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夢の世界で僕は君にまた恋をする  作者: 仁汰
夢見ライオット
1/3

入学式って緊張するよね

事実は小説より奇なりというがその言葉は存外間違っていない、奇というよりか複雑なのだ。

しかし、僕がこれを実感するにはまだ若すぎたのだと思う。

山口(やまぐち) (ゆう)、いたって普通のピカピカの高校1年生だ。ただ普通ではないのは彼を取り巻く環境がおかしいだけだ。しかし、だからこそ彼はこの救い用の無い物語の主人公になったのだろう。彼の住む町は結構山間で近くの駅までバスで20分くらいかかるくらいド田舎だった。しかも、頭も中の下の上くらいの彼にとって面倒なことはもうひとつあった。彼の最寄りの高校はかなり頭がいい、故に彼は逃したのだ。しかし、それは彼にとって悪いことばかりではなかったのだ。さすがにこのご時世中卒という訳にはいかない、なので家から行ける県外の高校を選んだ。そして、彼の行く高校は今までとは景色も何もかもが違う。何しろ我が国日本の首都東京なのだから。






山口 夕はバスに揺られる、この辺では出入りの少ないバスにはよく乗客が乗る。しばらくすると目頭がガンガンと痛み始めた。つまるところ僕は酔ったのだ。

ヤバい、入学初日だぞここでリバースしたらおそらく僕のハイスクールライフはオワッタと言っても過言ではない。ゲロ口さんと呼ばれること間違いなしだ。

僕は被害妄想を爆発させていた。まぁ、そんな話はどうでもいいとして次の電車まではそんなに時間はない。酔いを覚ましているとホームからアナウンスが聞こえたので僕は気分だけでも治し、人で溢れた電車に急いで乗り込んだ。


そこから40分くらいすると目的の駅そして、これからも通い続けることになるいってしまえば第2の校門みたいなものだ。いや、先にこっちから通るのだからこっちが第1の校門というのだろうか。

そんな他愛もないことを考えながら通学路に付く。


僕は数分駅から歩き校門をくぐった。道中、今日発売のジャ○プを立ち読みするために地元じゃ珍しいコンビニに寄ったがまだ時間には余裕がある。入学式は体育館で執り行われるがその前に教室で待機というのが学校側からの指示だった。クラスを確認し呪文のようにクラスと出席番号を唱えながら扉がすでに空いていた教室に入っていったがまだ数人しかいなかった。

気まずい‼いや、最初ってそんなものだよね。うん、そういうものだ。

席を確認し着席する。しかし、身体は正直なものでさっきの酔いが再び僕の元に降臨した。

あぁぁぁ、やばいですね。これだんだん上がってるね、来てるね。耐えねば!

くだらない使命感などではない、この苦難を越えることができなければ、僕の高校生活は間違いなくgameoverだ。

そして、ここで予告しておこう…僕がレボリューション(げぼ)リバース(吐く)までのこり3時間23分

ちなみに現在の時刻7時57分


登校時間は8時40分となっている。入学式はその20分後に始まる。そして、時間は刻々と早々と流れる。


今、華々しい造花のブローチを胸につけた夕は入場を終え、始まりの言葉が始まろうとしているところだ。つまり僕が華々しく散るまで残り2時間35分


当たり前のことだが僕の吐き気は未だとどまるところを知らない。時間というのは意識すればするほど長く感じるもので、苦難もまた同じで苦だと感じれば感じるほど苦に思えてくるのだ。


しばらくすると入学生の言葉なるものが終わり。そして、僕が今、最も恐れている刺客。

「続いては、校長先生お願いします」

最凶にして最悪と書いて校長のスピーチのルビを振っても過言ではないだろう。そして、それはそう思えば思うほどそう感じてきてしまうのだ。


それから長い地獄は過ぎ去りあと、少しで入学式が終わるというところまで来た。入学式終了予定時刻が11時ということだったので時計を度々確認しながら自分に暗示をかけ続けた。

そして、僕のその暗示が全て無に帰さすまで残り28分


入学式は終了予定時刻より少し過ぎ11時7分に終った。同級生達がそれぞれの教室に戻っている間夕は担任に今、置かされている状況を説明し足早に保健室へ向かった。


少しだけ迷ってしまったがなんとか保健室を見つけることは出来た。

強烈な吐き気を押さえ込むのももう限界がきてしまっている。急いで救いを求め保健室の扉を開けた。

そして、タイムリミットはやってくる。

扉を開けると(すでに死語かもしれないが)コギャル感のある女子生徒が立っていた。

なぜだろう。と問いたい。というか思い出したくない。

僕は安心感か油断しきっていたからなのかはわからないが名も知らぬ女の子に吐瀉物を吐きかけてしまったのだ。



うん、つまりさ



オワッタ



目を覚ますと当たり前のことだがそこは保健室だった。ベットから起き上がり周りを囲むカーテンをくぐりベッドを出た。備え付けの時計を見ると時間はすでに4時を回っていた。

「もう、大丈夫かい新入生?」

養護教諭の先生は回転するタイプの椅子に座りながら僕に問いた。

「僕はもう大丈夫なんですが…」

僕はしっかり覚えている。脳の奥深くまで焼き付いている。彼は吐瀉物をかけてしまった彼女の事を心配しているのだ。彼女の反応によっては今後の学園生活が変わってくる。つまり、彼女を心配しているというのは自分の心配をしていることにもなるのだ。

「あぁ、ご愁傷さま」

「あの、答えが速すぎて地獄なんですが」

「彼女の事を聞いているんだろう?」

図星だ

「彼女なら今度会ったら絶対斬首するとかなんとか」

「なるほど、ご愁傷さまですね。僕の名前は今日からゲロ口ということですね。わかります。」

「何を言ってるか分からないが、とりあえずなんか奢っとけば女は許す」

「そうですか…ありがとうございます。えーっと…」

「どうした新入生」

「なに先生でしたっけ?」

「え、あぁ初瀬川(はせがわ)だ長い谷の川じゃなくて初瀬川の初に初瀬川の瀬に初瀬川の川だ」

いや、それじゃあわかるわけないでしょ。

「では、改めてありがとうございます長谷川先生」

「あぁ、お元気で。ちなみに長谷川じゃなくて初瀬川な」

ちょっと僕にはその差が分からないんですが

僕は保健室を後にしようとしたところでひとつ忘れていたことがあった。

「あ、ちなみに僕の名前は山口夕です。皆ご存知の山口に夕日の夕です」

「興味ないな、君の名前なんて」

いや、それはそれで普通にショックなんですけどね。

「今度こそ、ありがとうございました」

そう言って今度こそ本当に保健室を後にした。


教室に戻りほとんど荷物の入っていない鞄を持って職員室へ向かった。なぜ、職員室へ向かうかというと僕が保健室で寝ている間に教室で必要な書類を提出もとい配布していたからだ。

職員室にはいり担任教師の志村先生を探した。

志村先生を見つけ先生の机まで行くと先生は

「大丈夫?山口君」

と言い僕はそれに「はい、大丈夫です」と答えた。

「先生、書類を提出しに来たんですが」

「あぁ、はいはい書類ね」

僕は鞄を開き書類を取りだし先生に渡した。

「じゃあ、これはもらって、はいこれ。来週の月曜日に提出だから」

彼女はそう言いさっき提出したくらいの書類と同じくらいの厚さの書類を出した。

何をそんなに教えなければいけないのか疑問に思ったが触れないようにしておいた。


職員室を出るとそれ以上ここには用はないので学校を出て、駅に向かった。

再び電車に揺れられ家路についた。帰りは酔う事はなかった。やはり、さっきまでの酔いは緊張から来たものなのだろう。

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