~それは百万歩譲ってわかったよ。それより、僕が一番気になっているのはこの子の身元なんだけど?」
お母さんが気まずそうに口を開いた。
「私の妹かな」
はい?
空気は凍った。
「妹って妹?あの、言い間違えですか?それとも僕の耳が壊れたんですかね?今、あなたの口からリトルシスターという単語が聞こえたのは気のせいですよね?」
しばらくの沈黙から美お母さん返答した。
「It is really.」
「いや、reallyじゃなくて!え、ちょ、待って。なになになにもう、嫌だ。理解できない!」
「話だけ聞いて」
そうだ、落ち着こう。こういう時は全てを譲り受け入れよう。
「この子はおじいちゃんの浮気相手の子なの」
お母さんは重苦しい雰囲気で言った。
あの、じいさんなにやってくれてんだ。元気すぎだろ。
「でも、おじいちゃん倒れちゃったじゃん」
いや、待って聞いてないんですが、初耳なんですけど。
「おじいちゃん倒れたの?」
「さっきメッセージ送ったと思うけど…」
携帯を確認すると確かにメッセージは届いていなかった。再度お母さんとのやり取りを確認した。にわかに信じがたいがおそらくメッセージとはこの事なのだろう。
僕が目を向けた先にあったメッセージには『やばい』とだけ書いてあった。
「ねぇ、あのさ」
極限まで下がったテンションでお母さんに聞こうとすると食いぎみに「何?」と聞いてきた。
「こんな一文で分かるか!何、やばいって。もう、この文がやばいよ。普通わからないからねこれじゃあ。まさかこのやばいでおじいちゃんが倒れた何てこと理解できるわけないよね!?」
「お父さんには伝わったもん」
いや、まじですか。
「まぁ、そこは分かったよで何で家で有栖ちゃんを養うことになったの?おじいちゃんの浮気相手の人はどうしたの?」
「夜逃げしたんだって2年くらい前に」
思ってる500倍くらい重い話だった。でも、とりあえずは理解したよ。山口家の人は適応力が高いんだよ。
「じゃあ、とりあえず。ご飯にしましょうか。今日は赤飯だよー」
お母さんが先程までとは違い明るいテンションでそう言った。しばらくするといつもより豪華な食事が用意されていた。のだが…
なぜ米を赤くする!?いや、おじいちゃん倒れたんだよね?赤飯っておめでたいときに食べるものだよね?おじいちゃん倒れたのっておめでたいですかね?
「ねぇ、何で赤飯なの?」
「だって今日、夕君の入学式だし」
あ…そういえば、そうだ完全に忘れてた。
今日だけで2年分くらいのの時を過ごした気がする。
というか、今までおじいちゃんの家に何回もいってるけどなんで気づかなかったんだ?思い当たる節がない。
少しばかり思考する。さっきの文は訂正思い当たる節があった。そういえば、あの人めっちゃ二階に行くの必死で止めてたな。だって一年前、トイレ行こうとしたらお母さんが入ってて。おじいちゃんにどうしてもトイレに行きたいって言ったら二階にもあるって言われて。二階に行こうとしたら後ろから襟首掴まれておじいちゃんに階段から落とされたもん。
僕は溜め息をつき席につく。それと同時に正面の席に有栖ちゃんがついた。僕とて一人の思春期の少年のなのだ。必然と彼女の胸や顔等のプロポーションに目がいってしまう。彼女のその顔は凛として表情は薄く、胸は小ぶりでもなくかといって大きいわけでもない平均的なサイズ感、腹回りはスッキリとしていて足は華奢という言葉以外に適切な語が見つからなかった。一まとめにすると完璧といっても過言ではなかった。僕は少しは彼女と仲良くなりたいと思っていたが現実はそう甘くなくお母さんが食卓に食事を運びみんなが食事を終えるまで有栖ちゃんは一度も話すことはなかった。
食事を終えたあとしばらく部屋に戻り今日のことを振り替える。
今日だけでどれだけのイベントがあっただろうか。まず、バス酔い、入学式、嘔吐、家に帰るとしらない子ってすごいな今日の僕。我ながら尊敬する。
少しばかり今日のことを思い出してみたがそんなに意味がないことに気づいたのでスマホを取り出し、特に目的もなくネットを見る。そんなことをしていると階段の下から風呂に入ってという声が聞こえたので部屋を後にし一回にある風呂場へ向かう。その道中、有栖とすれ違ったが話すことはなく通りすぎていった。その時の有栖はお風呂上がりばかりなのか濡れた髪も相まってどこか妖艶に感じられた。
それから浴槽に浸かりしばらくさっきすれ違った有栖ちゃんのことを考え30分くらい風呂に入った後にリビングに向かった。そこにはお母さんと有栖ちゃんの姿があった。さっき風呂で疑問に思ってたこと不意に口にする。
「有栖ちゃんはどこで寝るの?」
家には来客用の布団もっと言えば部屋もない。じゃあ、どこで寝るんだ?さすがにソファーというわけにもいかないし。
「そんなに気になるんなら一緒に寝れば?有栖ちゃんもそれでいいよね?」
それに対し有栖ちゃんが頷く。
「え、いいの!?」
マジか、嬉しいがなんかねぇ?なんかなんかだよね。ねぇ、これから義妹なのにねぇ。
それから寝る前に身支度をして部屋に戻る。部屋に入るとしばらくして有栖もちゃん入ってきた。
「入っていい、ですか?」
「あ、うんい、いいよ」
めっちゃ緊張する‼
有栖がちゃんゆっくりとベッドに入る。シングルサイズだが別に寝ようと思えば二人で寝れないわけではない。
「もしかして、邪魔しちゃった?」
と小さな声で僕に聞く。僕はしてないよと答える。さっきは寝れなくもないみたいなことを言ったが、実際は少しぶつかるし、有栖ちゃんは横向きに寝てるので体の柔らかい部分が僕の腕に触れる。そうなってしまったら健全な男児である僕も義妹とは言えど興奮に近い緊張さえしてしまう。そう考えていると有栖ちゃんも口を開いた。
「あの、な、なんて呼んだ方がいい、ですか?」
そう聞かれると迷う。普通はなんと呼ぶのだろう?お兄ちゃん?お兄さん?それとも名前か?
別に呼びたいように呼んでくれればそれでいいんだけど…
「有栖ちゃんはなんて呼びたいの?」
そう聞き返すと「え?」と少し驚いて考える。
「に、兄さん?」
おぉ、めっちゃいい‼可愛い‼可愛い‼可愛い‼
僕はベッドの上で興奮する。
「に、兄さん?大丈夫?」
まだ、ぎこちないが目茶苦茶可愛い。というかまず声が可愛い。
「じゃあ、有栖ちゃんは呼んでほしい呼び方とかあるの?」
また少しの間思考している。
「有栖でいいよ。兄さん」
「そうだね、あ、有栖。じゃあ、お休み」
有栖は小さい声でお休みと返事をして僕は目を閉じた。
目が覚める
そこはベッドの上でもなくこの世界ですらない
懐かしい感じのするそんな何処か
そして、異形に問われる
お前は再び英雄になるつもりはないかと
僕は答える…
明天
そこで目が覚める。
少し眩しい明かりで起こされて目が覚める。そして数秒後に気付く、自分が女の子もとい有栖を抱き締めてることに。そうして、彼女は口を開く。
「兄さん、目、覚めた?」
それはもう、パッチリとね。目を見張りましたね。
そして僕は瞬間的にベッドから飛び降り、頭、手、膝を地につけ謝罪する。
「申し訳ありませんでした!!」
すると彼女は首をかしげ驚くべきことを告げる。
「に、兄さんのしたいようにすれば?」
僕は唖然とする。
何だこの最強の妹キャラは!え、可愛い。え、可愛いんですけど。最高の妹なんですけど実際はまぁ、おばさんなんだけど。
しばらくして我にかえる。
「いや、でもさ抱き締めるって言うのはねさすがにね?ちょっと気持ち悪いんじゃないかなーって」
「でも、家族だよ?」
うん、可愛い
「そうはいってもね?一応有栖は女の子だからねもしかしたら兄さん変な気になっちゃうかもよ?」
「変な気って何?」
うん、可愛い
「それはそのね、有栖のことを好きになっちゃったり」
「ダメなの?有栖のことキライ?」
「うん、可愛い」
「有栖、可愛い?」
しまった口に出てしまった。今まで言ってたことが建前立ったことがばれてしまう。
しかしここで気付く時計の針が午後12時を回っていたことを。僕は急いで制服に着替え下の階に降りる。リビングに行くと机の上に置き手紙があった。
夕へ
昨日はお熱い夜でしたね
お弁当は冷蔵庫にあるから持っていってね
P.s子供は結婚してからね♥️
「♥️じゃないよ!起こせよ。っていうか子供って、親がそういうこといって言いわけ!その前に起こせよ、結婚ってそもそもできねーよ!」
リビングでは夕のそんなツッコミが響いていた。僕がそんなことをしていると、有栖も上から下りてきた。僕は彼女に素朴な疑問をぶつける。
「ねぇ、有栖は学校とかどうするの?」
「来週からだよ」
と小さい声で答える。
「どこの学校に行くの?」
「に、兄さんの学校の近くの私立のところ」
まだ呼び方がぎこちないが可愛い。
そして、僕は急いで家を出た。