表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/44

最終話 しがないエピローグ

 後日談というか、なんというか。

 あれだけ引っ張るだけ引っ張ったNObloodとの戦いは、そも戦わずして終了した。

 簡単な話、NObloodのメンバー全員がその残虐無道とも言えるべきプレイスタイルのせいでアカウントbanされていたのだ。その当時の俺らはその事実を知らず、やつらがよく現れるフィールドに向かったにも関わらず、結局ことの顛末を知ったのはログイン限界時間を迎えるまで粘っていてからだ。

 腑甲斐無い結果ではあったけれど、結果として、このギルドが今まで奪ってきた多量の装備品やアイテムは、持ち主に返還された。

 さて、その後俺達テストプレイヤー御一行がどうなったかというと・・・・・

 まず、俺、九条類はそのまま当のゲーム会社メシアの専属プレイヤーになった。

 なった理由も、実は結構アホな理由で。テストプレイばかりにうつつ抜かしていた俺は、ライセンスの更新に行くことをすっかり忘れていた。そのことでプロゲーマーチームのスターゲイザーのメンバーからは半ば笑い者になった。

 けれど、プロゲーマーを辞めたことで、良かったことも少なからずある。

 何せ専属プレイヤーになったお掛けで高校生の俺には十分過ぎるほどのお金が定期的に振り込まれるようになったこと、あとなんと言っても、健康診断の結果がすこぶるよくなったこと。

 うら若き高校生の身で何を言っているんだと思われるかもしれないが一時期狂ったように徹夜でゲームばかりしていた俺の学校での健康診断結果は毎回最悪だった。

 プロゲーマーを辞めれて良かっただなんて、微塵も思わない。

 けれど、自分なりにはいい結果へたどり着けたとは思えた。

 巫式夜、伝説のプロゲーマーで、アルティメットゲーマーの異名をもつ彼女に関しては、何一つ説明がいらない。

 なにせポンコツな俺とは違って式夜はちゃんとライセンスの更新も受けていたからだ。

 その後の俺たちの関係はどうなったかというと、手堅くまだ友人関係のままだ。

 まあ、式夜からのアプローチは今も尚続いてはいるのだが、当の俺が奥手のままというか、ヘタレというか、一歩を踏み出せずにいる。

 九条千尋、俺の妹に関しては、随分と日常が変化した。

 まず、第一の変わったことは、サバゲーをよく嗜むようになった。

 どうにもミリタリーの魅力にどっぷりハマったようで、テストプレイで貰ったお金の大半もエアガンや質のいいちょっとお高いBDUを買ったりに使ってしまった。

 当の本人いわく、AK―47は至高、AKS74Uは宝、とかなんかよくわからないのとまで言うようになった。

 他にも色々なFPSをやるようにもなったし、勉強ばかりの真面目な妹はどこへやら。

 けれど、冷静な性格は変わらない。

 マリア・メシアこと、マリー。

 彼女に関しては、俺が一番よく知っているだろう。

 テストプレイの後、結局日本で暮らすことになったマリアさんと、その父ジョニーさん。

 専属プレイヤーになったことで、この二人との交流は自然に増えていった。

 彼女はそれといって変わったことはないのだが、あえてひとつ変わったことを上げるなら、もうVRMMOはやらなくなったことだろうか。

 それどころか今はプレイする側ではなく、ゲームを作る側になった。

 ゲーム内のプレイヤーの監視や、PK対策のシステム、マリーさんはかつての自分のようなプレイヤーが現れないよう、尽くすようになった。

 と、まあ、全員が全員それなりの日常を謳歌するようになっていた。

 そして今日、テストプレイ終了から一年が過ぎた今日。

 俺と式夜は日本で正式に発売されることになったオーダーテスターとRFOを買うため、美咲のゲームショップへ向かっていた。


 「あれから一年とか、早いものだな。ルイくん」

 「そうだなぁ・・・・・・あっという間だった」


 昔話、というほど昔ではないにしろ思い出に浸るという行為はどうしても感傷的になる。

 去年の少し前はわざわざ海まで行ったのに結局ゲームばかりしていったな。


 「アカウント、移すのか?」

 「とりあえずはな。式夜は、あぁ、移したくても移せないのか」

 「まあな。前使っていたオーダーテスターはもう返してしまったし。それを考えるとあれだな、私もなろうかな専属プレイヤー」

 「うぐっ、それをやられると俺の仕事なくなるんだが・・・・・・」

 「フフ、冗談さ」


 他愛のない会話。こいつがかつて俺の永遠のライバルであったことは、もう遠い過去の話だ。だからこそ、俺は、式夜と対等に話し合える今の俺は、こいつに1つばかり言わなくてはいけないことがある。


 「なあ、式夜」

 「うん、どうした?」


 いつものような可愛い笑顔の式夜。何度も何度も、どぎまぎさせられた。こいつの一つ一つの行動が、今の俺にとってはいとおしい。


 「俺さ・・・・・・」


 どうやら、わざわざ一年かけてまで俺はこの少女に、攻略されてしまったようだ。


 「お前のこと、好きみたいだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ