19話 リザードマンの娘
ーー村長のテントにて
「えっと、娘さん?」
「はい、娘です」
いやいや無理があるだろそれはぁ。
まず第一に村長であるリザードマンには尻尾があってこの子には無い。
そしてヌメヌメした肌もない、まぁ当然か人族なんだし……。
まぁでも気になるのはそこもだけど、それ以上に。
「妻ですか?」
「はい」
「ミカさんはそれでいいんですか?」
俺はミカさんの方を見てそう訊ねる。
「……はい」
彼女は少し間を置いてそう答えると、俺から視線を外すように目を逸らした。
いやいやその反応的に、納得いってないでしょ、絶対に……。
「村長、悪いことはいいません無理強いは良くありませんよ」
「無理強いなどではありません、ミカも喜んで身を捧げる覚悟です、な、ミカ?」
「嫌……」
「え?」
「嫌よ私、こんなクソガキ」
『え?』
ミカさんの唐突なパワーワードに俺と村長は動揺し、言葉が漏れる。
い、今クソガキって言われたのか。
なんだよこの子、怖すぎるだろ。
「ごめんね父さん、私やっぱり無理」
『ガバッ』
そう言ってミカはテントを出てしまった。
一体なんだったんだ。
「すみませんシオンさん、すぐに呼び戻してきますので」
「い、いやいやいいですよ」
「ですが……」
村長はそう言うと悲しそうに俯いてしまった。
村長には悪いけど、あんなに嫌がってる子と結婚なんてできないし、ここは断るのが良いよな。
ていうかそれよりも、本当にあの子は村長の娘なのだろうか。
正直言ってそれが一番気になる。
「あのすみません、あの子はパッと見リザードマンでは無いように見えるのですが……」
「ああそうですよね、そうなりますよね……ミカは養子です、12年前にこの階層に置き去りにされているのを拾い私が育てました」
そう言うと村長はゆっくりと顔を上げた。
やはり養子か。
まぁそうだよな……。
「なぜ私と彼女を結婚させようとしたのですか?」
「ああそれは、あの子も自分と同じ種族なら良いのかなって思って」
「な、なるほど」
理由はわかるがな村長よ。
それだけで結婚はダメだろ、ミカさんが嫌がるのも納得だよそれは。
「あの子は人族の子、リザードマンではないので人族と結婚させてあげたくて」
「はぁ、気持ちはわかりますがね村長、それではあまりにもミカさんの気持ちがーー」
『ガバッ』
その時、勢いよくテントが捲られた。
「大変です村長、ミカ様が!」
「どうした何があった?」
「帰らずの泉に向かうと言って出て行ってしまいました」
「帰らずの泉だと!」
若いリザードマンからその名を聞いた村長は激しく動揺していた。
帰らずの泉……聞いた事ないな。
「村長、帰らずの泉とはなんなんですか?」
「帰らずの泉とは、泉の中へ入ると階層を跨いで15層にある真実の湖まで行けるという代物なのです」
そう話すと村長は慌てて近くにあった剣や鞄などを持ち始めた。
そんな便利なものがあるのか!俺も15層行きたいな。
てか待てよ確か真実の湖って、三王の一人激流王・ナディアのいる所なんじゃ……。
「待ってください村長、その15層の真実の湖ってもしかして」
「そうです、激流王・ナディアの棲家です、そしてミカは何度かナディアに会おうとしているのです」
「え、それはまたどうして?」
そう訊ねると村長の顔が曇り始める。
「ミカは信じているのです、ナディアが自分を元いた家へ帰してくれると」
「元いた家……」
どういう事だ、ミカさんは話を聞く感じ元の両親には捨てられた感じなのにそれを帰すって、ナディアにそんな事できるのか?




